ドイツ人は現金主義者
以前のブログで、日本人の現金至上主義について書きましたが、欧州にも強烈な現金主義者がいました。それはドイツ人です。本日のBBCがドイツ人の現金信仰について特集しています。その記事によれば、
- ドイツ人は他の欧州の国々に比べ、現金を使用する頻度が2倍以上多い。
- クレジットカードより即座に口座から引き落とされるデビットカードを好む。
- クレジットカードを使う場合も、クレジット機能は使わない。翌月の一括払いを好む。
ドイツ人が現金を好む理由
いやー、日本人を上回る鉄壁な堅実さ、倹約家ぶりが窺えます。この記事の中では、何故ドイツ人がこれだけ現金払いを好むか分析しており、結果は下記の通りです。
- ドイツ人は18世紀においても、労働の対価を給与支払い証明書の様な抽象的な形ではなく、現金の様に具体的なもので受け取ることを好んでいた。
- 19世紀に入って、労働者と経営者側の対立が深まった頃、更に貯蓄が奨励された訳は、「良く働き、貯金したものは、失うものがあるので、革命を起こさない」という経営者側の思惑もあった様です。(さすがマルクスが生まれた国です!)
- 第二次世界大戦の後も、貯蓄銀行は国民の倹約を尊ぶ文化が失なわれることを恐れて、消費者金融の導入に反対した。
- 国から監視される時代を長く過ごした人々は、クレジットカードなどの新しい金融テクを使う事を嫌い、現金を好んだ。(旧東独の人は確かにそうでしょうね。)
- その後、クレジットカードは他の欧州各国並びに米国で広範囲に浸透した。しかしドイツではクレジットカードを意味するのは、使用と同時に直ちに口座から引き落とされるデビットカードであった。
1980−90年代、幼少期をバイエルンで過ごしたアンナさんは過去を振り返ります。「父は毎週一回、木曜日に銀行で現金を引出しました。金曜日に家族で食料品店に行き、土曜日にマーケットで買い物しました。残ったお金で1週間過ごしていました。」
フィンテックの会社を興したマルクさんも「親から現金を重視することを教わった。お金をどう使ったかトレースができない不安と無駄遣いしてしまう恐れがあったので、デビットカードでさえあまり人気がなかった。」と語っています。
現金は持っているがおごらない国民性
日本人から見ても真っ青になる位の倹約ぶりです。彼らは常に多くの現金を持ち歩いている様で、ドイツ人は2017年の調査では平均で107ユーロの現金を財布に入れていたそうです。
こんなに沢山の現金を持参しますが、トルコでは「ドイツ人の様に払う」というのは割り勘払いを指す言葉で、馬鹿にされます。要するに人におごらないんですね。(因みにオランダ人も同じでDutch Accountという言葉は有名ですよね。)
そんなドイツでも、最近徐々にカード払いが普及し始めました。2018年に漸く現金払いをカード払いの総額が追い抜きました。しかし未だに小さな商店や飲食店では現金以外お断りのお店がある様です。(本当に日本に似てますね。)
コロナの影響
ところが、ここにきて転機が訪れました。そうコロナウイルス です。コロナ感染を恐れて一気にキャッシュレス払いに移行が始まりました。
英国などでも同じ様な動きが出ていますが、異常にと言っても良いくらい清潔好きなドイツでは、現金以外お断りから現金払いお断りに一気に移行した店舗も出ている様です。
カードも使いたくないので、非接触型の支払いに移行する人も多く、銀行のATMからの現金引き出しが56%も減少しているとの報道もあります。
しかし現金からキャッシュレス支払いに移行した多くの国民が、今まで幾ら使ったか把握できないとの不安を訴えている点が倹約家のドイツ人らしいですね。
ドイツ人の国民性は変わらない
キャッシュレスに移行するのは大変良い事だと思いますが、ドイツ人の倹約を重んじる国民性は変わりません。
歴史的にみれば、今度の様な危機に際して、ドイツ人は非常に慎重になるそうです。となると、心配されるのは今年のバカンスですね。
ドイツ人の到来を待ちかねているギリシャは7月1日から自国への直行便を再開する事を発表しました。でもドイツ人今年ギリシャに行きますかね。
多くのドイツ人は、今年は南ドイツの保養地辺りで我慢しておこうと考えるでしょうし、ギリシャに行ったとしても、将来が不確実な時代、慎重なドイツ人が財布の紐を緩める事はないでしょう。ドイツ人の散財に期待しているギリシャは困るでしょうね。
そうなるとロシアからの観光客に頼るしかないのですが、1日で1万人を超える感染者増加が記録されているロシアからの観光客を不用意に受け入れるのはまずいですよね。今年はいずれにせよ南欧にとって厳しいバカンスシーズンになりそうです。
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