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ドイツと米国の間に吹き始めたスキマ風

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米国とドイツの関係にひびが入り始めた

米中の新冷戦が始まる中、米国にとってEUは最重要と言っても良いパートナーであるはずですが、そのEUの中心国であるドイツと米国の関係がギクシャクしています。

トランプ大統領は、ドイツに駐留している米軍を、大幅削減する様に指示を出したそうですが、これに対して、米紙ウォールストリートジャーナルが警鐘を鳴らしていますので、簡単にその内容をまとめてみました。

  • 公式の発表は未だないが、トランプ大統領はドイツ駐留米軍34,500人のうち、9,500名を9月までに撤退させる様命じた模様だ。この撤退はNATOの分断を狙っているプーチン大統領を喜ばせるだけだ。
  • 米国と欧州の関係は常に良い訳ではない。時には衝突することもある。しかし両者の関係はロシアや中国がうらやむ関係である。両者を合わせた経済力は他を圧倒するものだし、お互いに最大の貿易パートナーである。この関係の基盤となっているのは安全保障上の同盟関係である。
  • 今回のトランプ氏の部分的撤退という判断は、おおむねメルケル首相に対する個人的感情から生じた様に思える。(メルケル首相は米国でのG7首脳会議への参加を断った。)しかし、この部分的撤退でトランプ氏は政治的メリットを得られる訳でもないし、メルケル首相はトランプ氏の言うことに従うメリットを感じていない。2019年のピュー研究所の調査では、ドイツ人でトランプ大統領を信頼すると答えた人は13%にしかすぎない。
  • ドイツは最近、米国をいらつかせる存在だ。国防支出は、GDP比でたったの1.38%にしか過ぎず、米国や他の欧州諸国が反対したロシアからの新しいガスパイプライン「ノルドストリーム2」の建設を支持してきた。
  • トランプ大統領を軽蔑する態度を示すメルケル首相は、習主席に示す親密さとは対照的だ。彼女はあからさまに米国を批判するが、中国の対外的威圧行為や国内での弾圧には沈黙し、中国との経済関係を深めている。
  • しかし、彼女に残された在職期間は長くない。ドイツにはもっと分別のある政治家が多数いる。
  • 世界の多くの国は、中国の最近の行動に警戒心を持っている。同盟国との関係を今こそ強化すべきであり、中国やロシアに付け入る隙を与えてはならない。

ドイツはどちらへ向かうか

米中間で始まった新冷戦で鍵を握る国の一つがドイツだと思います。

ドイツは英国が離脱したEUにおいて、名実ともに中心国であり、その経済力、工業力は抜きん出ています。

筆者も、ウォールストリートジャーナルが唱える様に、ドイツが米国との同盟関係を維持する事を望んでいますが、彼らが今後どの様に行動するか確信は持てません。

そもそも東西冷戦の時代には、安全保障上の脅威が厳然としてあり、ドイツは東西に国が分裂し、冷戦の最前線にあった訳ですから、米国とドイツはNATOのメンバーとして硬い絆で結ばれていました。

ところが、今回の新冷戦の場合、英国の元首相チャーチルが唱えたバルト海からアドリア海に至る「鉄のカーテン」なるものはもはや存在せず、ロシアとの紛争地は、ウクライナやクリミア半島あたりまで東に行ってしまっています。

ドイツにしてみると、ロシアは引き続き安全保障上の脅威ではありますが、経済面ではドイツ製品の大のお得意さんですし、ロシアの天然ガスを一番買っているのはドイツです。

又、欧州諸国の中で、最も中国に投資を行っているのはドイツであり、フォルクスワーゲンは、中国で一番売れている乗用車メーカーです。

ドイツにしてみれば、ロシアも中国も大のお得意さんですから、政治と経済を天秤にかければ、おいそれと米国の主張に乗れないという事なのだと思います。

新冷戦においては、東西冷戦の時の様に、世界が二つの陣営にはっきり別れて対峙するという構図にはならないと思われます。

今考えられるのは、昨日のブログで取り上げたFive Eyesの5カ国(米、英、豪、加、ニュージーランド)、EU、日本を中心とした環太平洋パートナーシップ(TPP)のグループといった複数のグループが緩い同盟関係を築いて、中国、ロシアといった国家統制主義の国々に対峙していくという構図が、一番可能性が高い様に思われます。

ドイツはEUの中心国ですので、その舵取りは世界に大きな影響を与えます。

自由と民主主義はEUの最も重要な基本概念ですので、EUのリーダーとして、算盤勘定に流される事なく、振る舞って頂きたいと思います。

一方、米国もドイツとの同盟関係の重要性に、今一度注目すべきと思います。

 

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