保守もリベラルも疑問を投げかけるトランプ政権の外交方針
先日、ドイツにおける駐留米軍の削減計画に反対する保守系米紙ウォールストリートの記事をご紹介しましたが、同じ問題に関して、今度はリベラルのForiegn Policyがトランプ政権に対して警鐘を鳴らしました。
驚いたのは、この問題に関しては、保守もリベラルも、同様にトランプ政権を批判している点です。米国の識者は、右も左も駐留米軍の方針に、不安を覚えている様です。
Foreign Policyは、同盟国と米国の関係に関して、ありがちな三つの誤解にトランプ政権は陥っていると、次の様に述べています。
誤解1:駐留米軍は駐留する国のためにのみ存在する。
第二次世界大戦後、米国政府は敵国からのアメリカ本土に対する長距離弾道弾(核ミサイル)による攻撃に備える必要が出てきたが、同盟国における米軍基地は、長距離弾道弾による攻撃にいち早く対抗する意味で有用である。
1940年代に、米国の為政者が獲得した世界中の基地や通過権は、今日に至るまで維持されており、世界80カ国に数万人の米軍が駐留している。
その中でも、ドイツの基地は特に重要であり、シュツットガルトには、米軍の欧州本部とアフリカ本部があるし、ランドスツールには、イラクやアフガニスタン戦争で傷ついた米兵が治療を受けた米軍専用の病院もある。
ドイツにおける米軍基地は、明らかにドイツを守るためだけのものではない。
アメリカ自身を守るために必要であり、これらがなければ、欧州のみならず、中東やアフリカでの作戦遂行にも支障をきたす。
誤解2:軍事的脅威に関して、ドイツと米国は同じ認識をしている。
ドイツ人の多くは、ロシアが軍事的脅威であるとの認識を持っていない。
冷戦時代はそうだったかもしれないが、ソ連の崩壊と東西ドイツの再統一は状況を一変させた。
ドイツ政府は、プーチンがバルト諸国やポーランドに侵攻するなどと、予測していないのが現実だ。
ドイツ政府は、ロシアに対して経済関係強化を進めてきたが、軍事的なアプローチより外交と経済関係によってロシアとの問題を解決しようと努めてきた。
トランプ大統領は、ロシアとの軍縮協定からの離脱を決めたが、同盟国たちは軍事面での米国との連携は、財産というようりもリスクだと認識し始めている。
誤解3:防衛支出に関する議論が、何が何でも同盟国の国民総生産の2パーセントを支出させるという議論になっている。
ドイツ政府もこの点に関しては、手を打っている。昨年、ドイツ政府は国防費を56億ドルも増加させた。これは戦後最大の国防費の増加である。ドイツはバルト海におけるNATO軍の北方強化にに貢献している。
空回りするトランプ政権の同盟国対策
トランプ政権は、現在、対中包囲網を作ろうとしていますが、その観点で言えば、安全保障は、同盟国との重要な結び目です。
もちろん、自由や民主主義を守るという大義名分は重要ですが、これだけ中国やロシアと経済面での結びつきが出来てしまうと、理想論だけでは、同盟国は付いてきません。
安全保障面で同盟国であると言う絆が必要なのです。欧州が、米国の言うことをしぶしぶながらも聞くのは、NATOという安全保障面での共同体があるからです。
日本だって、安保がなければ、米国の言うことを、全て聞く事はないでしょう。
一方、冷戦時代の様なロシアの脅威を、現在、NATO諸国は感じていない事を、米国は正しく認識すべきと思います。
そういう欧州各国の認識の変化を無視して、「お前ら守ってやっているんだから、有り難く思え。」と言わんばかりのトランプ政権の居丈高な態度は、欧州諸国の反感を招くだけだと思います。
先日、「中国が、インドを米国に接近させている。」という記事を取り上げましたが、「米国がドイツを中露の方に接近させている。」と言っても良いのではないでしょうか。
トランプ大統領の欠点は、独善的な政治家によくありがちですが、識者や経験者の意見をよく聞かず、側近をイエスマンで固めてしまう事だと思います。
前国防長官のマティス氏が「私の生涯で初めて、国民を団結させようとしない大統領だ。」と批判していましたが、大統領に対しても、自分の信念に基づき、耳に痛い忠告をするマチィス氏の様な人間こそ、大統領にとって不可欠な人材だと思います。
*気に入って頂ければ、ブックマーク及び読者登録お願いします。