在宅勤務の世界的普及
コロナ感染が引き起こしたものとして、よく取り上げられる在宅勤務ですが、これは世界的な傾向で、欧米では日本以上に普及が進んでいる様です。
ニューヨークの有名なビル、エンパイアステートビルで見られる変化に関して、ロイターが記事を発信しました。
エンパイアステートビルは、アメリカの富をを象徴するビルとして有名ですが、今回、コロナは、どの様な変化をもたらしたのでしょうか。
エンパイアステートビルが経験する大きな変化
この102階建てのビルでは1万5千人が働いていましたが、現在はほとんど誰も働いていません。
ニューヨークは6月22日第二フェーズに移行し、以前の5割の人たちがオフィスで働ける様になりましたが、この巨大なビルに入るテナントのほとんどは、在宅勤務を続ける事を選択した様です。
このビルを所有するモルキン家は「コロナの影響は厳しいが一時的なもので、ニューヨークの摩天楼の一角を占めるこのビルの地位を脅かすものでは無い」と強気の見方を示していますが、不動産業界の大方は、エンパイアステートビルからのテナント流出が起きるだろうと予測しています。
今、このビルに入れば、来訪者は「新常態」に向き合う事になります。マスクの着用が義務付けられ、エレベーター内ではソーシャルディスタンスを求められ、常に個人用の消毒薬を持ち歩く必要があります。
何と言っても、大手企業が、社員にとって在宅勤務がより快適になっている事に気づいたことが大きいと専門家は指摘しています。
ニューヨークでは、在宅勤務が可能な高所得者層のコロナ感染率が低いこともあり、在宅勤務への流れは止まりそうもありません。
東京はどう変わる
以上がロイターが伝えるニューヨークの現状ですが、翻って東京はどうなるのでしょうか。
東京もコロナ感染が終息した後、元には戻らないと思います。
確かに、都心ににオフィスを置くメリットはあります。
そこに本社がある事により、取引先より信用が得られるメリットです。
従業員も、都心で働く事を誇りに思っている部分があります。
コロナ感染が拡がる前に、良い人材を獲得しようと思えば、都心にオフィスを構える必要があったでしょう。
しかし、コロナが強制的に在宅勤務を実施させた結果、企業も従業員も在宅勤務がある程度機能し、しかも快適であることが分かってきました。
こうなると、在宅勤務を許してくれる企業に、優秀な人材は流れる様になってきます。
日立や富士通の決断
そんな中、日立製作所や富士通は非常事態宣言解除後も在宅勤務を続けることを表明しました。富士通は同時にオフィスを半減するとしています。
彼らが在宅勤務に踏み切った理由は、オフィス賃料の節約だけではなさそうです。
優秀な人材の確保と生産性向上の鍵を、在宅勤務に見出そうとしているのではないかと思います。
日本には在宅勤務を進める上で、大きな障害があると言われています。
日経の記事によれば、在宅勤務に適した専門職(法務、財務、IT技術者等)の割合が、日本は17%しかなく、これに対して、米国は36%、英国に至っては37&もあるそうです。
一方、顧客と直接対峙する必要がある営業職の割合が日本は27%と、欧米諸国に比べて圧倒的に高いのが特徴だそうです。
日本がいわゆる「足で稼ぐ営業スタイル」に、いかに固執して来たかがわかります。これが日本では在宅勤務の大きな障害になっています。
また、これは同時に日本の生産性向上の大きな障害にもなっていました。
確かにそうですよね。生産性を向上させる専門職が少なくて、営業マンばかり多くては生産性は上がりません。
上記二社は、在宅勤務に適さず、生産性向上の足かせになっている営業職を大きく削減しようとしているものと思います。
下記のグラフは、如何に日本の生産性が低いかを物語っています。(出典:OECD)
日本再生を可能にする在宅勤務
失われた30年を脱して、日本が再生するためには、ここで大きく生まれ変わる必要があると思います。
少子高齢化が急速に進む日本は、労働力の確保と生産性の向上を同時に達成する必要があります。
特に高齢者と女性の活用が大事ですが、在宅勤務が可能となれば、通勤の負担が軽減され、しかも勤務時間に縛られないフレキシブルな勤務が可能となりますので、高齢者や女性の参加が容易になります。
一方、生産性の向上のためには、専門性のある職種へのシフトが必要で、この動きは在宅勤務できる人を増やします。
人生100歳時代を迎える中、リカレント教育を通じた専門性の確保を積極的に推進する必要があると思います。
60歳で定年退職した後、オンラインでリカレント教育を受け、新しい専門性を身に付け、再就職し、在宅勤務で社会に貢献するという未来がもう目の前にきています。
東京一極集中の問題も含め、在宅勤務は日本の様々な問題を解決してくれる可能性を秘めているのではないでしょうか。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。