対岸の火事から隣家の火事へ
コロナウイルスはここトルコでも感染者が急増し始めました。今月(2020年3月)初めの段階では、患者も発見されておらず、中国や日本、韓国の悲惨な状況はあくまで対岸の火事だったのですが、ここに来てトルコ人もこれはかなりマズイと認識し始めました。これは何よりも欧州でコロナウイルスが猛威を振るい始めた事が大きく影響しています。
日本のみなさんはトルコを中東の国と認識されていると思いますが、実はトルコは欧州諸国に地理的にかなり近いのです。イスタンブールからイタリアへの飛行時間は2時間もかかりません。イタリアでのショッキングな出来事は他人事ではないのです。ここの処、トルコ人の目の色も変わってきました。
中国の影響力の拡大と欧州の医療システムの崩壊
中国で始まった今度の騒動で特徴的な事は、中国産のウイルスがあっという間に世界中に広がった事です。一帯一路を標榜する中国は世界中に観光客、ビジネスマンを大量に送り出しており、あっという間に病原体を世界の隅々にばらまいてしまいました。毛沢東時代の中国では考えられない事です。
もう一つ特徴的な事は、中国に比べると人口も圧倒的に少ないし、医療システムが整備されていると思われていたイタリアが死者数で中国を上回っている点です。この理由は下記の様に分析できるのではと思っています。
今回のウイルスは軽度で治癒するケースが多いですが、高齢者を中心に急速に悪化する傾向があり、一旦悪化すると呼吸困難に陥り、人工呼吸器等設備が整っている病院でないと対応が難しくなります。イタリアやスペインにもそういう病院があるにはあるのですが、急に患者が増えると対応が不可能となります。要するに医療システムが崩壊するわけです。今回テントに身を横たえる患者がイタリアで多く見られましたが、これは患者の急増に追いつかず、医療システムが崩壊している事を意味しています。
緊縮予算の影響
何故、この様な状況になったかというと、欧州の少子高齢化、経済の低迷が背景にあると思います。ギリシャの財政破綻が記憶に新しいですが、南欧の国々はいつギリシャの様になってもおかしくない状況にあり、各国ともEU本部より財政の規律化を強く求められています。すなわち緊縮財政を余儀なくされており、お金が使えないわけです。これが病院の閉鎖など公的なサービスの低下に繋がっています。
またこういう国は欧州の中でも国力が弱く、観光業頼みのところが多いのです。中国のウイルスが怖くても、大のお客さんの中国を締め出せば自分の首を閉めることになるという思いから、今回中国に対する思い切った処置が取れなかったものと思われます。トルコが今回比較的軽傷で済んでいるのは、ウイグル問題など中国との間で問題を抱えており、イタリアほど中国にしっぽを振る国ではなかったからだと思います。
EU崩壊の引き金をひくか
いずれにせよ、南欧の国ではこれだけ多くの犠牲者を出した理由が、EUから押し付けられた緊縮財政であるとの批判が高まる事が予想されます。英国がEU離脱したのに続き、イタリアやスペインまでがEUを離れていけば、EUは崩壊に繋がるおそれがあります。EUの中核であるドイツがこれらの国をかなり積極的に支援しなければ、EUは求心力を失いばらばらになっていくでしょう。今回のウイルス騒動が残した爪痕の中で最大級のものは欧州の一番弱いところをウイルスが突き、その弱点が表面化した事でしょう。この爪痕がEU崩壊の引き金を引くかもしれません。
極楽とんぼの日本
日本は国内の患者数の伸びが落ち着いてきたことから、外から見るとかなり楽観的に見えます。よく考えてください。日本はスーパーも飲食店も映画館も開いていますが、欧米の主要国は戒厳令或いは外出禁止令がでている状態です。しかもいつ解除されるかもわからない。このウイルスはかなり危険だし、本格的に退治するのに相当時間を要すると思った方が良いと思います。その間、経済活動は大きな制約を受けることになり、経済は低迷することになります。投資家の中には今こそ株の買い時などとアドバイスする人もいますが、株価が早期に反転するというシナリオは当面ないと思っています。私は相場の専門家ではありませんが、欧米やトルコでの状況を考えると、素人が手を出すにはあまりに危険な相場であると思います。
以上
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