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新冷戦において鍵を握る国ーインド

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インドと中国の対立

新冷戦において鍵を握る国として、昨日、ドイツを取り上げましたが、他にも重要な国があります。本日取り上げるインドは、間違いなく重要です。

インドの第二次世界大戦以降の外交戦略の変遷、特に中国との関係について、米国のニュース配信社Foreign Policyが「China is pushing India closer to United States」と言うタイトルで興味深い記事を掲載しましたので、かいつまんでその内容をご紹介したいと思います。

  1. 第二次世界大戦後、インドと中国の関係は蜜月状態にあった。当時のインド首相ネルーは1954年に毛沢東を訪れ、欧米の帝国主義に対抗していく事を確認しあい、「中国とインドは兄弟」と呼ぶほどの親密さをアピールした。当時、ネルー首相は米国に対して冷淡であり、冷戦の初期においては、同首相は東西冷戦のどちらに立つかと問われれば、ソ連側に立つと答える程であった。
  2. しかし、インド、中国両国間の関係は、未確定の国境問題を通じて悪化して行った。カシミール及びその東側のアクサイチン地方を巡る両国の意見の相違は、インドを統治していた時代に、英国政府が引いた国境線を、それぞれ論拠としているので、国境紛争は、植民地時代の置き土産とも言えるだろう。
  3. 1960年には、両国首相間の交渉も持たれたが、合意に至らず、中国の対応に不満を持ったインドは、チベットへの財政的援助を行い、ダライラマのインド亡命を受け入れた。
  4. 両国間の緊張は高まり、1962年に両軍が交戦に入る事態に陥った。この戦いで勝利した中国はカシミール地方を併合したが、インドでは、この1962年の屈辱的な敗戦は、今日に至るまでネルーの失政として記憶される事になった。
  5. 国境問題も重要であるが、インドと中国の関係をこじらせた主因は、中国とパキスタンの接近であった。元々、この地域において、パキスタンは米国の同盟国であったが、ある機会をきっかけに事態が急変する。
  6. パキスタンと中国は、両国ともインドと国境問題を抱える。この観点で最大の事件の一つが、1971年のバングラデシュ独立戦争であった。パキスタンはこの戦いで,、インドに敗れるが、中国はパキスタンに軍事援助を行った。中国はバングラデシュの国連加盟に拒否権を発動し、パキスタンは台湾とチベットの問題に関して中国の肩を持った。
  7. 最近で言えば、パキスタンのカーン首相は中国とパキスタンの経済回廊構想を打ち出し、Gwadar港整備に中国は巨額の資金を投入した。パキスタンは中国の経済援助に応える形で、中国政府のウイグル族など少数民族への抑圧に対して口をつぐんだ。
  8. 中国とパキスタンの接近は、インドを徐々に西側に近づける動機となったが、もちろんそれ以外にも様々な要因がある。1990年初頭にインドは経済面で大きな改革を行った。それまでインドにはLicense Lajという大変面倒な規制があり、これが経済成長の足かせとなっていたが、これが撤廃された。
  9. インドは、市場経済に舵を切る事となり、高度成長期を迎える事となったが、中国に対する一番の競争相手として躍り出た。
  10. 今日、中印関係において米国の重要性は増している。インドは中国がインド洋において影響力を及ぼそうとしているのではと危惧しており、中国がインド洋に覇権を及ぼそうとすればする程、インドはこれを抑止するための同盟国を必要とする。
  11. モディ首相は、中国の習主席が来訪した時は、チベット民族に反中デモを行わせ、一方、トランプ大統領訪問の際は、10万人を集めた歓迎集会を行なうなど、対照的な対応を見せた。2019年には歴史上初めての米印合同軍事演習が行われた。これはブッシュ、オバマ等歴代の大統領がインドとの関係を強化してきた努力が実ったものだが、米国が、インドをこの地域の鍵を握る同盟国とみなしている証拠である。

インドとの連携の重要性

上記の歴史的経緯を見ますと、敵の敵は味方という事がよく解ります。

中国はインドの敵であるパキスタンに近づき、インドは、中国がパキスタンに近づけば近づくほど、中国の敵、米国に接近していった訳です。

インドは中国に劣らぬ人口を有しており、その地理的な重要性もあいまって、新冷戦において鍵を握る国である事は間違いありません。

中国政府の一帯一路構想においても、インドは、まさにその中心地に位置する訳で、インドが対中包囲網に加われば、中国も自分の思う通りのシナリオで進める事は難しくなるでしょう。

日本のビジネス界としては、中国とのサプライチェーンが分断された際に、インドの様な国にシフトできる様な仕組みを作って置く事が必要になると思います。

中国から圧力をかけられても、「我々の言い分を聞いてくれないなら、わかりました。インドから調達します。」と言えるか言えないかは重要です。

交渉ごとにおいて、最も大事なのは、相手が一番嫌がるオプションを、手の内に持っているかどうかだと思います。

新冷戦になったからといって、すぐに中国から引き上げる必要はないと思いますが、インドカード(ベトナム等他の国でも良いと思いますが)を一枚持って置く事が重要でしょう。

これを持っているだけで、中国側を動かす事が可能になる筈です。

 

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