爆発的に利用者が伸びたZOOMに批判が
ZOOMは使い勝手の良さから、人気を博し、更にコロナ の感染拡大に伴い、テレワークが一般化したために、今年になってから、爆発的に利用者を伸ばしてきました。
しかし、ここにきて、同社の中国政府との関係に疑惑の視線が注がれています。
日本のマスコミでは、ほとんど報道されていませんが、AFPがこの疑惑に関して、ZOOMにかみつきました。
このAFPは、ご存知の方も多いと思いますが、フランスの通信社で、ロイター(英)、AP(米)と並んで、世界三大通信社の一角を占めています。
さすが自由、平等、博愛を謳ったフランス革命のお膝元の通信社らしく、人権問題に敏感です。
EUのもう一つの大国ドイツは、人権より経済優先というお国柄ですが、フランスは個人の権利に非常にうるさいと言う特徴を持っています。
昔、フランスに住んでいた頃に感じたのですが、フランスは個人の自由を脅かすものに徹底的に反発する個人主義者の集団です。
この国を統治する人たちは本当に大変だと思います。何せ、国民は、長いものに巻かれるなんて発想はこれっぽっちもありません。
大統領だろうが首相だろうが、新聞や雑誌で愚弄される事もしばしばです。(風刺画などを見ていると、逆に大統領の人権が侵害されているのではと思うほど過激です。)
基本的に、何を言っても許されるお国柄です。
彼らにしてみると、今回のZOOMのとった行動は許せなかった様です。
ZOOMが何をやったかと言うと、米国の人権団体「Humanitarian China」が、天安門事件を追悼するために、米国にあるZOOMのアカウントを使って、中国本土からの参加者を含めたテレビ会議を行いましたが、このアカウントが突如閉鎖されたのです。
ZOOMは、このアカウントを一旦停止した事を認め、「いかなるグローバル企業も、事業を行っている国や地域の法律に従わなければならない。会議が複数の国にまたがって行われる場合は、各参加者はそれぞれの国の法令に従うことが求められる。」と釈明していますが、影響を受けた人権活動家らは収まりません。
ズームが中国共産党から直接圧力を受けた可能性があるとして、前述のHumanitarian Chinaは、「もしそうであるならば、ズームは独裁的政府と共謀して、天安門虐殺の記憶を消そうとしていることになる」とする声明を発表しました。
同団体は、厳しい検閲が行われている中国の仲間たちと連絡を取る上で、ズームは「不可欠」なものだとしています。
ZOOMが受けた圧力
実は、この件については、ZOOMは直接、中国政府から圧力を受けていた事を自ら認めた様です。
米Bloombergが「ZOOM says China asked it to censer pro-democracy activists(中国は民主派の活動家を検閲する様に要求したとZOOMは語った)」と銘打った記事で、ZOOMが今年の5月から6月の初めにかけて、中国当局のコンタクトを受け、彼らの要求を受け入れて、米国と香港のアカウントを停止した事を認めたと報じています。
Bloombergは更に次の様に報道しています。
- 中国の要求に屈したのは、ZOOMだけではない。アップルも中国政府の要求を受け入れ、二つのPodcastを中国で停止した事を発表した。
- 今回のZOOMの行動は、パンデミックの影響で、自宅待機を余儀なくされた国民の間で、爆発的に利用者を伸ばした会社が、実は天安門事件に関する情報を検閲している中国政府と非常に近い事を浮き彫りにした。
- 「中国でビジネスを展開している米国IT企業は、米国の基本原則である自由な言論か、目先の利益と検閲のどちらを選ぶかはっきりさせる時期が 来た。」と上院議員Josh Hawley氏は語った。
中国で営業を行うIT企業が払う代償
今まで知らなかったのですが、ZOOMは中国でも営業を行っているんですね。
ご存知の通り、米国の大手IT企業GAFAのうち、中国で営業を許されているのはアップルだけです。
Googleは、一旦中国市場に参入しましたが、2010年に撤退しています。
アマゾンも同様に2019年に撤退しています。
フェイスブックも2009年以降、中国本土では接続できなくなっています。
そんな中で、ZOOMが何故中国市場に進出できたか不思議ですね。
ZOOMの社長Eric Yuan氏は米国の市民権を得ていますが、中国生まれです。その辺りが影響しているかもしれません。
ZOOMは、私も使っていますが、気をつけたほうが良さそうですね。情報がすべて筒抜けになっている可能性があります。
昔、旧ソ連時代にモスクワに良く出張しましたが、あの頃は日本から送られてくるファックスは、全てソ連当局により解読されていましたので、商談において重要な情報は、暗号でやりとりしていました。
ZOOMで商談する時は、暗号が必要かも知れません。でもそんな面倒な事をするより、ZOOMの競争相手に乗り換えたほうが手っ取り早いかもしれません。そんな気持ちにさせる今回のZOOMの行動でした。
最後まで読んで頂き有り難うございます。