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コロナのあぶり出すもの(10)

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トルコ救援物資を米国に

4月29日にトルコの全国紙Hürriyetはトルコ政府が米国政府に送った救援物資について取り上げました。トルコ政府は軍用機でマスク、医療用防護服、殺菌用液体等を送った模様ですが、エルドアン大統領のトランプ大統領への親書も同時に送られた模様です。その親書の中身も公表され、エルドアン大統領は次の様に述べています。

  1. 貴方(トランプ大統領を指す)の取られた対策により、米国で新しい感染者が減少の傾向を示し始めた事は大変喜ばしい。
  2. 感染防止のために両国が行う協力は二国間の関係強化に繋がり、最終的には両国の貿易に関する目標1千億ドル(11兆円)達成を実現させる事でしょう。
  3. シリアとリビアにおける最近の我々の協力は両国間協力の重要性を示しました。米国議会並びに米国メデイアも両国関係の戦略的重要性を理解する事でしょう、

NATOのメンバーとしてのトルコ

トルコがNATO(北大西洋条約機構)のメンバーである事をご存知ない方もいらっしゃると思います。もともとNATOは東西冷戦時代、共産圏の影響を封じ込めるために作られた軍事同盟でした。そこに何故トルコが入っているかというと、トルコはブルガリアや旧ソ連(現在のウクライナ、ジョージア)と国境を接しています。従い東西冷戦時代は冷戦の最前線だった訳です。昔007シリーズに「ロシアより愛を込めて」という映画があった事ご存知でしょうか。ボンドシリーズでは最高傑作と言われていますが、この中でショーンコネリー扮する英国スパイ、ジェームズ ボンドや米国、ロシアのスパイたちがイスタンブールを舞台に活躍する様子が描かれています。トルコというのは今も昔も軍事戦略上、極めて重要な位置にあるのです。トルコは当時も米国政府からその戦略的価値を評価されており、朝鮮戦争に国連軍の一員としてトルコ軍が参戦し(5450名参戦、721名戦死)、共産圏と戦った功績を認められた事もあって、最終的に1952年にNATOのメンバーになりました。今でもイスラム圏唯一のNATOメンバーです。トルコ軍は自衛隊の2倍の兵員数(数60万人)を誇り、NATO加盟国の中でも米国に次いで多くの兵員を擁しています。

NATO内部の不協和音

NATO内部では最近加盟国間のきしみが表面化しつつあります。もともと東西冷戦の中、自由主義ブロックの軍事同盟だったのですから、ベルリンの壁が崩壊し、共産圏が自壊してしまえば、その重要性が低下するのは自明です。ドイツの様にロシアと経済関係が緊密な国は、米国と足並みを揃えてロシアと事を構えるのは容易な事ではありません。トルコも冷戦時は最前線で共産圏を食い止める防波堤の役割を果たして来ましたが、今はロシアともバルカンの旧共産圏諸国とも経済的に結びつき、関係を強化しています。エルドアン大統領もこういう環境の変化の中で、ロシアのプーチン大統領に近づき、隣国シリアの問題等をトップ外交で切り開こうと努力してきました。対空ミサイル防御システムとして米国のパトリオットではなく、ロシアのS400の購入を決断したりして、NATOの他の国からは批判を浴びましたが、シリアで結果を出そうとすると、アサド政権の後ろ盾であるプーチン大統領と交渉できなければ埒が明きません。しかしロシアはしたたかですし、強力な軍事力を有しています。ロシアとの交渉は必ずしもエルドアン大統領の思う通りに進まなかった様です。

エルドアン大統領の外交戦略

ここにきてエルドアン大統領は米国の力を借りようとしている様です。その際のキーワードはNATOです。エルドアン大統領はトルコがイスラム圏唯一のNATO加盟国であると言う立場を最大限利用して、ロシアとの交渉を有利に運ぼうと狙っている節があります。トルコだけでは力不足ですが、NATOが後ろ盾となってトルコを応援すれば、プーチン大統領も考慮せざるを得ません。トルコは米国だけではなく、英国、イタリア、スペインなどNATO加盟国に同様の医療物資援助を行い、高く評価されています。これもエルドアン大統領のNATOの後ろ盾を得ようとする周到な根回しと思われます。

地域大国としての重要性

私はエルドアン大統領のやっている事を全て肯定するものではありませんが、こと今回の一連の外交については、さすが老練な手腕が感じられ、評価しております。トルコはシリア、イラク、バルカン諸国、ギリシャといったかなり難しい国に囲まれています。従い、相当高度な外交の舵取りが求められます。トルコが地域大国として果たす役割は非常に大きく、今後もNATOの加盟国として、地域の安定に貢献する事を期待しています。

 

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