トルコでラマダン始まる
トルコでラマダン(断食月、トルコではラマザンと呼びます)が始まりました。トルコのテレビ局Haber Turkはロックダウンされたイスタンブールでのいつもとは違う市民の様子を伝えています。断食の際、市民の多くは日没と共にイフタールと呼ばれる食事を家族や友人と共に食べますが、ロックダウンの状況下、今回は大勢での食事は自粛している様です。又、コロナウイルス の感染を防止する為、市民が集まる青空市場入り口には警官が体温計で入場者の体温を図り、場内が混雑しない様に入り口で入場者を制限している様子が伝えられました。
トルコのイスラム教に関する誤解
皆さん断食月というくらいだから、断食の期間は毎年決まっていると思う方も多いと思いますが、実はこれ太陰暦に基づくので、太陽暦で言うと毎年11日ずつ前へ前へとずれていくのです。今年は4月24日から5月23日までだそうですが、月の満ち欠けを神学者が慎重に判断するので、正確な期間は直前まで決まらない事があります。こんな事日本に居るとわかりませんよね。断食はもちろんイスラム教に基づくものですが、トルコでのイスラム教に関しては多くの誤解がありますので、今日はそれを一つ一つご説明したいと思います。
トルコ国民は全員断食をやっている。
これは正しくありません。トルコは1924年に初代大統領であるアタチュルクが憲法を制定しましたが、世俗主義というものが重要な国是の一つとして定められています。国民に宗教の自由を保証しているだけでなく、国が宗教に左右されることを厳しく禁じています。世俗主義が憲法で保証されているトルコでは、イスラム教を国教とするサウジアラビアやイランと違い、イスラム教徒でさえ、全員が断食するわけではありません。皆さんオスマントルコという帝国があった事ご存知と思いますが、実はこの帝国も宗教の自由を認めていたんです。「剣かコーランか」と異教徒に迫ったという残虐なイメージが強いオスマントルコですが、実際は税金さえ払えば、異教徒も宗教の自由を認められていた様です。あれだけの大帝国を500年以上に亘り平和に維持できたのは、宗教に対する寛容さがその一つの理由として挙げられます。
トルコでは女性は全員スカーフを被っている。
これも間違いです。私が務めていたオフィスでは、トルコ人女性は誰もスカーフを被っていませんでした。日本を含め普通の国ではイスラム教徒の女性が公の場でスカーフを被ることを認めていますが、トルコではついこの間までこれさえも禁じていました。トルコはそれくらい世俗主義というものを厳格に守ってきたと言えます。同じ様にスカーフの着用を禁じているのはフランスで、フランスでは先日イスラム信者の女子学生がスカーフを被って大学に入ろうとして阻止されました。
トルコではお酒が飲めない。
これも嘘です。私の周りには大酒飲みのトルコ人の友人が沢山います。中にはワインに通じていて、トルコワインをギフトにくれる様な人もいます。酒を飲むトルコ人に「イスラム教では飲酒は禁止されているのではないか。」と問うと、「コーランのどこにも飲酒を禁じるとは書いていない」との答えが返ってきます。飲酒をしないトルコ人は確かに日本に比べれば多いですが、飲酒は完全に合法で、ワインは輸出まで行っています。
トルコの素晴らしい点、宗教に対する寛容さ、弱者への配慮
15世紀末、キリスト教徒がイベリア半島を再征服しました。いわゆるレコンキスタです。その際イベリア半島に住むユダヤ人がキリスト教徒から迫害を受け、イスタンブールに沢山逃げ込んだと言われています。オスマントルコ帝国は迫害を受けたユダヤ人を受け入れ、宗教の自由も認めた様です。オスマントルコはその後領土を拡大して行き、ウィーン包囲まで行いますが、その際の資金調達にはイスタンブールに住むユダヤ人が活躍したと言われており、宗教、人種の違いに寛容だったオスマントルコの性格が窺えます。今のトルコ人も宗教に対する寛容さを受け継いでいます。一度、ラマダンの時期、夕方にトルコ人実業家を訪れた際、敬虔なイスラム教徒である彼は朝から一滴も水分を取っていないにもかかわらず、私にお茶を勧めてくれました。私は「あなたが断食やっているのに、私は飲めない」と固辞しましたが、彼は「私はイスラム教徒であるが、あなたは違う。私はあなたをおもてなししたいので、是非飲んで欲しい。」と答えました。私はこの寛容性こそトルコ人の持つ最大の長所だと思います。もう一つ素晴らしい点は、弱者への配慮です。トルコは隣国シリアの難民を350万人以上も受け入れています。トルコ国民はこの負担に苦しんでいますが、苦しんでいる人を前にするとどうしても人助けしてしまうのがトルコ人の性格です。日本ではトルコがこれだけシリア難民を受け入れている事あまり知られていませんが、トルコが犠牲を払っているから、難民が欧州に流出していない点は皆さんに知っておいて頂きたいと思います。
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