バッタの大群、東アフリカで更に勢いを増す
6月1日のブログで、東アフリカに端を発したバッタの大群がインド、パキスタンを襲った事を取り上げましたが、更に大型の大群が東アフリカで発生して、猛威を奮っている様です。
Economistが伝える東アフリカの惨状
英誌 Economistが伝えるところによれば、1月から断続的に発生するバッタの大群は、ケニアとエチオピアの農産物を食い散らし、経済に深刻な影響を与えているようです。
格付け機関であるFitchはエチオピアの経済にバッタが大きなダメージを与えていると警告を発しています。
食料品の価格は上がり、インフレ率は20%を超えるレベルに達しています。
別の格付け機関であるMoody'sは、エチオピアやケニアにとって、バッタは信用格付けの足を引っ張る存在だと言っています。
バッタの害とコロナの感染拡大により、両国の経済成長率は半分以下になったそうです。
バッタは人間と同じ様にとうもろこし、もろこし、きびを食べます。
そしてこれらは家畜の飼料でもあるのですから、被害は甚大です。
今年の初めにケニアで発生した大群は2000億匹にも達し、1日でドイツの全人口が食べるのと同じ量を食べたそうです。
そして、更に大群が襲ってきそうな状況です。国連食糧機関(FAO)は「トンネルの出口は見えない。」と嘆いています。
バッタの恐るべき変身
今回被害を与えているのはサバクトビバッタと呼ばれ、トノサマバッタの親戚だそうですが、恐るべきは次の様な特徴を有しています。
- 繁殖性が高く、世代が変わると個体数が20倍に膨れ上がります。これを短期間に繰り返して、群れは急膨張します。
- 通常は大人しい存在であり、群れを作らず一生を終えます。これを孤独相と呼びますが、大量の雨が降り続くと、群れを作りやすい環境が生まれ、体の色も緑からどぎつい色に変色し、群生相と呼ばれる群れを作る種類に変わります。
- 群生相のバッタは、翅が長く、長距離移動が可能になり、雑食性で猛烈な食欲を持つ様になります。
世界銀行はケニア、エチオピア、イエメンで総額85億ドルの経済的損失を与える可能性があるとしています。
イエメンではバッタの被害により、二千万人の人が飢餓に瀕している様です。
それにしても恐るべき食欲です。
群生相のバッタは1日で自分の体重と同じだけ食べると言われていますが、上記の「ドイツの全人口が食べるのと同じ量食べる」レベルとは知りませんでした、
この部分私も驚いて、何度もEconomistの原文を確認したほどです。
バッタの拡散の恐れ
FAOが心配しているのは、バッタが広く拡散していく事です。
既にソマリアからインド、パキスタンに被害が拡大していますが、風に乗って西方向にも拡大することが危惧されています。
下記のアフリカ地図をご覧ください。
エチオピアからスーダンにイナゴは移動中で、これがスーダンの砂漠乾燥地帯で勢いを失えば良いのですが、更に西に飛び火すれば、バッタの大群を抑える術は無いようです。
コロナの影響ここにも
今年バッタの問題を更に悪化させているのは、コロナウイルスの世界的感染です。
バッタの害を抑えるためには、バッタを追跡し、繁殖する前に卵の段階で、薬品により駆除する事が重要です。
一旦孵化してしまうと、駆除は格段に難しくなります。
しかし、今年コロナの影響で、専門家の外国への派遣や化学品の積み出しに大きな影響が出ました。
コロナの影響とバッタの被害のダブルパンチで、アフリカの国々は大きなダメージを受けています。
先進国の多くは、自国のコロナ退治でおおわらわですが、バッタへの国際的な取り組みは急務です。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。