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新型コロナを克服できるか - 試練の一年

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コロナに明け暮れた昨年

新年明けましておめでとうございます。

昨年はコロナが猛威を振るった一年でした。

年初に武漢で新しいウイルスが見つかったとの報道を耳にした時に、これほど大きな災禍になるとは予想もしていなかったのですが、感染症というのは本当に恐ろしいものです。

医学の進歩は目覚ましいものがありますが、人類の叡智を持ってしても、今回のウイルスを封じ込める事は不可能でした。

ウイルスは人類の講じる措置を予測でもしているかの様に、その裏をかいてきます。

昨年末に発見されたウイルスの亜種がその一つです。

英誌Economistは「What the new variants of covid-19 mean for human health - Between now and when vaccines are widely available countries will face some hard choices」(新型コロナの新しい変種は人間の健康にとって何を意味するか -ワクチンが広く利用可能になるまでの間、国はいくつかの難しい選択に直面するでしょう)と題した記事を発表しました。

かいつまんでご紹介しましょう

Economist記事要約

冬至は過ぎたかもしれませんが、新型コロナの夜はまだ長くなりそうです。

ここ数週間で、コロナウイルスの2つの変種が、英国と南アフリカで猛スピードで広がりました。

それらはより強い感染力を持つ様に突然変異しました。

これまでのところ、それらは致命的ではないようですが、英国で古い変種が感染する10人ごとに、新しい変種が15に感染します。

初期のデータは、南アフリカの変種が同じように激しく感染することを示唆しています。

 

ちょうど今、世界はワクチンの承認、製造、投与に焦点を当てています。

悲しいかな、ワクチンがが救済を与える前に、新しい変種が広がり、政策立案者に深刻な困難をもたらすかもしれません。

生物学者は突然変異の出現に肩をすくめました。

これはウイルス独特の振る舞いです。

自然淘汰はより伝染性が高く致命的でない変異体をウイルスが好むからです。

一般的な風邪を引き起こすウイルスの中には、Sarsウイルスと同じくらい悪質なものもありますが、弱いものもあります。

より伝染性の高い新型コロナウイルスの変種は、医療体制を機能麻痺に陥れる可能性があります。

イギリスでは、人口の大多数が数週間ほぼ完全に封鎖されています。

それでも、病院の新型コロナ患者は現在、4月のピークを超えており、医療体制は対応に苦慮しています。

 

ヨーロッパやアメリカを含む世界の他の地域の多くは、まもなく英国に続くでしょう。

12月中旬、科学者が新しい変種の出現を発表するとすぐに、50か国以上が英国からの旅行者を急いで入国禁止としました。

多くは南アフリカからの到着便も禁止しています。

しかし、そのような対策は気休めにしかならないでしょう。

旅行が禁止される前の11月初旬、世界で最も外国と緊密につながっている都市の1つであるロンドンでは、新型コロナウイルスの変種がすでに症例の30%近くを占めていました。

昨年の冬にアルプスのスキーリゾートから、夏にスペインから初期の変種がどのように広がったかを考えると、ヨーロッパ中やそれ以外の地域ではまだ症例が潜伏中ではないと信じるのは愚かです。

新しい英国の変種は感染開始後数週間以内に元からあった株を置き換える可能性があります。

 

これまでのところ、アメリカを含む20か国ほどで散発的な症例しか発見されていません。

しかし、それは、英国や南アフリカとは異なり、ほとんどの場合、ゲノム技術を使った変種の特定をほとんど行わないためです。

フランスは、パンデミック全体で、ウェールズが1週間に行うよりも少ない回数でしかウイルスを検査していません。

ほとんどの国はまったく検査していません。

したがって、より伝染性の高い変種が検出されずに広がっている可能性があります。

 

幸いなことに、これらの変異が病気にかかった人を再感染させたり、新型コロナワクチンを失効させたりする可能性は低いです。

自然淘汰は、ますます多くの人々が接種されるにつれて、最終的にはそれを変え始めますが、ワクチンは効果を維持するために微調整することができます。

Pfizer-BioNTechワクチンを使用すると、微調整プロセスはわずか6週間で完了します。

しかし、ワクチンの供給を蓄えているほとんどの先進国でさえ、少なくとも夏まで、ウイルスの拡散を止めるのに十分ではありません。

今週のアストラゼネカ社のワクチンに関する緊急承認は役に立ちますが、それでも遅れが生じています。

貧しい中所得国は、ずっと長く新型コロナから保護されない状態になります。

 

人々は、より伝染性の高いウイルスを阻止するために必要な厳しい封鎖からの利益と、学校教育、経済への影響を総合的に勘案することによって、この急速に変化する現実に対処することを余儀なくされるでしょう。

トンネルの終わりにはまだ光があります。

しかし、それを通る道ははるかに危険になっています。

今年こそ新型コロナを克服したい

今年のお正月はどこの家庭でも普段とは違ったものになった筈です。

年末の紅白歌合戦は史上初めての無観客で行われ、初詣客も敬遠され、駅伝の街頭応援も禁止されるなど、人が集まるイベントはことごとく制限されました。

このまま行けばオリンピックも開催が危ぶまれます。

私もオリンピックを心待ちにしている一人ですが、開催ありきで強引に進めるのではなく、自然体で開催の可否は決断してもらいたいと思います。

人が動けば、感染は広がります。ましてや世界中の様々な地域から変種が持ち込まれれれば、日本の医療体制は崩壊の淵に立たされます。

新年早々、コロナの話題で恐縮ですが、今年こそ人類がこの災禍を克服し、皆様の一年が幸せに満ちたものになる事を心よりお祈りします。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。

人類の歴史を大きく変えた感染症 - マラリア

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猛威を振るった感染症

今年はコロナに明けコロナに暮れた一年でした。

感染症の恐ろしさに世界中が再認識した一年だったと言えるでしょう。

過去の歴史を振り返ってみると、多くの人間が感染症のせいで亡くなっていますが、第一次世界大戦の様に、スペイン風邪が戦争を終わらせた例もあります。

歴史を変える力を持つ感染症の例として、英誌Economistが「How malaria has shaped humanity

The parasite shows how history is partly created by non-human forces

(マラリアが人類の歴史をどの様に作ったか - 寄生虫は歴史が人類以外によって如何に作られるかを示している)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要旨

2世紀前、セネガル沖のゴレ島から多くのアフリカ系奴隷が、南北アメリカ行きの船に積み込まれて行きました。

新世界のプランテーション所有者が、たとえばアメリカ大陸の原住民ではなく、アフリカの奴隷を特に望んでいたのはなぜでしょうか?

「理由の1つはマラリアである。」と専門家は述べます。

 

マラリアは、16世紀のコロンブスのアメリカ大陸発見と共に南北アメリカに紹介されました。

寄生虫は奴隷と入植者の血で海を渡りました。

すぐに、膨大な数の原住民とヨーロッパ人が死にました。

しかし、アフリカ人は、マラリアへの遺伝的抵抗性のために、生き残る傾向がありました。

西インド諸島のプランターは、ヨーロッパ人よりもアフリカ人に3倍のお金を払っていた様です。

 

アフリカは、マラリアが最も広がっている大陸であり、今もなお続いています。

ヨーロッパの入植者はそれで死ぬ傾向がありました。

そのため、彼らは最もマラリアの少ない場所にのみ多数定住しました。

南アフリカの寒い冬の夜は蚊を殺します。ケニアとジンバブエの高地。そして北アフリカの地中海沿岸も同様です。

対照的に、西アフリカの一部では、入植者は毎年50%の確率で死亡する可能性がありました。

アフリカの非常にマラリアの多い地域では、帝国主義者は地元の有力者を通じて間接的に支配しました。

一方、非マラリア地帯では、ヨーロッパ人が一斉に定住し、何世紀にもわたる不満を引き起こした人種的不公正とともに、その多くが今日まで続く制度を創設しました。

マラリアは、470万人の白人市民を抱える現代の南アフリカが、ほんの一握りの白人駐在員しかいないナイジェリアと非常に異なる理由を説明するのに役立ちます。

南アフリカは、アパルトヘイトが終わってから四半世紀経った今でも、その傷跡は残っています。

 

マラリアは他の大陸でも歴史も作りました。

かつてヨーロッパでマラリアは広まりました。

古代ローマを征服するのが非常に困難だった理由の1つは、ポンティーナ湿地帯によって保護されていたためです。

ローマ人はそこで人々が捕まえた病気は有害な煙によって引き起こされたと考えました。

したがって、「悪い空気」からマラリアという名前が付けられました。

前三世紀、ハンニバがアルプスを越えました。

彼はローマを征服しかけましたが、マラリアのために撤退しました。

その後、さまざまな野蛮人による侵略が同様の運命を迎えました。

「世界は今でもローマ帝国の蚊に取りつかれた影の中に住んでいます」とワインガード氏は述べています。

多くの国がラテン語を話しますし、いくつかの政治システムはローマ法を採用しています。

ローマ帝国が存在しなければ、キリスト教も現在の様に広まらなかったでしょう。

マラリアは何世紀にもわたってローマを守っていました。

しかし、自然は静止していません。

5世紀頃、新しい種類の蚊がローマに新しく致命的な寄生虫をもたらしました。

熱帯熱マラリア原虫は、今日アフリカを襲っているマラリア株です。

熱帯熱マラリア原虫は、帝国を衰退させた可能性があると推測されています。

 

その後、1630年頃、イエズス会の宣教師たちは治療法を見つけました。

ペルーの山々で、彼らは寒さで震えているときに、原住民がキナの木の粉末の樹皮を摂取したことに気づきました。

有効成分はキニーネでした。

すぐに、イエズス会は注意深くキニーネの秘密を守り、彼らが好意を持った王や領主を癒すことによって影響力に変えました。

 

何世紀にもわたって、十分なキナの樹皮はありませんでした。

しかし、徐々に技術は向上しました。

1820年、フランスの化学者はキナからキニーネを抽出する方法を発見しました。

30年後、オランダ政府は、現在のインドネシアでそれらを育てる方法を考え出しました。

1900年までに、オランダ人は年間5,000トン以上のキニーネを生産していました。

 

第二次世界大戦が勃発したとき、ドイツ人はオランダを侵略し、オランダのキニーネの備蓄を押収しました。

日本はインドネシアを侵略し、キナのプランテーションを占領しました。

突然、枢軸国は世界のキニーネの95%を手に入れました。

これは彼らに大きな軍事的優位性を与えました。

日本軍は、マラリアの丸薬で武装し、蚊に対して無防備な中国を占領しました。

連合軍ははるかに保護が弱く、バターン島では、アメリカ軍とフィリピン軍の85%が、マラリアに襲われ、日本軍に降伏しました。

 

戦時中の需要は、良い代替品を発明する競争に拍車をかけました。

ドイツの科学者は、クロロキンを発明しました。

戦後、クロロキンは非常に広く使用されたため、寄生虫はそれに耐性を示しました。科学と進化の間の競争は今日も続いています。

戦後、ハマダラカの生息地にDDTを噴霧することで、ハマダラカ自体を駆除する大きな推進力が見られました。

これは、アメリカ疾病対策センターが「昆虫界の原爆」と呼ぶほど効果的な殺虫剤です。

1951年までに、マラリアは米国から姿を消しました。

1964年までに、インドの症例数は年間7500万人から10万人未満に減少しました。

しかし、DDTには副作用もありました。

アメリカでは、牛が殺虫剤を混入した草をむしゃむしゃ食べた後、ddtが牛乳から発見されました。

そして、化学物質に抵抗することができる蚊が進化しました。 

 

マラリアが存在しなかったとしたら、世界がどのように見えるかを推測するのは興味深いことです。

ハンニバルがローマを征服したとしたら、今日のヨーロッパ人はラテン語ではなくポエニ語から派生した言語を話すでしょうか?

大西洋奴隷貿易がそれほど儲かっていなかったら、アメリカは内戦と人種差別を避けていただろうか?

キニーネで強化された日本軍が中国の民族主義者をそれほどひどく虐待していなかったならば、毛沢東の共産主義者は権力を掌握することができただろうか?

そのような質問には答えられません。

しかし、人類はいつの日かマラリアのない世界がどのようなものかを発見するかもしれません。

世界の年間死亡者数は2000年以降約半分になり、約40万人になりました。

豊かな国々は、沼地を排水し、殺虫剤を噴霧し、エアコンの効いた部屋で寝ることによって、この病気を排除しました。

アフリカでは、マラリアは依然として多くの人たちを苦しめています。

それでも、それは打ち負かされる可能性があります。

セネガルは一部の地域でこの病気をほぼ克服しており、2030年までに全国的に一掃することを期待しています。

covid-19の混乱にもかかわらず、蚊帳、特効薬、ゲノム技術の組み合わせのおかげで、それは実現可能です。

歴史を作った新型コロナ

10年後、20年後現在を振り返った時に、新型コロナの影響はどの様に評価されるでしょうか。

もちろん何百万人もの死者を出した災禍として記憶されるのは間違いないですが、他にも歴史を大きく変えた原因として評価されるのではないでしょうか。

特にトランプ大統領の再選を不可能にした事は特筆されると思います。

もし新型コロナがなければ、経済は好調でしたので、バイデン 候補が勝つ可能性はほとんど無かったと思います。

世界最高の権力者である米国大統領の運命をも変える感染症、その威力の凄まじさは今も昔も変わりません。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。

 

バイデン 氏の台湾政策に一抹の不安

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中国政策の要 - 台湾

バイデン政権の外交チームは既に発足しましたが、その具体的な政策については未だ明らかにされていません。

日本にとって最も大事なのは対中政策北朝鮮問題かと思います。

いずれにせよバイデン 政権が中国とどう向き合うかが最大のポイントとなるわけですが、 その中でも台湾をどう扱うかが焦点になります。

ウォールストリートジャーナル(WSJ)が「Japan’s Biden Jitters - From Tokyo, a pointed Taiwan question for the President-elect.」(日本のバイデン 政権に対する懸念 - 次期大統領に向けられた台湾に関する質問)と題して社説を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

WSJ社説要約

2020年の米大統領選キャンペーンでは、外交政策にはあまり触れられませんでしたが、バイデン氏が最も多く言及したのは同盟関係の復活でした。

しかしどの同盟関係なのでしょうか?

バイデン氏の大統領就任まで4週間足らずとなる中、ジア太平洋の同盟国の一部は懸念を抱いてます。

先週、日本の防衛当局の文官ナンバー2である中山泰秀・防衛副大臣はロイターに対し、「中国が攻撃的なスタンスを香港以外の地域に拡大することを懸念している」と語りました。

そして「誰もが危惧するように、次の標的の一つは台湾だろう」と述べました。

さらに、今のところバイデン氏は台湾に関して明確な政策を示したり、発表を行ったりしていないと指摘。

同氏はそれをすぐにでも聞きたいと述べました。

そうすれば、日本側もそれに従って台湾への対応を準備できるからだと言います。

ロイターによると、同氏はこんな問いも投げかけました。「もし中国がレッドライン(越えてはならない一線)を越えるようなことがあれば、バイデン氏は大統領としてどう対応するのか?」

中国政府の強硬派は、台湾について分離独立を求める一地方とみなし、中国の統制下に置こうと必死です。

同時に、台湾の先進的な半導体技術も手に入れたがっています。

一方、台湾の民意は統一とは逆方向に動いています。

特に中国が条約義務を破り、香港の民主化運動参加者を逮捕している今はなおさらです。

中国の軍事行動が、バイデン氏の任期中に幅約177キロメートルの台湾海峡を越える可能性は排除できません。

台湾がその意に反して独立性を失えば、地政学的な激震が走ることとなり、太平洋地域の勢力バランスは決定的に中国有利へと傾くでしょう。

アジア諸国は米国との関係を見直す必要が出てきます。それは世界の安全保障や貿易に劇的な影響を及ぼすでしょう。

米国が目標を置くべきは抑止です。

そのために何よりもまず台湾を武装させ、たとえ米国の援護がなくても、中国が侵攻すれば高い犠牲を伴うようにすべきです。

また米国はこれからも、台湾の防衛戦に向けた軍備の代化や民間計画を支援し続けるべきです。

トランプ大統領率いる現政権は、ミサイルや機雷、無人機を含む台湾への武器売却を大幅に拡大しました。

しかし中国はバイデン氏に対し、気候変動を巡る約束と引き換えにしてオバマ前大統領が取った融和政策に戻るよう圧力をかける公算が大きいと思われます。

また中国は、米高官の台湾訪問を認める現政権の方針を、バイデン氏が続けるどうかを見極めようとするでしょう。

それは台湾の自治に対する米国の関心度を示すからです。

バイデン氏がきっぱりと米国は台湾の防衛にコミットすると表明する可能性は低いでしょう。

しかし、台湾周辺海域における中国の脅威や軍事演習は増大の一途をたどっています。

もしバイデン氏がアジアの米同盟諸国を安心させたいのであれば、台湾は同氏にとって最初の大きな試金石となるでしょう。

バイデン 氏の覚悟

WSJ社説が指摘する通り、台湾はバイデン 氏にとって紫金石となるでしょう。

米国が台湾を守る意思が無いと中国が判断すれば、中国は武力制圧を行う可能性があります。

台湾が中国に吸収される様な事になれば、日本を含めたアジアの米国同盟国は総崩れの状態となり、中国に雪崩を打って接近していく事でしょう。

アジア諸国は米国の台湾に対するコミットメントを固唾を飲んで見守っています。

バイデン 氏は台湾の防衛をコミット出来ないにしても、その意思がある事を何らかの形で明確に中国に伝えるべきだと思います。

それは防衛装備品の売却や台湾海峡に近いエリアでの軍事演習等色々なやり方があると思います。

中国が米国の意図を勘違いして冒険を冒す様な事の無い様、米国は曖昧な態度は避けるべきと思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。

管首相の知恵袋になった英国人ビジネスマン

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首相のブレイン

デービッド アトキンソンさんという外国人ご存知でしょうか。

この人を最初に見たのは、衛星放送番組であるFNNプライムニュースでした。

司会者の反町氏の厳しい質問を論理的に切り返していたのを見て、この人はただものではないと思いましたが、今や管首相のブレインとして活躍している様です。

オックスフォード大学出身のアトキンソンさんは、ゴールドマンサックスのアナリストとして活躍した後、現在は日本の国宝などを修繕している小西美術工藝社の社長を務めています。

ウォールストリートジャーナル(WSJ)が彼を取り上げて「日本の寺院を修復する一人の英国人が日本経済の指南役に」と題して記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

WSJ記事要旨

日本に住む多くの外国人と同様、デービッド・アトキンソン氏(55)は、日本経済のより良い運営方法に関してアイデアを持っています。

しかし、ゴールドマン・サックスのアナリストだったアトキンソン氏は、首相に意見できる唯一の在日外国人です。

英国人のアトキンソン氏は、日本政府の「成長戦略会議」を構成する経済専門家8人の中で唯一の外国人です。

彼は、日本語で書かれた12の著書を持ち、寺社のリノベーション事業の経営と、さまざまな会合での政策提言という異なる2つの分野で活躍しています。

会合の場では彼は、統計を駆使する。

アトキンソン氏は、オックスフォード大学卒業の数年後の1990年から日本に住んでおり、流ちょうな日本語を話します。

ゴールドマンで働いていた1990年代には彼は、先見性を持って、日本の銀行業界の弱さが経済を危険にさらしていると警告していました。

より最近の例では、彼は観光業振興の強力な支持者として知られています。

日本のスタグネーション(景気停滞)解消への第一歩は、中小企業の生産性の引き上げだというのが、彼の最新のメッセージです。

日本政府は今月、合併や新規分野参入に踏み切る中小企業に最大1億円を補助する計画を明らかにしました。これはアトキンソン氏のアドバイスの直接的成果です。

新型コロナの大流が世界中で中小企業に大打撃を与える中、アトキンソン氏を批判する人々は、中小企業には合併推進圧力をかけるのではなく、政府の支えが必要だと主張しています。

アトキンソン氏は、日本には他に選択の余地がないと主張します。

世界銀行によれば、日本では中小企業の低い生産性が要因となって、昨年の労働者1人当たりの平均生産額が7万8570ドル(約814万円)にとどまりました。

これは米国の水準を40%近く下回っています。さらに厳しいことに、日本では労働人口の高齢化と減少が進んでいます。

「労働人口の生産性が上がらなければ、日本は自滅します」とアトキンソン氏は語ります。

アトキンソン氏は訪日観光客を増やす戦略の推進者となりました。

この戦略は新型コロナに見舞われるまでうまくいっていました。

海外から日本を訪れる観光客の数は、2011年から昨年までで5倍に増加しました。

アトキンソン氏は、日本にはトヨタなど、その分野で世界有数の力を持つ企業が一握り存在するものの、何百万社もの中小企業が前進を妨げていると主張してきました。

中小企業は成長や技術への投資を嫌うことが多いからです。

彼の意見に耳を傾けていた人が菅義偉氏です。

菅氏は長年、成長を活性化させる方法を探していました。

アトキンソン氏によると、菅氏とは4年前から年に2度面会しており、菅氏はアトキンソン氏の著書を読んでいると述べたそうです。

アトキンソン氏によれば、「彼は私が今までに会った他のどの年長の政治家よりも、数字や分析に興味を持っていた」と言います。

アトキンソン氏は11月に開かれた政府の「成長戦略会議」で、日本商工会議所の三村明夫会頭と激論を交わしました。

三村氏はその時、事業オーナーが従業員の生産性を上げるために最低賃金を上げるなどといったアトキンソン氏の考えの一部を採用すれば、破産や多くの企業の廃業といった結果を招くと述べました。

この議論の結果もまた、異例のものでした。

外国人の意見が通ったのです。

菅氏は中小企業の合併・買収を促す案を盛り込んだ計画発表の中で、「日本企業の最大の課題は生産性の向上だ」と表明しました。

元中小企業庁長官で安倍晋三前首相の首相補佐官を務めた長谷川栄一氏は、小規模な小売業者など一部の企業は、必ずしも利益の拡大を求めていないと言います。

ある企業のオーナーが例えば68歳だった場合、新たな投資をするようこの人物を説得しようとするか疑問だと言います。

民間信用調査機関の帝国データバンクによると、新型コロナの感染拡大が始まって以降、倒産申請を行った500件を上回る企業の約80%が中小企業だった。

アトキンソン氏は、「パンデミックはある意味で、経済分野で生産性の最も低い分野を直撃している」と指摘するとともに、「それはある程度、われわれが話し合っている企業再編プロセスを加速することになるだろう」と語りました。

日本の生産性は上げられるのか

実は私も、このアトキンソンさんの著書「新・所得倍増論」を読んでいる最中です。

日本は一時期GDPで世界第2位になりましたが、アトキンソンさんによれば、これは日本の優れた技術力や研究開発力が原因ではなく、単に先進国の中で人口が米国に次いで多かったからだそうです。

確かに日本はドイツや英国に比べて圧倒的に人口では上回っています。

ジャパンアズナンバーワンと言う本がありましたが、日本が成長神話に踊っていた時も、アトキンソンさんは日本の生産性の低さを的確に問題視していました。

一方で、彼は日本の持つ潜在的成長力には着目しています。

インバウンドの観光客を増やす戦略はコロナ感染で足踏みさせられましたが、日本の観光業の持つ潜在力に着目した彼の非凡さを示すものです。

日本の失われた20年を取り戻すには、こういった異色の人材を積極的に登用すべきだと思います。

前例を踏襲する組織のままでは、日本の明日は描けないと思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。

 

英国のゲノム解析技術が特定した新型コロナ変種

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英国で発見された新型コロナ変種

英国で新型コロナの変種が発見されたニュースは世界を驚かせました。

日本でもロンドンからの搭乗客5名が変種の新型コロナに感染していた事が判明しました。

実はこのウイルス変種はそう簡単に発見できる代物ではなく、英国の研究者が最新のゲノム解析技術を駆使して突き止めたものだった様です。

もし英国で発見されていなければ、日本での発見は相当遅れていた可能性が大きいと言われています。

この英国での発見に関して米紙ウォールストリートジャーナル(WSJ)が How British Scientists Tracked Down the New Covid-19 Variant - Researchers are trying to determine whether the variant will cause more-serious disease and evade vaccines(英国の科学者は如何にして新型コロナ変種を発見したか - 研究者たちは、変種がより深刻な症状を引き起こし、ワクチンを回避するかどうかを判断しようとしている)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

WSJ記事要約

英国の公衆衛生当局者は当惑していました。

全面的なロックダウン導入で、11月下旬頃までには国内大半の地域で新型コロナウイルスをほぼ封じ込めていたにもかかわらず、不可解なことに、英南東部のある地域では感染者が急増していたためです。

職場でソーシャルディスタンスを無視したか、違法なホームパーティーで人が集まっていたか――調査に乗り出した疫学者らは当初、こうした予想を立てていました。

しかし、そのいずれの事例も発見されませんでした。

行き詰まった疫病学者は、ウイルスのゲノム変異を分析する科学者チームに協力を依頼しました。

12月8日、この科学者グループがコロナ変異種をケント州で発見しました。翌日には、ロンドンで検査を受けた患者からも同じ変異種が確認されました。

ケンブリッジ大学の微生物学者で、同グループを率いるピーコック氏は「ゲノムデータやケントでの感染拡大の詳細を分析することで、重要な発見につながった」と話します。科学者にとって「ひらめきの瞬間」だったと言います。

その後も新たな情報が集まり、14日にはハンコック保健相が議会に対して、ロンドンおよび南東部で1000人が変異種に感染しており、急速に広がっていると明らかにしました。

変異の1つは、スパイクタンパク質に変更を加えることで、ウイルスが細胞壁に接着しやすく、そして体内に侵入しやすくしました

従来のウイルス種よりも感染力が強い可能性があります。

発見された当時、ロンドンの感染者の62%が変異種による感染でしたが、その後も変異種による感染が急激に広がっています。

英国全体の直近の感染者データによると、欧州諸国の大半では感染者数が減少しているにもかかわらず、23日までの7日間平均は前週比61%増となっています。

ウイルス感染に遅行して現れる入院数や死者数は、それぞれ16%、20%増えている。

 

英政府の諮問機関で議長を務めるホービー氏は23日、議会で、感染急拡大を招いている根本的なメカニズムはまだ完全には解明できていないと述べました。

ウイルスの複製スピードが速いことが要因として考えられるが、そうであれば、体内のウイルス量が一段と多くなり、感染力が強まることを意味すると言います。

もう1つの仮説は、ウイルスとの接触から感染力が生じるまでの期間が短くなり、他人への感染も速まるのではないかというものです。

研究者らの目下の焦点は、変異種によって病状がより深刻になるのか、開発されているワクチンの予防効果が失われるかどうかの2点だ。

米ファイザー・独ビオンテックのワクチン開発者や科学者の間では、ワクチンはウイルスのさまざまな部分を攻撃する抗体を作り出すため、小さな部分で変化が起きても、ワクチンの効果が全くなくなる公算は小さいとの見方が大勢だ。

こうした中、英国内ではここ数週間、「ゼロ号患者」の特定も進められています。

仮説の1つとして、欠陥のある免疫系を持つ人から変異種が生まれたのではないかとの説が出ています。

免疫系に欠陥があると、ウイルスがその中で長く生きのびることができるため、大量の変異を起こす温床になることが多いです。

前出のピーコック氏は、「これが英国内の患者から発生したのか、外部から持ち込まれたのか、われわれは全く分かっていない。現時点で断定することはできない」と述べます。

その後のデータなどから、英国の科学者は、変異種が従来種よりも速いスピードで再生できるとの確信を強めています。一部の推計モデルによると、感染力が50~70%も高い可能性があることが示されました。

日本の感染症対策は十分か

この記事を読むと、英国で新種が発見されたのは、幸運にも同国の感染症研究のレベルが高く、ゲノム分析からウイルスの変異を特定出来たためだという事が解ります。

同じ様な事が日本で起きた場合、英国と同じ様なスピードで原因を特定できたか甚だ疑問です。

日本は感染症対策で世界の先端を走っていると思われる方もおられると思いますが、水際対策一つとってみてもかなりお粗末と言わざるを得ません。

3月に私がイスタンブールからの直行便で帰国した際、検温も問診もなく、搭乗客全員をノーチェックで通関させた事からも解る通り、空港でのチェックは極めて甘いと言わざるをえません。

変種のコロナウイルスは既にかなり日本に入り込んでいると思った方が良いと思いますが、今からでも遅くないので、空港、港湾でのチェックを厳格にすべきと思います。

 

最後まで読んで頂き有り難うございました。

土壇場でまとまったブレグジット協議 - 勝者はどちらか

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新型コロナ変種が合意なき離脱を回避させた

土壇場でブレグジットに関する協議が纏まりました。

先日、英国が新型コロナの変種とブレグジット交渉の行き詰まりでダブルパンチをくらっているという話をさせて頂きましたが、最後の瞬間に両者が合意なき離脱に対する恐れから歩み寄った様です。

一部には新型コロナ変種が両者を歩み寄らせたとの見方もあります。

これはどういう事かといえば、新型コロナ変種の英国での発生を受け、フランスが英国へのトラック輸送を一斉に停止させたのですが、この動きが合意なき離脱がもたらすインパクトを両者に認識させたという事の様です。

土壇場で纏った両者の合意をドーバー海峡の両岸即ち英国とフランスはどの様に捉えているでしょうか。

英仏のメディアの論調をご紹介したいと思います。

英BBC社説抜粋

当初は不可能と言われていたような大規模な貿易協定を期限内で行ったことは、双方にとって大きな成果です。

皆さんの個人的な見解がどうであれ、EU離脱のキャンペーンを行った陣営には公約を達成した感覚があります。

彼らは貿易割当(Quota)ゼロと関税ゼロを自由貿易協定において獲得し、欧州の法律から英国を開放しました。

政府の経済監視機関である予算局は、合意なき離脱は来年の国民所得を2%縮小させ、大きな失業につながるだろうと警告していました。

また、多くの輸入品の価格上昇につながる懸念もありました。

一方、この取引が英国の他の事業にとって何を意味するのかについては、まだ大きな疑問符があります。

来週、EU単一市場と関税同盟を去るとき、我々は余分な事務処理に直面するでしょう。

しかし、英国とその最大の貿易相手国との間の関税の脅威(輸入税)は取り除かれるでしょう。

仏紙Les Echos記事抜粋

実際には、まったく同意しないよりも同意する方が良いです。

イギリスだけでなく、フランスにとってもです。

週の初めに新型コロナの変種が発見されてから、48時間にわたってフランスと英国沿岸の国境が閉鎖されたことで、「合意なき離脱」がどのようなものかを味わうことができました。

ドーバーで待機している17,000台以上のトラックや、英国で生産された部品の一部を使用するバレンシエンヌ(フランス)のトヨタなどの工場が閉鎖されました。

英国のヨーロッパのバリューチェーンへの統合は明らかに重要です。

そして、フランスは商品と乗客の通路です

毎年500万台のトラックがカレーに到着し、3000万人の乗客がイギリスからフランスに到着します。

イギリスはフランスの主要な商業パートナーです。

昨年、フランスは340億ユーロの商品を英国に輸出し、210億ユーロ強を輸入しました。

今回の合意により、商品に対する法外な関税、特に航空、自動車、医薬品におけるバリューチェーンの完全な混乱を回避する事ができます。

昨年英国に45億ユーロの商品を販売したフランスの食品産業にとっても英国はは重要な市場であり続けるでしょう。

要するに、この合意は、英国との間で最大の二国間貿易黒字(昨年は120億ユーロ)を達成しているフランスにとって歓迎されるものです。

確かに、金融や漁業などの特定の分野では、合意はあまりプラスの結果をもたらさないかもしれませんが、英国に対する貿易黒字は「合意」がなければもっと少なくなっていたでしょう。

どちらが勝利を得たのか

英仏のメディア論調を見ると、英国もフランスも合意なき離脱は本心では避けたい事態だった様です。

特にフランスにとっては、最大の貿易黒字を記録している英国との間に貿易障壁が出来る事は絶対避けたい事態だった様です。

だとすれば、EUの表面上の強硬姿勢の裏にFTAを結びたがっている本心がある事を見抜いた英国ジョンソン首相の作戦勝ちだったのでしょうか。

まだ結論を出すのは早い様です。

英誌Economistは次の様に警告を鳴らしています。

「大きな懸念は、今回の貿易規定はほぼ完全に商品に関連している事です。

英国の経済の80%を構成し、世界で最も急成長しているサービスに関しての規定はほとんどありません。

EUの金融サービス規制に関する決定や、国境を越えたビジネスの重要な部分である、データの無料転送を許可するEUの規定が含まれていません。」

英国はもはや物づくりではなく、サービス特に金融業で成り立っている国です。

この点に関する合意が同国の将来を左右する事は間違いありません。

英国が国際金融の拠点Cityを死守できるかはこれからの交渉にかかっています。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。

米国でも問題視されている韓国の新法

 

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理解に苦しむ韓国の新法

お隣の韓国政府が北朝鮮への風船ビラを取り締まっている事を以前ブログで書きました。

 

www.miyoshin.co.jp

 

この話は米国でも話題になっている様です。

米紙Foreign Affairsが「Don’t Leave North Koreans in the Dark - South Korea’s Misguided Ban on Sending Information Across the Border」(北朝鮮を暗闇に閉じ込めるべきではない - 国境超えに情報を送る事を禁止する韓国政府の判断は間違いだ)と題する論文を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Affairs論文要約

ソウル郊外の目立たないオフィスで、私が「カン」と呼ぶ男は韓国のテレビドラマやドキュメンタリーをUSBドライブにコピーします。

ソウルでは、このコンテンツは誰でも入手可能です。

しかし、それが送られるところでは、そのような情報はまれであり、危険です。

ドライブの準備が整うと、北朝鮮に密輸されます。

北朝鮮では、ドライブに含まれるプログラムが平壌の全体主義政権によって禁止されており、ドライブを所有ましている人は高額の罰金、懲役、さらには死刑執行のリスクに晒されます。

カンは2011年に北朝鮮から逃亡したので、情報の力を理解しています。

「外国のラジオ番組を密かに聞いた後、政権に対する私の信頼は失われた。」

「私は自由な国に住んでいるので、嘘に基づいた生活を送っている同胞と世界の情報を共有することが私の義務です。」と彼は述べました。

 

カンは一人ではありません。

現在、何千人もの韓国の活動家が、USBドライブ、海賊放送、さらにはドローンや気球によって国境を越えて配信されるチラシを介して情報を北朝鮮に提供する取り組みを支援しています。

私が以前「Foreign Affairs」で報告したこれらの努力のおかげで、これまで以上に多くの北朝鮮人が、金正恩政権が彼らを欺き、権力を握り続けるために使用するプロパガンダと現実の間のギャップを認識しています。

金正恩が最も嫌悪するのは、彼の抑圧的な体制に疑問を呈する事が出来る情報に通じた市民です。

したがって、政権はカンの様な人々を犯罪者と見なします。

 

そして、今や韓国の政府がカンの様な人々をあぶり出しています。

先週、韓国の文在寅大統領の与党は、リーフレットやUSBドライブなど、幅広い手段による北朝鮮への情報の配布を禁止する法律を韓国議会で可決しました。

この法案は、懲役3年または最高3000万ウォン(約27,000ドル)の罰金を定めています。

その法案は、韓国からの情報の密輸を猛烈に非難した金正恩政権を軟化させることを意図しています。

 

この法案は、平壌との和解を通じて朝鮮半島の平和を確保するという企ての最新のステップです。

その目標のメリットが何であれ、文在寅大統領の問題は北朝鮮の人権を促進する多くの活動の抑制につながった事です。

金正恩をなだめるため必死の文政権は自由民主主義の基本原則に背を向けました、

ソウルは現在、平壌の弾圧を直接支援し、幇助しています。

韓国政府は北朝鮮人を罰するするのではなく、北朝鮮人に情報を提供する努力を支援すべきです。

 

北朝鮮人に情報へのアクセスを提供することは、内部から前向きな変化を作り出すための効果的で低コストの戦略です。

北朝鮮からの難民の子として生まれ、人権弁護士となった文在寅は、この事を誰よりも理解しているはずです。

2017年のインタビューで「両親は北朝鮮の共産主義体制を軽蔑したため、朝鮮戦争中に北朝鮮から逃げました。彼らは自由を求めて逃げました。」と彼は述べました。

1970年代、韓国自身の民主化運動に参加した事で、文在寅は投獄されました。しかし先週の時点で、彼は現在、言論の自由を行使した市民を投獄する政府を率いています。

 

そのような活動を禁止しても、国境を越えた緊張が恒久的に緩和されるわけではありません。

北朝鮮は、トラブルを引き起こす言い訳を見つけてきた長い歴史があります。

韓国人の基本的権利に制限を課すことによって平壌の要求に応じることは持続可能な戦略ではありません。

 

文在寅の党は、そのアプローチがワシントンで歓迎されると信じています。

法案が可決される前、韓国議会の外務国家統一委員会の宋永吉委員長は、この法案がバイデン政権と北朝鮮の交渉の突破口となることを期待して、法案をが「時宜を得た」ものだと述べました。

しかし、バイデン氏はは人権を促進した実績があり、彼の政権が新しい法律を受け入れるかどうか疑わしい。

伝えられるところによると、彼の政権において重要な役割を果たすことが検討されている人物の1人は、Samanth Powerです。

彼女は、米国の国連大使として、2016年に脱北者のチョン・グァンイル氏を訪問した際に、北朝鮮の人権への支持を表明しました。



トランプ米大統領の金正恩に対する明らかな好意は、共和党員に韓国の和解的アプローチを支持させるかもしれません。

しかし、一部の共和党員はすでに懸念を表明しています。

12月11日、ニュージャージー州の共和党議員であるスミス議員は、新法を批判し、「韓国政府の公民権および政治的権利の擁護に関する公聴会を召集する」と述べました。

 

北朝鮮の抑圧的な戦術が韓国に波及するのを許す代わりに、文在寅の政府は市民の技術革新を利用し、北朝鮮に情報を配布する韓国の市民社会組織を静かに支援するべきです。

そうすることは、文在寅政権と韓国の市民社会組織との間の現在の対立を和らげるという効果ももたらします。

一方、バイデン政権は、北朝鮮の人権と韓国の市民的自由の保護を支持していることを明確にし、文在寅政権に新法の撤回を提案すべきです。

国際的な共感を得られない新法

上記論文の説く通り、北朝鮮との融和を優先するあまり、基本的な人権を侵害するというのは国際的な共感を得られないと思います。

北朝鮮からの難民の子として生まれ、人権弁護士として名を馳せた文大統領がなぜこの様な法案を支持しているのか理解に苦しみます。

バイデン政権もこの新法を支持するとは思えません。

それにしても、バイデン政権がSamantha Powerを起用する事を検討しているというのは面白いですね。

彼女は国連大使としてトランプ大統領に起用され、次期共和党大統領候補として有望視されている人物です。

共和党員を政権に迎え入れるという手法は、過去の米国民主党政権が何度か採用してきましたが、国民の一体感を出すにの効果的だと思われます。

彼女が舌鋒鋭くこの問題を世界に発信してくれる事を期待します。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。

新型コロナ変種とブレグジットの二重苦に悩む英国

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ウイルス変種英国で猛威を振るう

英国がかなり厳しい状況に陥っている様です。

既に日本のメディアでも取り上げられていますが、新型コロナの変種が見つかり、ここのところの新規感染者はうなぎ上りとなっています。

欧州各国のみならずトルコなど周辺国も英国からのフライトを禁止しました。

一方、ブレグジットに関するEUとの交渉は、期限があと10日を切った現在も合意に達していません。

新型コロナとブレグジット一見関係のない二つの事象が重なった場合、深刻な問題が生じる様です。

英誌Economistが「How covid-19 and Brexit combined to isolate Britain - Border closure in the Channel: continent cut off」(新型コロナとブレグジットを組み合わせて英国を隔離する方法 - ドーバー海峡の国境閉鎖:大陸の遮断)と題して記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

2020年の英国の2つの大きな物語である、ブレグジット新型コロナは、互いに大きな影響を与えることなく、並行して推移してきました。

しかし、12月31日のブレグジット移行期間の終了が近づくと、元法相のデービッド ゴークは、「テレビドラマの最終章のように、筋書きが一つにまとめられた」と指摘しました。

 

2つのストーリーラインを統合した出来事は、伝染性が高いと考えられている新型コロナの変種の出現です。

これにより、ヨーロッパ内外の多くの国が、ブレグジットに関する交渉と同様に、英国からの入国をストップさせました。

英国と欧州連合の間のブレグジット貿易交渉は最終週に入ります。

ドラマの最終章の場所ケントはウイルス変種が最初に特定された場所であり、ドーバー海峡の本拠地でもあります。

EUとのトラック輸送の90%が通過する港は、12月31日に起こりうる問題に対処するために準備してきましたが、12月20日、フランスとの国境が閉鎖されたため、問題は早期に発生しました。

 12月21日、輸送業者の業界団体であるRHAは、ドーバーへの高速道路上のトラックの列は数マイルの長さであると述べました。

影響はケントのトラック運転手だけではありません。

英国の買い物客は新鮮な農産物が不足していることに気付くでしょう。

RHAは「多くのEUの運転手が英国に来ることを拒否している」と述べ、スーパーマーケットのセインズベリーはレタス、キャベツが不足する可能性があると警告しました、

ブロッコリーと柑橘系の果物、これらはすべてドーバー海峡経由です。

フランスは、国境が再び開かれる前に、厳格な新型コロナ検査体制を導入することを求めています。

英国の検査能力に関する既存の問題を考えると、それを達成するのは難しいかもしれません。

 

「地獄からのクリスマス」のエピソードでは、3つのテーマがストーリーを絡み合わせています。

1つは、変異する傾向があるウイルスの性質です。

新型コロナウイルスが経験した突然の変異は、それをより伝染させたようです。

変種が英国で発生したのか、英国の科学者がウイルスのゲノムの変更を頻繁に行ったために英国で特定されたのかは、誰にもわかりません。

しかし、英国ではウイルスの伝染が加速しており、新型コロナの症例は12月20日までの1週間でほぼ2倍になり、他国の政府に英国からの旅行者の入国を禁止させました。

 

ブレグジットに関する交渉もまた、年末の危機の原因となっています。

英国がEU離脱を決議してから4年、英国とEU間の離脱協定が合意されてから1年以上経ち、移行期間が終了するまでわずか10日ですが、未だに交渉が続いています。

主な問題点は、魚と「公平な競争環境」です。

つまり、規制システムが時間の経過とともに変化しようが、両者間の競争を公平に保つ方法についての議論です。

双方は合意を望んでいますが、どちらも譲歩するつもりがないので、交渉は崖っぷちに向かって進んでいます。

英国が合意なしで離脱した場合、、農産物に対して最大40%の関税と、より多くの事務処理に直面することになります。

 

最後に、ゴーク氏が「行き過ぎた楽観主義」として指摘した英国政府の方針も、この危機の一因となっています。

コロナ感染とブレグジットに直面したジョンソン首相は、悪いニュースを配信することを躊躇し、説明が不十分でした。

首相は一貫してポジティブな面を見たために、より暗い結果に備えることができませんでした。

そのため、彼は3月に国を封鎖するのに時間がかかり、感染第一波を悪化させ、検査追跡システムを稼働させるのに時間がかかり、新種のウイルスにも迅速に反応できませんでした。

そしてブレグジットについて、彼の政府は一貫して、この取引は「人類史上最も簡単」であり、「私たちはすべてのカードを保持している」と約束します。

英国は他のどのヨーロッパ諸国よりも「合意なし」の結果に対して脆弱であることを考えると、それは明らかに真実ではありません。

それでも政府は、英国を崖の端っこそして更にその先に連れて行けると信じているようです。

 

ドラマの最終章はほとんどの英国人にとって不快なものになるでしょうが、それでも政府によって違ったトーンで説明される可能性があります。

ブレグジットと新型コロナの混乱が重なった場合、英国政府は食料品の不足を悪天候と卑劣なフランス人のせいだと非難する事でしょう。

後手にまわったジョンソン首相

ただでさえブレグジットの交渉難航で、年明けの食料品不足が懸念されていた英国ですが、その上新種のウイルスのせいで、欧州から物が入ってこなくなれば、かなり大きな混乱に見舞われそうです。

ブレグジットを牽引してきたジョンソン首相はこの局面をうまく乗り切れなければ、政治責任を問われそうです。

EUとの交渉については勝算があったのでしょうが、新型コロナを甘く見たのが現在の厳しい状況を招いていると思います。

自ら感染し、集中治療室にまで入ったのですから、この病気の怖さは身に染みてわかっている筈なのに、なぜ、コロナを過小評価したのでしょうか。

新型コロナは人間が感染症を前にした時、如何に脆弱かという事を明らかにしてくれたと思います。

日本もブレーキとアクセルを両方踏む様な事をやっていれば、英国の二の舞になりかねません。

急がば回れで、まずは目の前のコロナを退治する事に全力をあげるべきと思います。

国連組織への中国の浸透

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中国よりなのはWHOだけではない

コロナ感染が武漢で広がり始めた頃に世界保健機構(WHO)のテドロス事務局長は、感染拡大初期の中国の対応を称賛し、中国人の入国を禁止する措置はやりすぎだと発言し、その後世界中から批判を受けました。

国連関連機関の中国よりの姿勢はWHOだけではありません。

中国は随分前から国際機関への影響力強化を狙って、用意周到に手を打ってきました。

その中の一つである国連人事理事会への中国の働きかけに関して、英誌Economistが「Sensing change in Washington, China is mustering allies at the UN - Joe Biden may show more interest than Donald Trump in the body’s human-rights debates」(米国政権交代を受け、中国は国連での同盟国に協力を呼びかけている - バイデン氏はトランプ大統領より人権に興味を示すだろう)と題して記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介致します。

Economist記事要約

2018年にアメリカが国連人権理事会から撤退したとき、中国は遺憾の意を表明しました。

誰もそれを中国の本心とは思いませんでした。

人権理事会は、中国にとって大きな屈辱になる様なトピックを扱っています。

この理事会に世界で最も強力な民主主義国家が存在しないことで、中国の人権虐待が非難を免れる可能性が高くなりました。

しかし、バイデン氏がアメリカの大統領に就任する準備をしている今、中国は今後直面するトラブルを恐れています。

 

その証拠に、誰をこの理事会の理事長にするかに関しての確執が始まっています。

ロシアとサウジアラビアに後押しされた中国は、この理事会の理事長の最有力候補であるフィジーを妨害しようと試みています。

バイデン氏がすぐにアメリカをこの理事会に参加させることを想定して、理事会の民主主義国メンバーはフィジーを支援する戦いを重要と考えています。

誰が理事会を率いるのかという問題は些細なことに思えるかもしれません。

結局のところ、議題を設定するのは、理事長ではなく、47か国のメンバーです。

そして、メンバーは中国に挑戦するのに苦労してきました。

理事会は、中国の新疆ウイグル自治区でのウイグル人の大量収容または香港の自由の剥奪に関する決議をまだ可決していません。

トランプ政権は、アメリカを理事会から撤退させました。

しかし、理事長は、多くの権限を持ち、特別報告者の任命を行う事ができます。

6月、理事会によって任命された50人以上の特別報告者と専門家が、新疆、チベット、香港での権利侵害について中国を非難する声明に署名し、中国を激怒させました。

次の理事長は、国連総会によるその作業の5年間のレビューにおいて大きな役割を果たします。

これは、メンバーシップの基準を改訂するなど、アメリカが望んでいる改革をもたらす可能性があります。

 

重要なのは、人権の評判が悪い国から理事長を任命することは、西側ですでに問題とされている理事会のイメージにさらに大きなダメージを与える可能性があるということです。

2003年、理事会の前身である国連人権委員会がリビアを委員長に選出しました。

これは3年後の委員会の解散の原因となりました。

同様のことが再び起こった場合、バイデン氏がアメリカの理事会への復帰を支持することは困難になるかもしれません。

もしそうなれば、中国にとって勝利となるでしょう。

中国は、この組織を人権に関する規範を再定義するキャンペーンの橋頭堡と見なしています。

彼らは、人権の意味を弱めるために組織を利用し、個人の権利よりも国家主導の開発を優先させ、虐待を犯したときに国に説明を求めるのではなく、国家間の敬意のある「対話」を重要視しました。

また、特定の国に対する決議に激しく反対し、各国が他国の問題に干渉してはならないと主張します。

10月、39の国連加盟国が新疆ウイグル自治区での虐待を非難する声明に署名しました。

これは1年前の23か国から増加しています。

中国を擁護する声明に署名した国は50か国以上から45か国に減少しました。

 

2021年、理事長はフィジーと中国が所属する国連のアジア太平洋グループのメンバーの中から選ばれる事になっています。

フィジーの代表者は、人権に対する姿勢で広く尊敬されています。

これまでフィジーは対抗馬が現れる事なく選出されると思われていました。

しかし11月、バーレーンが正式に理事長候補として名乗りを挙げました。

その後、シリアはフィジーの立候補に反対しました。

外交官は、これらの動きは中国とその支援国によって画策されたと分析しています。

その後、中国にも受け入れられる第3の候補者、ウズベキスタンが出現しました。

フィジーとその太平洋諸島の隣人たちはいじめられていると感じました。

民主主義国は国連関連組織を重視すべき

Economist記事が記載する様に、中国は国連人権理事会と言った人権侵害を糾弾すべき組織にも、長い時間をかけて、自らの影響力を増大させ、香港やウイグルの人権問題が国連で非難されない様に手を打ってきました。

「それぞれの国にはそれぞれの事情や固有の歴史伝統がある。内政干渉はやめよう。」と唱えて、アフリカや中南米の独裁者を味方につけています。

トランプ大統領は国連関連機関を軽視し、脱退さえ躊躇しませんでしたが、国連から身を引くのは中国を喜ばせるだけだと思います。

バイデン新政権が、国連関連機関に復帰し、人権の問題を、真剣に取り上げてくれる事を願います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。

米中覇権争いの見通し

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バイデン政権にとっても最重要課題 - 中国

米中の対立はトランプ政権末期に激化しました。

この対立の本質は世界覇権を巡る争いですので、バイデン政権になっても継続されるのは間違いありません。

この対立の本質、今後の見通しについて米誌Foreign Affairsが「Competition With China Could Be Short and Sharp - The Risk of War Is Greatest in the Next Decade」(中国との競争は短く激しいものになりうる - 戦争のリスクは向こう10年が最も高い)と題した論文を掲載しました。

長い論文ですのでかいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Affairs論文要旨

外交界では、米国と中国が一世紀続くかもしれない「超大国マラソン」を実行しているというのが一般通念になっています。

しかし、その競争の最も危険な期間は、目の前の10年になるでしょう。

米中の覇権争いはすぐには決着しません。

しかし、歴史と中国の最近の行動は、最大の危機がほんの数年先にあることを示唆しています。

 

中国は台頭する勢力として、最も危険な時期に突入しました。

既存の秩序を崩壊させる能力を獲得し、台湾海峡5Gをめぐる争いなど、重要な分野で勢力均衡が北京に有利にシフトしています。

しかし、中国は一方で、顕著な経済の減速国際的な反発の高まりに直面しています。

米国にとっての朗報は、長期的には、中国との競争が多くの悲観論者が信じているよりも扱いやすいかもしれないということです。

アメリカ人はいつの日か、彼らが現在ソ連を見る様に中国を振り返るかもしれません。

悪いニュースは、北京が地政学的利益を求めて突進するようになるにつれて、今後5年から10年の間に、戦争の可能性が現実になることです。

 

中国には、主要分野で米国に挑戦するための資金と国力があります。

何十年にもわたる急速な成長のおかげで、中国は世界最大の経済(購買力平価で測定)、貿易黒字、財政準備金、海軍船舶数を誇っています。

中国の投資は世界中に広がっており、北京は5G通信や人工知能(AI)などで優位に立っています。

しかし、中国のチャンスはすぐに失われるかも知れません。

2007年以降、中国の年間経済成長率は半分以上低下し、生産性は10%低下しました。

一方、債務は8倍に膨れ上がり、2020年末までにGDPの合計335%に達するペースで進んでいます。

向こう30年間で、中国は2億人の生産人口を失い、高齢者が3億人増加するため、経済停滞は顕著になるでしょう。

経済成長が低下するにつれて、社会的および政治的不安の危険性が高まります。

中国の指導者たちはこれを知っています。

中国のエリートは彼らのお金と子供たちを海外に移しています。

 

その間、世界的な反中感情は天安門事件以来見られなかったレベルに急上昇しました。

12か国が、一帯一路プロジェクトへの参加を一時停止しました。

多くの国が、5Gネットワ​​ークでのHuawei製品の使用を禁止しました。

インドは国境で激しく対立し。日本は、台湾近郊の琉球諸島にミサイル発射装置を設置しました。

英仏独は、南シナ海とインド洋に海軍を派遣しています。

 

歴史を振り返れば、成長していたが、時間がないと焦った勢力が絶望的な企てを行うことを示しています。

第一次世界大戦は典型的な例です。

台頭するドイツは英仏露三国協商を前にして壊滅的なリスクを犯しました。

同じ論理が、1941年の大日本帝国の致命的な賭けを説明しています。

米国の石油禁輸により、成長著しい日本はアジア太平洋を支配する機会を閉ざされました。

 

中国は現在、厳しい経済予測と厳しい戦略的包囲の両方に直面していることを考えると、今後数年間は特に混乱する可能性があります。

米国は明らかに中国と競争するための長期戦略を必要としています。

しかし、同時に、向こう10年間の中国の侵略と拡大の潜在的可能性を抑える必要があります。

初期の冷戦は有用な類似点を提供します。

当時、米国の指導者たちは、ソ連との長期的な闘争に勝つためには、短期的に重要な戦いに負けないことが必要であることを理解していました。

1947年に発表されたマーシャルプランは、西欧の経済崩壊を防ぐことを目的としていました。

そのような経済崩壊により、ソ連は大陸全体に政治的覇権を拡大できる可能性があったからです。

NATOの創設西欧の再軍備は、西側の繁栄を可能にする軍事的盾を築きました。

 

今日、米国は再び同様な戦略を必要としています。

それは3つの原則に基づくべきです。

第一に、長期的な勢力均衡を根本的に変える中国の短期的な成功を否定することに焦点を当てる事です。

最も差し迫った危険は、中国による台湾の征服5G通信ネットワークにおける中国の卓越性です。

第二に、開発に何年もかかる新規の関係作りではなく、現在利用可能なパートナーシップに依存する事です。

第三に、中国の行動を変えるのではなく、中国の力を選択的に低下させることに焦点を当てる事です。

 

ワシントンの最優先事項は台湾を支援することでなければなりません。

中国が台湾を吸収すれば、世界トップクラスの技術を利用できるようになり、「不沈空母」を獲得して軍事力を西太平洋に投射し、日本とフィリピンを封鎖する能力を獲得するでしょう。

中国はまた、東アジアにおける米国の同盟関係を崩壊させるでしょう。

台湾は中国の侵略に対する要塞です。

中国は何十年もの間、台湾との経済的つながりを築くことによって統一を買おうとしてきました。

しかし、台湾の人々は、事実上の独立を維持することをこれまで以上に決意しています。

その結果、中国は軍事的選択肢を振りかざしています。

現在の台湾の防衛装備は十分ではありません。

米国は台湾に、ミサイル発射装置と武装ドローンを配備するべきです。

これらの部隊はハイテク地雷原として機能し、中国の侵略部隊に深刻な打撃を与えることができます。

そして、米国は他の国々を台湾の防衛に参加させるべきです。

日本は中国の台湾北部へのアプローチを阻止することをいとわないかもしれません。

インドは、米海軍がアンダマンニコバル諸島を使用して北京のエネルギー輸入を阻止することを許可する可能性があります。

欧州の同盟国は、台湾攻撃の場合、中国に厳しい制裁を課す可能性があります。

米国は、これらの行動をとることを、公にコミットするようにパートナーを説得​​すべきです。

そのような措置が中国の台湾攻撃を思いとどまらせる可能性があります。

 

米国は同時に、中国が広範な技術的勢力圏を作り出すことを防ぐために努力しなければなりません。

中国企業が世界中に5G通信ネットワークを設置した場合、中国は莫大なインテリジェンスのメリット、経済的利益を享受する事になります。

同様に、中国製の監視技術の普及独裁者を定着させ、民主主義の国際的な普及に永続的な害を及ぼす可能性があります。

中国の技術的な拡大を抑えるために、米国は、米国や他の民主主義国で作られた技術の輸出を制限すべきです。

これらには、半導体、AIチップ、コンピューター数値制御(CNC)マシンが含まれます。

この措置により、中国の技術進歩を遅らせ、発展途上国に中国のネットワークに代わるものを提供するための時間を買うことができます。

さらに、米国は中国経済への依存度を制限する必要があります。

米国は米軍軍需品から中国の部品を排除し、重要な医薬品とレアアースの代替供給源を確保する必要があります。

米国は友好的な民主主義国と協力して信頼できるサプライチェーンを構築することが必要です。


一方、米国は、中国との紛争を引き起こさないように、十分注意する必要があります。

ワシントンは、完全な技術的禁輸、全面的な貿易制裁、または中国内での暴力を助長するための秘密行動プログラムなど、はるかに攻撃的な措置を講じるべきではありません。

 

当面の危機をうまく切り抜けたしても、米中の競争は終わりません。

しかし、初期の難しい時期を乗り越えれば、中国政府が既存の秩序を力ずくで覆すことはできず、米国が減速している中国をしのぐ能力に徐々に自信を持つ事になるので、戦争の可能性は薄れるかもしれません。

今までと同じように、米国は来るべき危機を乗り切る限り、長い競争に勝つことができます。

米国を支配する楽観論

この論文を読むと、最後は自分たちが中国に勝つと言う様に楽観的に考えている様に感じられます。

米国の論者の多くはその様に感じている様です。バイデン次期大統領も「米国が中国にやっつけられてしまう。冗談じゃない」と今年発言しており、米国の勝利を疑っていない様です。

しかし、中国はこれまで米国が相手をしてきた日独や旧ソ連とは違い遥かに強敵です。

しかも歴史上、中国が世界の頂点に君臨していた期間は他のどの国よりも長いのです。

この両国の戦いは、旧ソ連が崩壊した様には簡単に終わらない様な気がします。

日本の立ち位置は非常に難しく、安全保障上米国に依存している一方で、貿易相手国としては中国が一番と言う状況にあります。

台湾を中国が攻撃した場合、日本はどこまで踏み込めるのか、

台湾を中国が支配下に収めれば、日本は致命的に重要なシーレーンを中国に抑えられる事になります。

米国から見れば、米軍兵士が日本の国益を守るために血を流しているのに、日本は一緒に戦わないのかという議論になってくると思います。

そう言う意味では、米中が戦わない様、徹底的に日本は努力する必要があると思います。

戦争は敵国のレッドライン(それ以上譲歩が出来ないライン)を見誤った場合に生じます。

これを避けるためには、日本は軸足を米国に起きつつも、米中とコミュニケーションを保ち、いざと言う場合には橋渡しを行うといった役回りが求められると思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。

コロナ対策の優等生ドイツが犯したミスとは

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ドイツでの感染急激な伸びを示す

16日、ドイツでは1日当たりの新型コロナウイルス死者数が最多に上りました。

同国は16日から厳格なロックダウン(都市封鎖)に入りましが、メルケル首相は1月以降もこれを継続する可能性を示唆しました。

米ジョンズ・ホプキンズ大学のデータによると、15日のドイツ死者数は910人。これまでの最多は11日に記録した604人でした。

累計死者数は2万3544人。感染者数は新たに2万1456人増え、累計で138万人に達しました。

因みに日本の同じ時期のの1日あたりの感染者数は2,999人で死者は51名です。

日本はPCR検査をドイツの様に大規模に行っていませんので、感染者数が少ないのは当然ですが、死者数の桁が違っている点は両国の感染度の違いを物語っています。

ドイツは欧州の主要国の中では、感染者数が少なく、コロナ対策の優等生と見られていたのですが、ここのところ急速に状況が悪化している様です。

ドイツがこの様な状態に陥った理由は何でしょうか。

ウォールストリートジャーナル(WSJ)が「Germany’s Winning Covid Strategy Has Stopped Working - The country fared much better than European neighbors in the first wave, but the autumn surge has hit it harder」(ドイツの新型コロナ戦略は機能しなくなった - 第一波には隣国よりうまく対応できたが、第二波は他国より悪い結果をもたらしている)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したい思います。

WSJ記事要約

新型コロナが欧州全域に広がった今年春、ドイツ政府の対応は喝采を浴びました。

しかし同政府は今、制御不能の状態に陥りかけているのではないかと懸念しています。

新型コロナによる今年前半のドイツの死亡率は、世界的に見て最も低い部類に入っていました。

病院の救急用ベッドが不足することは一度もありませんでした。

これらの状況から、ドイツ政府は欧州域内で最も緩い部類のロックダウンを行いました。

しかし現在、フランスとイタリアの新規感染者数が11月半ばのピークを下回っているのに対し、ドイツの1日当たりの感染者数と死者数は、毎週のように過去最多を更新しています。

このため医療システムは限界に近づいており、政府はより強力なロックダウン措置を強いられることになりました。

一体何が起きたのでしょうか。

科学者や政治家らは、政府関係者を含む多くのドイツ人が致命的な判断ミスを犯したと指摘します。

今年の夏、比較的浅い傷で済んだあと、自分たちは安全だと考えてしまったのだと言います。

科学者らによれば、こうした誤った認識に加え、政府が11月に実施したロックダウンが緩いものだったこともあって、全国で感染が急速に再拡大する中で社会的接触を十分に減らすことができなかった様です。

11月のロックダウンでは、すべての店舗、オフィス、工場の営業が認められていました。

ライプチヒ大学のウイルス学者、ウベ・リーベルト氏は、春の成功が「国民の間にある種の油断を生んだ」と語った。

アンケートによれば、感染者が急増している現在でも、約40%のドイツ人は自分が感染する確率が比較的低い、または極めて低いと考えていることが分かりました。

1日当たりの感染者数は12月に入ってから平均約1万8500人で、今週は3万人に迫っています。

11月より多く、春のピーク時に記録した6000~7000人をはるかに上回っています。

国内のコロナによる死者の約55%は11月初め以降に死亡しています。

ドイツが春に行った最初のロックダウンは、国内の流行の度合いに対して他国よりも早い段階で行われました。

だが今週の対策強化はウイルスがかなり拡散してから行われました。

感染者数が多いことは、多くの地域の公衆衛生機関による新規感染者の接触者追跡ができなくなり、隔離命令を出して感染の連鎖を絶つことが一層困難になることも意味します。

他の多くの欧州諸国と比較すると、ドイツの感染率と死亡率が依然として低いのは確かです。

しかし、現在は一部の病院が能力の限界に近づいています。

欧州で秋に感染者数が急増してもドイツは最悪の事態を免れるだろうという見方は、当初正しいように思われました。

9、10月にドイツで感染者数が増加したものの、そのペースがフランスや英国よりもかなり緩やかだったためです。

11月2日にロックダウンが実施された際、あらゆる店舗や学校、介護施設が閉鎖されず、外出禁止令も出されなかったのは、そのためです。

後に政治家たちはこうした措置が十分ではなかったことを認めました。

ザクセン州の地区行政官、ガイスラー氏は、最近の死者数の急増が人々の行動を変えると確信して次の様に語りました。

「春にここの死者が3、4人だった頃、死因がコロナによるものかを巡って否定論者から大きな議論が巻き起こった。現在の死者数は約250人。これは大きな数字だ」

ドイツから得られる教訓

日本もドイツ同様、コロナ対策の優等生と評価されています。

しかし、ドイツ同様油断すれば、あっという間にコロナは感染してしまいます。

この感染症の怖いところは、一旦感染が拡がり始めると幾何級数的に感染者が増大するところです。

日本がこれまで大したロックダウンも行わずに、感染を免れてきたのは、島国で外国からの感染を防ぎやすい点と、マスク着用を含め国民の衛生意識が高い事が主な理由だったと思います。

しかし、衛生意識が非常に高いドイツでさえ、この様な状況に陥ることを考えれば、過信は禁物です。

「日本は特別だ。そう簡単には欧州の様にはならない」とたかをくくっていれば、落とし穴にはまります。

ワクチンが効果を発揮するまで、ある程度経済を犠牲にしてでも、コロナ対策を続ける事が賢明と思います。

一旦、欧州の様に広がってしまえば、手のつけようがありません。

 

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需要が急拡大する半導体業界におけるアームの躍進

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コロナ感染下、需要拡大する半導体業界

12月第1週の世界半導体販売額は前年比で10%を超える伸びを見せ、1週間で100億ドル(1兆400億円)を記録しました。

世界の半導体産業はコロナ禍においても活況を見せています。

新型コロナ感染が広がる中、人と接触しない技術が重視され、テレワークに利用されるコンピュータ需要やネットショッピング、物に触れずに機械を操作する技術などが重宝されていますが、これら全て半導体で解決できます。

前世紀が石油の時代とするなら、今世紀は間違いなくデータの世紀と言えるでしょうが、データの世紀において半導体は主人公の一人なのです。

しかし成長著しい半導体業界において新旧プレイヤーの競争は大変厳しいものがあります。

この業界においては長らくインテルが王者の位置を保ってきましたが、どうも異変が起きている様です。

半導体業界の勢力図の変化についてウォールストリートジャーナル(WSJ)が「Intel Not Inside: How Mobile Chips Overtook the Semiconductor Giant」(インテル入っていない:いかにしてアームがインテルを追い越したか)と題した記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

WSJ記事要約

米半導体大手インテルが設計し製造したマイクロチップはかつて、ほぼ全てのパソコンやクラウドコンピューティングの中核をなすほど支配的でした。

だがここ何年も、競合他社の後塵を拝しています。

アップルは最近、自社の新型パソコンシリーズ「Mac」へのインテル製チップ搭載を終了すると発表しました。

自社の設計品に切り替えるとの事です。

インテル長年のパートナーであるマイクロソフトも、自社のタブレット端末「サーフェス・プロX」に独自のチップを搭載しました。

こうした動きの背景には、省電性能がかつてないほど求められていることがあります。

この基準はバッテリーで動く機器にとって明らかに重要ですが、世界の消費電力の1%を占めるクラウドコンピューティングにとっても同じです。

このようなニーズを満たすため、電子機器メーカーはインテル製より自社製品によりカスタマイズしやすいマイクロチップを選択しています。

カスタムメードのチップ製造で先頭を走るのは製造企業ではありません。

半導体の基本設計図を提供する英国のアームです。

同社がライセンス供与する会社は計500社余り。すでにスマホやタブレット端末、ノートパソコン向けプロセッサーの市場シェアは9割に上ります。

画像処理半導体(GPU)と人工知能(AI)の市場を支配し、時価総額で現在最大の米半導体メーカーであるエヌビディアは、このアームをソフトバンクグループから400億ドル(現金と株式)で買収することで合意しました。

 

アップル創業者のスティーブ・ジョブズ氏は2006年、同社がインテル製チップに切り替えると発表しました。

当時採用していたチップの製造元であるIBMがついてこられなかったためです。

だが同時期にインテルは致命的なミスを犯しました。

「iPhone(アイフォーン)」に搭載するチップを製造してほしいというアップルの依頼を断ったのです。

アップルはアームの設計に基づいて独自チップの開発に乗り出し、2010年に発表されたiPhone4に初めて搭載しました。

これが、アーム支配の流れを作りました。

このような戦い――インテルの垂直統合的アプローチとアームのより柔軟な戦略――はクラウド、即ち、データセンターでも繰り広げられています。

クラウドサービス最大手アマゾンは独自に開発したアームチップを使っています。

インテル製と比べ、クラウドアプリの性能が40%上回り、コストも20%低いとしています。

 

にもかかわらず、インテルのクラウドサーバー向けチップ需要は衰えていません。

ここ1年間の売上高は前年同期比11%増でした。

新型コロナの世界的流行によりパソコンとサーバーの需要が爆発的に増えたためです。

同社はこの勢いに乗じて新規ビジネスへの参入をもくろんでいます。

そうした分野にはAI、GPU、5G(次世代通信規格)自動運転などが含まれます。

インテルのスワンCEOは、「あらゆる半導体製品」のシェア3割を目指すべきと繰り返し述べています。

インテルの新しい試みがうまくいかなくても、インテルが巨大な生産能力を維持する事ができれば、この先何年も同社が重要な企業であり続けることは間違いないでしょう。

あらゆる種類のプロセッサーの需要が爆発すれば、最も強力なライバルさえ、インテルを締め出すのに十分な供給を行うことは難しいでしょう。

アームの価値

アップル愛好家の私にとって、アップルがスマホのみならずパソコンにもインテル製品の代わりに、自社開発のチップを採用するというニュースは驚きでした。

しかもその省電性と演算速度は従来のインテル製品をはるかに上回る様です。

この様な高性能のチップの設計図を提供しているのが英アーム社です。

この会社孫さんが3兆円で買収した時、ほとんどの人が高い買い物だと批判したのを覚えています。

ソフトバンクグループの社外取締役を務める日本電産の永守会長は3300億円でも買わないと発言しました。

その様な反対を押し切って購入した孫会長はさすが目利きです。

彼はあの時点で、アームの価値を読み切っていたのでしょう。

We Workでは失敗しても、自らの得意分野であるIT分野においては間違いませんでした。

それにつけても、以前は半導体といえば、日本のお家芸だったのですが、全く影が薄いのが心配です。

唯一救いは世界最高速のスーパーコンピューターが富士通製である事です。

因みにこのコンピューターで使われているチップもアームの設計図に基づいています。

 

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北朝鮮への風船ビラを取締る韓国政権

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北朝鮮に気を遣う文在寅政権

北朝鮮から韓国に逃亡したいわゆる脱北者は3万人以上に達していますが、北朝鮮は国境の警備を固めると共に、徹底的に外国の情報が国内に入らない様に検閲を強めている模様です。

韓国の民主団体は国境近くから風船にビラや韓国の情報を伝えるUSBスティックなどを付けて飛ばし、北朝鮮市民に国外の情報を届ける試みを続けていましたが、何と韓国政府はこの運動を取り締まろうとしている様です。

本来であればこういう民主的な活動は支援するのが筋と思いますが、どうして取り締まっているのでしょうか。

米紙ワールドストリートジャーナル(WSJ)が「Sending Bibles and K-Pop to North Korea Can Now Land You in a South Korean Jail」(聖書やKポップを北朝鮮に届けると韓国で監獄行きです」と題して記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

WSJ記事要約

何年もの間、韓国の活動家グループは、聖書からK-POPまで、国境を越えて北にすべてを送ってきました。

今では、彼らに対して、最高3年の懲役と27,000ドルの罰金が科せられる可能性があります。

月曜日遅く、韓国政府は、政府の許可なしに北朝鮮政権に批判的な資料を国境を越えて送ることを禁止しました。

文在寅大統領の与党に後押しされた新法は、北朝鮮との関係を改善するために言論の自由を犠牲にし、民主的価値を損なうとして脱北者と人権団体は批判しています。

今年、韓国と北朝鮮の関係は冷え込みました。

北朝鮮の指導者である金正恩の妹である金与正は、脱北者主導のグループが反政府のチラシを気球に結び付け、国境付近に飛ばしたとして、韓国政府を激しく批判し、6月に両国の連絡事務所を爆破しました。

金与正氏はその際、「下手な言い訳をする前に、少なくとも人間のくずによる茶番を阻止する法律を制定すべき」と述べました。

 

新しい法律では、USBドライブ、お金、拡声器による放送や印刷物など、さまざまな反体制資料を韓国政府が承認してから北朝鮮に送ることを義務付けています。

ソウル当局は、承認の条件がどうなるかについての詳細なガイダンスを提供していません。

チラシ、ニュース、ドラマ、映画の流入は、多くの北朝鮮人の見方を変えました。

ソウルに本拠を置くグループである北朝鮮人権データベースセンターの最近の調査によると、韓国に北朝鮮から逃げてきた脱北者の3分の2近くが外部の情報に接していたと証言しています。

多くの人が、外部の情報が彼らの逃げたいという気持ちを強くしたと語りました。

金正恩政権は、国境を越えて密輸されたコンテンツを広く配布した人々を公開処刑した、と平壌のウォッチャーは言います。

 

米国議会の人権委員会の同議長を務めるクリス・スミス議員(ニュージャージー州共和党)は、年次人権報告書で、韓国の民主的な価値観に対する姿勢を再評価するよう国務省に要請すると述べました。

スミス氏は先週、「韓国が監視リストに載せられるのは間違いないだろう」と述べました。

北朝鮮との関係を好転させようと努めてきた文在寅大統領は、人権団体からの批判を浴びました。

先月、韓国は2年連続で、北朝鮮の人権侵害を非難する国連総会決議を支持しませんでした。

300以上の国際的な市民団体が文在寅大統領に北朝鮮との関係よりも人権を優先するよう求めました。

特に金王朝が監視を強化し、新型コロナ感染から逃げようとして捕まった個人を処刑したと非難しました。

文在寅氏の与党民主党のスポークスウーマン、崔智恩氏は、国境近くに住む韓国人の安全を守り、両国間の合意を維持するために、反体制活動に対する新たな制限が必要だったと述べました。

韓国の統一部は、言論の自由を侵害する法律との主張に反論し、韓国市民に深刻な脅威を与える活動にのみ適用されると付け加えました。

北朝鮮の民主化を遅らせる試み

韓国の文在寅政権が北朝鮮寄りとは聞いていましたが、北朝鮮市民への民主的な働きかけを制限する法律を作るとは驚きました。

冷戦時代には朝鮮半島だけでなく、共産圏から自由主義圏に逃れようとする人が後を断ちませんでした。

それを象徴するのがベルリンのでしたが、今や昔の東欧の様な国は一握りになっており、北朝鮮はその代表格です。

ロシアや東欧の国々の体制が崩壊したのは内部からでした。

当時の共産党政権は、資本主義国家では資本家が労働者を搾取し、国民の生活は悲惨だと宣伝し、国外からの情報は厳しく制限していました。

しかし、国民は徐々に、政府が自分たちを騙していることに気付き、政府を倒すために立ち上がったため、内部崩壊したわけです。

今回の韓国政府の動きはそのプロセスを先延ばしする様なもので、圧政に喘ぐ北朝鮮の国民の不幸を長引かせるだけと思います。

どの様に北朝鮮に立ち向かうか、バイデン 新政権を含め国際社会は良く考える必要があると思います。

 

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米中の誤解が対立を紛争に変える- 朝鮮戦争から学ぶ教訓

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対立国に対する誤解が引き起こした朝鮮戦争

共産党が政権を取ってからの中国は米国と戦争した事があるでしょうか。

朝鮮戦争で彼らは戦っています。

中国は義勇軍という名目で、米国は国連軍の一部という形で参戦しましたが、朝鮮戦争の実態は米中両国の戦争でした。

この戦争が如何にして生じたのか、その原因は何かについて、英誌Economistが「Lessons from the battles between America and China, 70 years on - When America and China went to war」(米国と中国の戦闘から学ぶ教訓 - 米中が戦争に突入した瞬間)と題して記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

70年前の今月、毛沢東が率いる中国人民解放軍は、アメリカに歴史上最悪の軍事的敗北を負わせました。

彼の「義勇軍」は、35万人の米軍とその同盟軍を、中国の国境から急速な撤退を余儀なくさせました。

中国人はその過程で膨大な犠牲者を出し、戦争はさらに3年間続き、アメリカ主導の国連軍は二度と半島を再統一すると宣言する事はありませんでした。

この屈辱は、狂信的なマッカーサー将軍が、中国人に鴨緑江を渡らせないと、わずか数週間前にトルーマン大統領に約束した事から更にひどいものになりました。

マッカーサー将軍たちは、マイナス30°Cの環境下、綿の軍服と帆布の靴を履いて戦った中国兵は深刻な敵ではないと主張しました。

アメリカの将軍は彼らを「洗濯屋の束」と蔑みました。

それは昔から良く見られる超大国の傲慢であり、10月の壮大な70周年記念イベントで習近平が表明した通り、軽蔑に値するものでした。

第二次世界大戦において見事な勝利に酔った1950年頃の米国は、危険な不敗神話を信じていました。

マッカーサーを含め将軍の何名かは、人種主義的な偏見もあり、アジアの能力を過小評価していました。

大統領が「選挙を盗む」(Steel an election)なんて事に夢中になっている様な現代のアメリカが、中国との最初で唯一の戦争を殆ど記憶に留めていないのは不思議ではないかもしれません。

一般のアメリカ人は過去の勝利と敗北について殆ど知りません。

アメリカの学校は殆ど軍事史を教えておらず、民主主義は過去の軍国主義的な見方に触れたがりません。

核時代の最初の「限定」戦争である朝鮮戦争も、忘れ去られていますが、この戦争は双方に意義のある教訓をもたらします。

 

91歳の引退した海兵隊員であるジャック ラケットから聞いた戦場の回想は、この戦争の真相を物語っています。

彼は1950年11月27日の夜、最前線で長津湖の上の尾根を占領していました。

爆発に目覚めたとき、彼は中国人の大部隊の攻撃を受けていました。

「敵は私たちより遥かに数が多かった」と彼は語りました。

毛沢東の諜報部長は、米軍は優れた軍備を有しているが、戦意に欠けていると毛沢東に進言しました。

凍傷で足を失うまでにラケット氏が戦ったその後の17日間の戦いは、諜報部長の毛沢東への進言は間違いであった事を証明しました。

12万人の中国人に囲まれて、第1海兵師団は、凍った山々を通り抜けて英雄的な撤退を行いました。

ラケット氏の部隊250名のうち11名だけが生き残りました。

彼らは、中国兵にはるかに重い犠牲を負わせながら、負傷者と軍備を避難させました。

海兵隊にとって「凍った長津」は「硫黄島」と並んで重要な戦闘でした。

「海兵隊を存続させるべきどうかについての議論を終わらせたと言っても過言ではありません」と最近引退した統合参謀本部議長のダンフォード将軍は語ります。

彼の父は中国の攻撃の日に長津湖で彼の20歳の誕生日を祝いました。

 

撤退の後の米軍の振る舞いに関する、イギリスの歴史家であるヘイスティングスの分析は、アメリカがどのような超大国であるべきかについて有益な示唆を与えてくれます。

マッカーサー将軍は同盟国の懇願に耳を貸さず、アメリカの力の限界を受け入れることを拒否しました。

彼は中国に対して核兵器を利用したいと考えました。

これにトルーマン大統領は抵抗し、トルーマン大統領はマッカーサーをを解任しました。

この事件は、それ以来ルールとなったシビリアンコントロールを確立しました。

 トルーマンの多国間主義と抑制は、共和党の後継者であるアイゼンハワー大統領が戦争の遂行を維持したときにも立証されました。

アメリカと中国は、それぞれ当初の目的である韓国の確保と、アジアにおけるアメリカの存在に対する韓国の緩衝を確保することで決着をつけました。

アメリカはその過程で40,000人の命を失いましたが、中国の犠牲者はおそらく10倍に上ります。


アメリカ人がこの重大な過去に関心を持っていないということは、彼らの落ち着きのない民主主義を反映しています。

アメリカの中国との戦争から2つの教訓を得る事ができます。

誤解の霧の中で、双方がお互いを致命的に過小評価していました。

そして、それぞれが相手のレッドライン、つまり対立を紛争に変える超えてはならない一線に関して間違った考えを有していました。

今日の状況は非常に異なって見えるかもしれません。

しかし、過小評価や誤解の可能性は依然として存在しています。

そしてそのギャップは彼らの対立とともに大きくなっています。

朝鮮戦争から学ぶ教訓

戦争を避ける努力は外交において最も重要な仕事です。

バイデン政権で国防長官候補だったフロノイ女史は以前ご紹介した「アジアでの戦争を避けるには」と題した論文で次の様に述べています。

「米中の対立において、戦争のリスクを減らすことほど重要なことはありません。

しかし、南シナ海や、台湾などに関する米国の意欲や能力についての中国の誤算によって、簡単に紛争に陥る可能性があります。」 

www.miyoshin.co.jp

 朝鮮戦争においては、米中両国が相手の戦力やレッドライン(絶対に譲れないもの)に関して間違った判断を行った事が、戦争を引き起こしました。

50万人以上もの戦死者を出したこの戦争から米中両国は戦争を避ける方法をを学ぶ事ができるのではないでしょうか。

 

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フェイスブックに対する提訴は正当か

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政界から厳しい批判を浴びたSNS

今回の米大統領選は大接戦でしたが、その中でフェイスブックやツイッターといったSNSの役割が注目を集めました。

新聞など読まなくなった有権者の多くは、情報をスマホから得る様になっています。

民主共和両党とも有権者に与えるSNSの影響力を重視し、SNS対策を徹底した様ですが、フェイスブックツイッターはプラットフォーム上の言論統制に関して、政界から厳しい批判を浴びました。

そのせいか、今回、フェイスブックが提訴され、傘下に収めたインスタグラムの売却を迫られている様です。

この点について、ウォールストリートジャーナル(WSJ)が「Breaking Up Facebook」(フェイスブックの解体)と題した記事を発表しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

WSJ記事要約

フェイスブックの初期のモットーは、「速く動き、競合先を壊す」ことでした。

米連邦取引委員会(FTC)が今週46州の司法長官の支持を得て、今回フェイスブックを提訴しましたが、これほど法的根拠の薄弱な訴訟は見たことがありません。

フェイスブックのザッカーバーグCEOは最近、共和・民主いずれの党にも、味方がいません。

プラットフォーム上の言論規制について、やり過ぎだという批判と手ぬるいという批判の両方を受けています。

同社は新聞広告市場の崩壊を促しました。

同社が存在しない方が、より良い世界になるかもしれません。

しかし、米国の反トラスト法(独占禁止法)の目的は、社会的または政治的問題を是正することではありません。

フェイスブックは買収した画像共有アプリ大手インスタグラムと対話アプリワッツアップの分離を求められています。

FTCの訴状によると、ザッカーバーグ氏は競争を排除するためにインスタグラムとワッツアップを買収しようとしました。
確かに同氏は2008年に「競争するより買収した方が良い」と電子メールに書きました。
どの企業も技術の進化や消費者の嗜好(しこう)の変化に対応する必要があります。
フェイスブックにとって、模倣製品を開発するよりもアプリを買収した方がコストが安く、手っ取り早かったのです。
大手企業がスタートアップ企業を買収するのはよくあることです。
また、インスタグラムとワッツアップはいずれもフェイスブックを補完するアプリであり、直接競合する製品ではありませんでした。
多くの人がTikTok(ティックトック)やツイッターなど異なる特徴を持つソーシャルメディア(SNS)を並行して使用しています。
FTCは、フェイスブックが買収しなければ、ワッツアップとインスタグラムは同社の強力な競争相手に成長していた可能性があると考えています。
恐らくそうでしょう。
しかし、インスタグラムは買収された当時、従業員がわずか13人で売り上げはありませんでした。
FTCも2012年に全会一致で10億ドルでの買収を承認しています。
買収は常に成功するとは限りません。
別の企業に買収されていたとしたら、今ほど人気のアプリになっていなかった可能性もあります。
フェイスブックは両アプリの開発や改良に数十億ドルを投じました。
ワッツアップは買収される前は定額制だったが、フェイスブックは全世界で無料化し、ビデオ通話機能や暗号化技術を加えました。
 
FTCは、フェイスブックが今やディスプレー広告市場で寡占状態にあると述べていますが、これは市場を狭く定義しすぎです。
フェイスブック(やその他SNS)によって最も被害を受けたのはWSJなどの新聞ですが、特に影響が大きかったのが地方紙です。
フェイスブックにインスタグラムを売却させても彼らの助けにはなりません。
 
ユーザーデータをあまり持たないスタートアップ企業がフェイスブックと競争するのを阻んでいるとする「ネットワーク効果」についてはどうか。FTCでさえ、次のように認めています。
「独占的な地位を持つSNSも競争で脅かされる可能性はある。技術・社会の移行期や、既存のサービスとはある意味で差別化された新たなサービスが登場した場合には特にその可能性がある。」ティックトックがその良い例です。
訴状がとりわけ説得力に欠けるのが、反トラスト法違反の法的根拠となる、消費者に対する具体的な被害について一切言及していないことです。
フェイスブックに実際に非があるように見える点は、単純に大き過ぎることです。
しかし、政治家がそう考えているのなら、それを規制する法律を成立させればいいでしょう。
 
この前例のない事後的な反トラスト調査は、新たな判例を作り出すことになり、不人気な企業の解体に利用されかねません。
政府は政治的リスクを作り出しています。
成功した合併が、たとえ事前に承認を受けていたとしても、政府が望めばいつでも白紙に戻される可能性があるのだから。その結果、スタートアップ企業に対するベンチャー投資やイノベーション(技術革新)、競争が制限されたとしても、意外ではありません。

フェイスブックへの対抗策は

WSJ社説の論点はいちいちごもっともで、独占禁止法の観点から、Facebookを有罪と決めつけるのは無理筋と言わざるを得ません。
しかし、フェイスブックの様なIT大手がネットワーク効果で、異様に大きなシェアを獲得しているのは見逃せない点です。
アマゾンにしてもグーグルにしても、電子商取引や検索において、他社を圧倒する存在となっています。
ネット上ではシェアの大きいものが益々有利になるのは自明であり、フェイスブックやツイッターの様に政治的影響力を有するとなれば尚更危険です。
もしフェイスブックが政治的な意図を持って、利用者を恣意的に特定の情報にさらす様導いたらどうなるでしょうか。
フェイスブックが開発したアルゴリズムで人間の心理を左右しようとした場合、これに対抗するのはほぼ不可能と言わざるを得ません。
全体主義国家はメディアを支配し、国民の情報へのアクセスを遮断します。
SNSはもっと巧妙なやり方で情報を操作しかねません。
この問題に対処するには、独占禁止法の観点ではなく、国民の知る権利と言った観点からの対策が必要ではないかと思います。
 
最後まで読んで頂き、有り難うございました。