MIYOSHIN海外ニュース

世界の役立つ情報をわかりやすくお伝えします。

米韓の思惑を巧みに利用する北朝鮮の作戦

f:id:MIYOSHIN:20200614183410j:plain

金与正が韓国政府との交渉窓口閉鎖を示唆

北朝鮮のリーダー金正恩の妹、金与正が、脱北者団体が北朝鮮向けに北朝鮮政府を批判するビラ風船を飛ばしている事に関して、韓国政府の取締りがなまぬるいと、厳しく批判している事が話題になっています。

彼女は、南北の連絡窓口を封鎖するとまで発言して、韓国政府を威嚇していますが、韓国の文政権はこの恫喝に対して、驚いたことに、北朝鮮の意向に添った形で、脱北者団体を取締る意向を表明しました。

これに対しては、当然、内外の人権団体から韓国政府の姿勢が批判されています。

このニュースを聞いて まず感じた事は、次の二つの点です。

  1. 金与正は金正恩の妹であるが、政府の序列から言えば、かなり下位なのに、何故、このような声明を発表しているのか。
  2. 何故、この時期に、北朝鮮は韓国に対して強硬姿勢に出てきたのでしょうか。

金与正はもはやNo.2か?

金与正は、金正日の血を受け継いだいわゆる白頭山血統の持ち主です。

しかし、政府の中の序列は30番台ですし、共産主義の国家で最も重要な決定機関である政治局の正式メンバーではありません。

今後、彼女は党内の序列を高め、政治局の中でも最重要メンバーである常務委員になる必要があります。

また、北朝鮮の場合、軍で然るべき立場を経験する事が、リーダーとして不可欠なキャリアと見られていますので、この点も彼女には欠けている点です。

しかし、今回の内外での発表においては、金正恩以外は使わない「指示」という言葉が使われており、彼女の政府内での立場が、既にNo.2である事を物語っているとの指摘もあります。

先日、金正恩総書記が、長期間表舞台から遠ざかり、北朝鮮の生みの親である金日成の記念式典でさえ欠席した時には、死亡説まで飛び交いましたが、その後、5月初めの肥料工場の完成式典に参加し、生存が確認されました。

しかし、その様子をビデオで観察すると、片足を引きずる様子が見られ、健康面での不安は一掃されていません。

最近の北朝鮮の声明も、金与正の名前で発表される事が多く、金正恩は健康面で問題を抱えている可能性があり、金与正が今後、実質的なリーダーとして北朝鮮を治めていく可能性も噂されています。

北朝鮮が強硬手段に出た訳

金正恩は、2018年より、突如、トランプ大統領と交渉を開始しました。

シンガポールでの歴史的会談から早2年がすぎましたが、鳴り物入りで始まった二国間の会議はハノイで行われた2回目の首脳会談で決裂し、元の木阿弥に終わりました。

経済制裁の停止を期待していた金正恩は、ハノイ会談の結果に大変失望したと伝えられています。

この会談の敗者は北朝鮮及び米朝の融和を支援してきた韓国だと伝えられていますが、この点に関しては筆者は異論があります。

もちろん、金正恩は経済制裁の停止を目的として会議に臨んだと思いますが、もともと核兵器の開発停止など、本気でやるつもりは無かったのではないでしょうか。

米国がならず者国家と呼んできた国々の運命を見ればわかりますが、イラクやリビアのような核兵器を持たない独裁国家は結局、米国とその同盟国によって葬り去られました。

これを見ていた北朝鮮政府にとって、核兵器は米国に対する唯一最大の武器ですから、簡単に手放すわけがありません。

金正恩にしてみれば、核兵器を廃棄すると言う口約束をし、経済制裁を停止してもらうと言う作戦だったのではないかと思います。

この悪巧みはトランプに通じず、結局、会談は破局に終わったわけですが、それでも米国との交渉によって、北朝鮮は核兵器の開発にとって一番重要な時間稼ぎができたと言えます。

北朝鮮の究極の目的は、米国本土を自国の核ミサイルの射程に入れる事ですが、おそらく今でもグアム基地を狙う事は可能だと思われます。

既に北朝鮮は韓国のみならず、米国も恫喝する立場にあるのです。

一方、北朝鮮の経済は経済制裁でかなり悪化しているところに加えて、コロナ感染の影響で頼みの綱の中国との交易が途絶えてしまい、かなりひどい状態にあると伝えられています。

食糧不足の懸念も伝えられており、北朝鮮としては、短期的に韓国からの経済援助を期待しているものと思われます。

米国でのサミットに関する懸念

今後、何が起こるかですが、注目すべきは、9月に米国で行われるサミットだと思います。

このサミットにトランプ大統領は、韓国を呼ぶと発表しました。

韓国としては、先進国首脳会議に呼んでもらえるのは光栄でしょうが、トランプ大統領の事ですから、当然、韓国にお土産を要求するはずです。

大統領選での劣勢が報じられるトランプ大統領としては、出来るものなら、北朝鮮問題を9月に解決して、その勢いで、11月の大統領選に臨みたいと思っているはずです。

北朝鮮は、これまでも北朝鮮の非核化、国交樹立を自らのレガシーとしたいトランプ大統領の政治的野望と、韓国の文大統領の南北融和を最優先するハト派的スタンスを手球にとって来ました。

懸念されるのは、トランプ大統領が、功を焦るあまり、北朝鮮と中途半端な条件でディールを行ってしまう事です。

日本は、人ごとではありません。北朝鮮のミサイル圏内にあるのは米国ではなく、日本なのですから。

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。