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CNNが言い当てた香港国家安全法の本質

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CNNが言い当てた国家安全法の本質

香港国家安全法が中国の全人代で、6月30日可決されました。米国のCNNが記事につけたタイトルが秀逸です。

Hong Kong is about to be governed by a law most residents have never seen. And it’s already having an effect.(香港は市民が内容を知らされていない法律によって統治されようとしている。しかもその法律は既に効力を発しているのだ。)

この一文が、今回の国家安全法の本質を言い当てている様な気がします。

普通、法律というものは、法案の段階で、国民に内容が開示されます。そして、国会で可決、公布されるものですが、今回の国家安全法は、このプロセスから完全に逸脱しています。

香港には国会にあたる立法会という機関があるのですが、この立法会に諮られる事なく、中国本土の全人代で可決され、しかも、その中身は明らかにされないまま、発効しているのです。

こんなの普通の国ではありえないですよね。

CNNのレポーターの話によれば、昨日、香港のキャリー ラム行政府長官は、国家安全法の内容はもちろん、国家安全法が可決された事実に関しても、レポーターの質問に答えず、「ノーコメント」を貫き通したそうです。

香港の人たちは何を恐れているのか

国家安全法の詳細は公表されていませんが、欧米のメディアから得られる情報を総合して、香港の人たちが何を恐れているのか下記の通り纏めてみました。

国家安全法では、香港での反逆や扇動、破壊行為、外国勢力との結託などが禁止されていますが、特に、下記が問題視されています。

  • 中国政府は香港に独自の治安機関を置く。
  • 安全保障委員会が設置され、中国政府が任命した顧問が起用される。
  • 安全保障に関わる裁判については、香港の行政長官が裁判官を指名する。
  • 安全保障に関わる犯罪で有罪となった場合、長期の禁錮刑が科せられる。(最大終身刑との報道もある。)
  • この法律の解釈において。香港の既存法と矛盾が生じた場合、国家安全法が優先される


高度な自治が保証されていた香港において、いきなり暗雲が垂れ込めたという感じですね。

既に民主活動家の多くは、政治団体から離れて個人で活動を継続する旨表明しており、組織的な政治活動が非常に難しくなっています、

中国政府が国家安全法の可決に踏み切った理由

そもそも国家安全法は、香港の立法機関である立法会により制定されるべきものです。

しかし、香港市民の反対が強すぎて、立法会はこの制定を行う事が出来ませんでした。

今回の人民代による制定は、中国が禁じ手を使ったと受け止められています。

中国が禁じ手を使わざるを得なかったのは何故でしょう。下記の二つの事件が影響していると思われます。

  1. 昨年春から犯罪容疑者の中国本土引き渡しを可能にする「逃亡犯条例」改定案をめぐる大規模なデモが、香港で生じた。結果として「逃亡犯条例」を断念せざるを得なくなった。
  2. 今年一月に行われた台湾総統選挙で、台湾の独立自治を唱える蔡英文氏が圧勝した。

中国も内心は焦っているものと思われます。

特に台湾の選挙結果は中国の誤算だったでしょう。

親中派の候補を必死で支援したにもかかわらず、中国からの独立を宣言する蔡英文氏が勝利した事は、中国政府に大きな衝撃を与えた事は間違いありません。

蔡英文総統は、中国からの圧力に対して戦っている香港の民主活動家への支援を明らかにしており、中国政府は台湾から香港に独立運動の火がが燃え広がる事を警戒したものと思われます。

民主主義陣営の対応は

今回の国家安全法の強引な導入については、欧米諸国や日本から批判の声が上がっています。

特にアングロサクソン連合とも呼ぶべき、米、英、カナダ、オーストラリアの4カ国は共同宣言を発して、中国政府に対して厳しい批判を行いました。

しかし、心配なのは、中国政府に圧力をかける上で最も重要な英米2カ国の国内事情です。

両政府ともコロナウイルス や内政問題で余裕がなく、香港問題に本腰を入れられないのではと危惧されます。

中国はこの両国の状況を踏まえた上で、強引とも言える国家安全法の導入に踏み切ったのではと推測します。

 

BBCの記者は、香港の民主活動家から昨日メールを貰ったそうですが、そのメールにはこれまでのやり取りを全て削除する様にと書いてあったそうです。

国家安全法下での民主活動の難しさを物語っている様に思われます。

中国は、香港に民主主義がなくても資本主義は機能すると主張している様に思われますが、本当にその主張は正しいのでしょうか。今後、歴史が判断してくれると思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。