コロナウイルスの感染拡大に伴い、爆発的に消費量が伸びたものがあります。それはプラスチックです。
このプラスチック使用量の増大が何をもたらすかについて、英誌「Economist」が興味深い記事を掲載しました。その中身を簡単にご紹介致します。
Ecnomistが語るプラスチックゴミの脅威
コロナウイルスの感染に伴い、米国では使い捨てプラスチックの消費量が250-300%増加したと言われます。
その多くは、マスク、バイザー、手袋などコロナウイルスを寄せ付けない様設計されたプラスチック製品です。
Grand View Reserchの調査によれば、使い捨てマスク市場は2019年の推定8億ドルから今年1,660億ドルまでに跳ね上がるそうです。
プラスチックの需要増大は、コロナに関する防護用品に留まりません。
ロックダウンはオンライン販売の拡大につながっており、アマゾンの欧米での注文は昨年比65%も増加しました。
オンラインで購入されるものの多くは、プラスチックで包装され、緩衝材にもプラスチックが使われます。
一方、ロックダウンされた市民たちは、記録的な数の宅配サービスも利用しました。
宅配サービス大手のUber Eatsは第一四半期の売り上げが昨年比54%を記録しました。これらに使われる食器類、包装材もほとんどがプラスチックです。
一方、プラスチックをリサイクルしようという傾向は弱まっています。
リサイクルが進まない理由は、コロナ感染を恐れるため、ゴミ箱に廃棄物を捨てに行く事を避ける人が多いからです。
また、コロナ感染は、経済活動を停滞させ、原油価格の暴落を引き起こしました。
プラスチックの原料は原油です。プラスチックの価格も暴落した結果、人々はリサイクルに対するインセンティブを失ったのです。
もう一つ理由があります。世界中の自治体がリサイクル活動を削減したのも原因です。
汚染されたゴミから、ごみ収集業者が感染するリスクを懸念したのです。ウイルスは72時間もプラスチックの上で生き延びるのですから。
これらすべてが意味する事は、今年生産されたプラスチックの殆どは埋め立て処分か、焼却処分されるという事です。どちらも将来に禍根を残すことになります。
貧しい国では、単にプラスチックゴミを積み上げています。これはプラスチックを雨や風で、海に押し流す事になります。
焼却もよくありません。特に開発途上国では、設備が粗悪なため、大気中に毒素を発生させ、プラスチックを完全に消滅させる事が出来ず、残ったナノ粒子がガンを引き起こします。
海洋のプラスチックが、海洋生物にとってどの程度危険であるかは、研究が始まったばかりですが、プラスチックが海のアスベストになる可能性があります。
プラスチックゴミ増加に対して取るべき手段
以上が、Economistの記事要約ですが、コロナの感染は、プラスチックの爆発的な消費を招き、更にはリサイクルの停滞を招いていたのですね。これは見逃していました。
プラスチックゴミの多くは、最終的に海にたどり着く様です。
太陽光と塩水に晒されたプラスチックは、完全に分解される事なく、マイクロプラスチックという極小の破片になっていくと言われています。
これを間違って捕食した魚を人間が食べると、プラスチックを食べるのと同じ事になります。
Gayer et al 2017によれば、1950年代に大規模な生産が始まったプラスチックは、現在までに83億トンが生産され、そのうちリサイクルされたものはわずか9%だそうです。
毎年800万トンにも及ぶプラスチックゴミが海洋に投棄されており、2050年には、海中のプラスチックゴミが魚の総量を上回る事が危惧されています。
昨年のG20大阪サミットでは、この問題が取り上げられ、2050年に、追加的な汚染をゼロにすると言う具体的な目標を明記した首脳宣言がまとめられました。
既に始まっていますが、レジ袋の有料化や、プラスチック製ストローの禁止等積極的に取り入れていくべきと思いますし、石油由来の原料を使わないプラスチックの開発等、今後積極的に検討すべきと思います。
真っ青な海は人類に与えられた遺産として引き継いでいくべきと思います。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。