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BBCが伝える中国の大学受験替え玉事件

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普通ではない替え玉事件

中国の受験競争はどれほど厳しいか、噂には聞いていましたが、調べてみると、日本の大学受験とは比べ物にはならないほど過酷なものの様です。英BBCが「How one woman's stolen identity exposed a system fraud?」と題して、興味深い記事を掲載しました。

普通、大学受験の替え玉事件は、本人に変わり優秀な替え玉が受験場に赴くというのが一般的なやり方です。

無論、中国でもこのやり方は非常に例が多く、中国政府はこの替え玉受験を防止するために、「替え玉に関わった人間は、公的な職務に一生就けない、替え玉を立てた受験者は大学受験を3年間受けさせない。」という厳しい罰則を設けています。

しかし、今回の替え玉受験は、上記の一般的な替え玉受験とは全く違いました

BBCは中国の地方出身である一人の女性に起きた事件を下記の様に語ります。

Chenさんに起きた悲劇

農家の娘であるChen Chauxiuさんは、16年前にGaokaoという大学入学統一試験を受験しました。

彼女にとって、Gaokaoで良い成績を取るという事は夢の実現を意味しました。

しかし、彼女は失敗しました。

失意の彼女は、職を転々とした結果、現在の幼稚園教諭に落ち着きました。

最初の受験から16年後の今年、彼女は成人用の大学課程に入学しようと入学手続きを進めました。

そこで、彼女は驚くべき事実に直面します。

何と彼女は既に2004年に大学に入学し、2007年に卒業していたことになっていたのです。

しかし、そこに登録されていた写真は彼女のものではありませんでした。

国営通信社Xinhuaが伝えるところによれば、成り済ました女性の叔父が地方政府の役人であり、彼がその地位を利用して、Chenさんの得点情報を入手したそうです。

Chenさんの得点は546点、成り済ました女性は303点だったそうです。

その女性の父親は、Chenさんが卒業した高校の校長とつるんで、Chenさん宛の大学からの合格通知が投函される前に入手したそうです。

成り済ました女性の親族は、地方の警察長官や山東大学の職員にも手を回して、成り済ましがバレない様に手を打ったそうです。

成り済ました女性の本当の名前は Chen Yanpingだそうですが、既に学位を剥奪され、職も奪われたそうです。

機会均等を保証するはずの入学試験

中国の放送局CCTVのインタビューでChen Chauxiuさんは「あたなは私の人生がどうなるか想像できたのですか。」と怒りを露わにしました。

中国の大多数の若者にとって、このGaokaoは彼らの人生を一変させ、上流への扉を開く唯一の切符なのです。

特に農民の娘として生まれたChenさんにとっては、大学に入れるかどうかは死活的に重要でした。

中国の社会は、少なくとも表面上は機会を均等に与えるということになっています。

この平等を保証するのがGaokaoなのです。そのGaokaoで、今回の様な親や親族の力を利用して不正入試が行われたという事実は、多くの国民を失望させました。

報道の裏に隠されたもの

以上がBBCの要約です。さすが科挙のお国柄ですね。今も昔も試験が人生を決める様です。

このGaokaoは毎年1千万人近い人が受験するマンモス試験です。日本のセンター試験の受験者が50万人強ですので、桁違いですね。

このChenさんのストーリーから、中国という社会は不正が、未だにはびこっており、共産党の子弟しか上層社会の仲間入りができないシステムになっているんだという捉え方もできると思います。

確かにそれは事実だと思います。

しかし、一方で、こういう社会的不正を国営のメディアが取り上げている処は、まだまだ中国も腐りきってはいないとの捉え方もできます。

こんな地方政府の汚職をよくぞ公にしたなと思います。

下手をすれば、国民の批判が中央政府に向きかねない報道だと思います。

うがった見方をすれば、習主席は「一握りの上層部が富を独り占めにし、下層の人間は成り上がるチャンスを与えられていない。」という一般大衆の声に答えるために、この事件を報道し、政府が十分対策をとっていることをアピールする必要があったのかも知れません。

それだけ、一般大衆の不満が鬱積している可能性があります。

それにしても、中国の若者の受験に対する執念はものすごいですね。

この若者の向学心は評価すべきと思います。

勉強しなくなった国は滅びます。

中国は米国と覇権を争うに足る人材を育てようとしているのです。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。