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バッタの大群がもたらす食糧危機

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バッタの大群現れる

日本のマスコミでは、ほとんど取り上げられていませんが、東アフリカに始まり、インド、パキスタンを襲ったバッタの大群は、想像以上の被害をもたらしている様です。

インドの新聞"India Today"でその被害に関する記事を見つけましたが、その内容に驚きました。

14億人のインド、2億人の人口を持つパキスタンを襲ったバッタの被害は尋常ではありません。その内容をかいつまんでご紹介します。

バッタの特徴

今年、インドの北部5州を、アラビア半島から飛来したバッタの大群が襲いました。

目撃者に依れば、このバッタは8千万匹にも及ぶ群れを作り、その長さは2−3キロにも及んだそうです。

このバッタは次の様な特徴を持っています。

  • インドを襲っているバッタは「サバクトビバッタ」と呼ばれる種で、毎日、体重と同じ量を食べる猛烈な食欲を持ちます。一つの群れが押し寄せれば、1日で2,500人分の食物を食べ尽くしてしまうそうです。
  • 1日に140キロも風に乗って移動する事で知られています。その間にある緑地や農耕地を食べ尽くします。
  • 繁殖率が非常に高く、幾何級数的に増えていくので、個体の寿命は90日しかありませんが、3回の世代交代を重ねると、16,000倍に増殖します。
  • 水分と緑地帯への敏感な触覚を有しており、気候変化への対応力が生物学的に強い。

どの様にしてインドに到達したか

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バッタの飛来経路(出典:FAO)

バッタの起源はアラビア半島と思われます。これまでも、毎年およそ10個の群れがインドに来る事が観測されていました。

しかし2018年から状況が変わりました。2018年に2つのサイクロンが、サウジアラビアに例年にない大雨降らせました。

この大雨は、世界で最も乾燥し、人が住んでいない場所に湖を作りました。これは20年来なかった事です。

何故、アラビア半島を2つものサイクロンが襲ったのかについては、気候変動が原因という節が有力です。

サイクロンは二つの重要な現象をもたらしました。

  1. 砂漠飛びバッタの繁殖に理想的な環境をもたらし、バッタの爆発的な繁殖が生じました。
  2. サイクロンが風の方向を一時的に変えた為、バッタは北のイエメンに移り、更には、アフリカ大陸に飛翔しました。これが東アフリカ及び北アフリカの一部において飢饉をもたらす結果となりました。

北に向かった群れの一部はペルシャ湾を超えてイラン、パキスタンに侵入しました。2019年の春までにパキスタンでその作物の4割を食べ尽くしたと言われます。

そして彼らはインドにたどり着きました。ここでも、モンスーンが通常より6週間も早く始まった事が影響しています。

本来モンスーンは7月初めに始まりますが、今年は5月半ばに始まりました。

雨季が早く始まったという事は、バッタの繁殖時期が長くなる事を意味し、爆発的な繁殖が危惧されます。

インド政府の対応策は

India Todayはインド政府の対応が不十分であると警鐘を鳴らしています。

というのも、昨年、インドを200にも及ぶバッタの群れが襲いましたが、インド政府はバッタによる被害がどの程度であったかさえ把握できていないからです。

そもそもバッタに対する対応は、一旦繁殖してしまうと難しい様です。

FAO(国連農業食糧機関)の責任者の話では、バッタ被害は山火事の様なもので、初期に対処しないと、いけないそうです。大きな群れになってしまうと、手がつけられなくなってしまう様です。

わかりやすくいえば、卵の段階で駆除しないと、成虫になってしまっては遅いという事です。

しかし、アラビア半島の誰も住んでいない砂漠地帯に生みつけられた卵を、どうやって探して駆除しろというのでしょうか。FAOもこれは非常に難しいとコメントしています。

コロナの影に埋もれるが重要な問題

さらに言えば、最近のコロナウイルスの感染拡大もバッタ駆除を難しくさせています。全土に外出禁止令が出ているインドで、農民を集めてFAOが駆除の方法を説明するわけにもいかず、苦慮している様です。

インドやパキスタンの農民の多くは自給自足の生活を送っています。

バッタが作物を食べ尽くしてしまえば、自分たちが食べる分がなくなってしまいます。餓死の危機に直面していると言っても過言ではないでしょう。

最初にバッタの被害にあったエチオピアやその周辺国では、約2,000万人が食糧危機に瀕していると言われています。

人口が圧倒的に多いインド、パキスタンの被害はエチオピアの比ではないでしょう。

コロナの影に隠れていますが、人類が直面する危機として、このバッタ被害にも目を向ける必要があると思います。

 

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