MIYOSHIN海外ニュース

世界の役立つ情報をわかりやすくお伝えします。

トルコとEUの関係はどうなる

f:id:MIYOSHIN:20200516154105j:plain

トルコは若い

トルコの全国紙Hürrlyetによればトルコの15歳から24歳の年齢層の総人口8,200万人に占める割合は15.6%との事です。この若年層の割合は今後徐々に減っていくとの事ですが、EU28か国と比べると圧倒的に高い数字となっています。

各国の人口の年齢を表す指標として主に中位年齢というものが使われます。聞き慣れない言葉ですが、中位年齢というのは、国民を0歳から最高齢の人まで並べて、その真ん中にいる人が何歳かを表す指標です。トルコはこれが31歳です。平たく言えば人口の半分が31歳以下という訳です。

因みに日本は49歳です。人口の約半分が50歳以上ってすごくないですか。

人口が若いか否かは経済に大きな影響を与えます。トルコはは若い人口をバックに現在経済成長している訳です。日本と同じ様に少子高齢化が進んでいるEUに、トルコが加盟すれば、EUの経済活性化にも繋がるのではと思いますが、トルコのEU加盟交渉は一向に進みません。

トルコのEU加盟交渉

トルコのEU加盟交渉は、現在のトルコ与党AKPが政権を取った2002年からほどなくして始められました。イスラム色のあるAKPがEU加盟に乗り出したというのは、当時トルコ国民からも意外に思われた様ですが、AKPは積極的にEU加盟を打ち出しました。

EUに加盟するためには事前審査が必要で、政治、経済、人権、貿易、環境など様々な分野でEUに加盟するだけの準備が整っているかどうか審査されます。逆に言えば、EUに合わせて国内の法律やルールを改訂しなければいけないのです。トルコも懸命に様々な法律を改訂し、EUの要求するレベルに引き上げようとしました。

EUに準拠したトルコ投資環境

こうやってトルコの投資環境や製品スタンダードはEU並みになって行った訳です。これは外国投資家にしてみれば朗報でした。トルコがEUの法制やスタンダードに準拠してくれるのであれば、トルコに投資するのが容易になりますし、トルコで作った製品をEU市場で販売する際にも問題がありません。トルコはこうやって2000年代に入ってから多額の外国投資を得る国になって行きました。

シビリアンコントロール

一方、トルコ政府には隠された狙いがあったと言われています。

トルコは世俗主義が憲法で厳しく定められており、この基本原則に脅威を及ぼす様な政権に対しては、軍部がクーデターを起こしても良いと認められている国です。実際、過去に何回か軍部がクーデターを起こして、政権を転覆させています。

しかし、軍部がクーデターを起こしても良いって、これはっきり言ってCivilian Control(国民によって選ばれた政府が軍部をコントロールする)の原則に反しますよね。

EUも、Civilian ControlをEU加盟の申請国には前提条件として求めます。軍部のクーデターを封じ込める事に腐心していたトルコ与党AKPは、このEU加盟の条件をテコに、軍部の特権的な権利を徐々に削いでいきました。

以前は軍部トップの人事を政府が決めることもままならなかったほど、軍部の力が強かったのですが、この人事権も政府側に最近移りました。結果的に与党AKPはEUの力を利用してうまく軍部を封じ込めたと言えるでしょう。

東欧諸国に先を越されるトルコ

トルコのEUへの加盟交渉は遅々として進みません。

一方、後から加盟を申請した東欧やバルト三国などが次々と加盟を認められました

ルーマニアやブルガリアなどトルコと比べて経済面では明らかに劣っている国が、先にEUに加盟していくのを、トルコ国民は歯軋りしながら横目で観ているという状況です。トルコは何故加盟が認められないのでしょうか。

欧州最大の人口

先ず、トルコは人口が非常に多いです。良く「Too large to join」と言われますが、今EUに入れば、EUで最大の人口を持つ国になります。EU議会の議員構成は人口比ですので、トルコが最大の議席を持つ事になります。これは容易にEU側が受け入れられないと言われています。

イスラムの問題

もう一つ理由があります。個人的にはこれが最重要と思いますが、トルコの殆どの国民がイスラム教徒だからです。EUははっきり言ってキリスト教クラブです。この理由をEUは明言しません。何故ならフランスにもドイツにもイスラム教徒がたくさん住んでいるからです。しかし本音の部分では、イスラム教徒に対する反感があるのだと思います。

独自路線を歩むトルコ

トルコでも最近になって、EUには入れさせてもらえないんだと諦める人が多くなりました。誇り高きトルコ民族ですから、頭を下げてまでEUに入ろうとは思っていません

トルコは関税同盟をEUと結んでいますから、貿易面ではEUに加盟しているのと同じです。

EUに対しては「入れてくれないならいいよ。トルコが加盟すれば、EUの人々の年金を俺たちが稼いでやったのにな。後で後悔しても遅いよ。」なんていう人も増えてきました。

確かに人口が圧倒的に若いトルコは少子高齢化が進むEUの貴重な労働力になったかも知れません。シリア難民問題の解決もより容易になったかと思いますが、残念です。

英国とのタッグが組めるか

今後、トルコはEUに入らず、独自路線を進むと思われますが、重要なのが英国との関係だと思います。

ブレグジットを決めた国民投票の後に、当時のメイ首相が真っ先に訪れたのがトルコでした。英国はEUを牽制する上で一番効果的なのがトルコだと思ったのでしょう。

トルコにとってみても、英国は、市場としても資金調達先としても申し分ありません。しかもバックには米国がいて、国際世論への影響力も抜群です。

当時と今では環境が違いますが、日英同盟を締結していた時期、日本が国際社会で如何に力を発揮できたかを考えれば、トルコが目指すべきは英国との協力関係ではないかと思います。因みにジョンソン英国首相のおじいさんはトルコ系だそうです。

 

↓ 気に入って頂ければ、応援ポチお願いします。

このエントリーをはてなブックマークに追加