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コロナの後に何が起こるかー香港問題の本質

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英米4カ国共同声明

米国は英国、カナダ、オーストラリアと共に、中国全人代の「香港国家安全法決議」に対して香港の自治を脅かすとして共同声明を提出しました。

これに対して、香港の行政府長官は「米国の香港への抗議は諸刃の剣であり、香港の国益を損なうだけでなく、米国の国益も大きく損なうものだ。米国企業は香港を通じて、過去10年間に約3兆ドル(320兆円)の取引を行ない、1,300社の米国企業が香港に拠点を置いている。」と強く反発しました。

香港ってどれほど重要なのか

香港を巡る動きは、ここのところ風雲急を告げていますが、米中両国が批判し合っている状態で、どちらの言い分が正しいのか良くわかりません

香港はどれだけ経済的価値があるのでしょうか、又、米国制裁はどれほど効き目があるのでしょうか。

米国のWall Street Journalがこの点について、今日記事を掲載しましたので、要点を下記の通り、まとめてみました。

  1. 米国が香港に対して行う制裁措置として、先ず考えられるのが香港に与えている特別な地位の剥奪です。1992年以降、米国は貿易上、香港を中国から切り離していました。この地位が取り上げられると、米国のハイテク機器等の輸入が困難になりますし、香港から米国への輸出品に対しては、中国本土からの産品と同じ関税が課されます。
  2. しかしこれらは、現在米国上院で検討されている制裁措置に比べれば、とるに足らないものです。香港は貿易港としても中国にとって重要ですが、金融ハブとしての役割の方が遥かに重要です。中国は、1.14兆ドル(120兆円)の資産を香港に持っています。この金額は過去10年で3.7倍に増大しています。、中国は海外ビジネスの大部分を、香港経由でドル建てで行っています。上海は、中国本土の資本規制に縛られていますので、香港に取って代わる選択肢は中国にありません。
  3. 米国は金融センターとしての香港を、直接コントロールする立場にありません。しかし、過去に北朝鮮やイランと取引をした韓国、フランス、レバノンの金融機関を制裁しました。米国は国際金融システムにおける支配的地位を利用して、金融制裁を外交のカードとして利用できます。
  4. 米国は、香港が中国の銀行を支援する事を止めさせる事はできませんが、香港と取引する相手が、米国の制裁を恐れて、及び腰になれば、香港の金融ハブとしての地位は大きく損なわれるでしょう。
  5. 中国の銀行が、ドル建てで取引を行う事が難しくなれば、現在、主にドル建てて行われている「一帯一路」の様なインフラ事業は継続が難しくなるでしょう。
  6. 制裁措置は段階を踏んで行われると思いますが、香港はもはや自治を維持していないという米国政府の判断は、世界の金融システムからの中国の締め出しの始まりになるかもしれません。

上記の通り、米国はドルという基軸通貨を持っており、中国も海外事業ではドルを使わざるを得ないのです。ドルは電子送金しますと、必ず米国政府に通知されるシステムになっており、ごまかしが効きません。

もしあなたの企業が、香港で中国企業と取引を行えば、米国から巨額の罰金を科されるとすると、怖くて取引できませんよね。

米国による金融制裁は恐るべき効き目を持っており、未だに米国は世界の金融インフラを支配しているのです。

日本が浮上するチャンス

香港問題は、米中が覇権を争う新冷戦のまさに最前線ですが、ここで日本が浮上するチャンスがあります。

トランプ大統領も大統領選を控えて、中国を今後も標的にしていくでしょうし、中国の習主席も、共産党の中では弱腰外交との批判もある様ですので、米国に対して、簡単に引き下がるわけに行かないでしょう。

以前のブログでも書きましたが、米中対立の構図において、日本の価値が高まると思います。安全保障上、日本は米国に守って貰っているので、当然、米国との関係を重視すべきと思いますが、中国とのパイプも維持しておいた方が良いでしょう。

BBCとのインタビューに応じた台湾の蔡 英文総統が「我々は独立国家である。」と中国の唱える一国二制度を明確に否定しながらも、中国とは「Status quo」すなわち現状を維持していきたいと語っていたのが、印象的でした。

彼女は政治では譲れないが、中国との経済的関係から得られる利益はこれからも享受していこうとしています。

われわれも彼女のしたたかな姿勢に習って、この千載一遇の機会を日本の利益に結びつける事が重要と思います。

 

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