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中国とEUの間に吹き始めたスキマ風

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中国が細心の注意を払うEU

中国は米国と連日激しいバトルを展開していますが、日本を含めた周辺諸国ともことごとくと言って良いほど緊張関係に陥っており、インドとは死傷者が出る様な国境衝突に発展したことはご存知の通りです。

しかし、唯一と言って良いほど中国が気を使っている地域があります。それはEUです。

EUと中国の関係に関して、米Foreign Policyが「欧州はいかにして中国との関係を見直すに至ったか」と題して記事を掲載しましたので、かいつまんでご紹介しましょう。

Foreign Policy記事要約

亀裂が入り始めた中国とEUの関係

EUは、中国との緊密な経済関係を長年追求してきましたが、最近中国が経済、人権両面で強引なアプローチを行った事から、亀裂が生じ始めています。

6月22日に行われたEUと中国の首脳会談共同宣言なしで了しました。

この会議は冷たいものだった様です。

EUは、中国に対して取引方法やビジネスのルールに関して是正を求めてきましたが、今回の会談では何も得るものがありませんでした。

EU委員長ウルスラ ファン デル レイエンは、「中国に対して改善を求めている。さもなくば中国は、最大の貿易パートナーであるEUの厳しい規制に直面するだろう。」と警告しています。

先日、EUは新しい制度を発表しました。国家の行きすぎた補助金制度により、公正な競争が阻まれる事やEUの戦略的に重要な企業が外国企業から買収される事を防止するためのものです。

この制度は相手国を明示していませんが、中国に対するものであることは明白です。

ついこの間までの蜜月関係

この様なEUと中国の関係冷却化はついこの間までの中国とEUの蜜月ぶりを考えれば、信じられません。

この10年間で両者の貿易額は60%も増加し、年間5兆ユーロ(600兆円)を超えました。

EUの一部であった英国は、キャメロン政権の時に、中国に入れ込み、人民元のハブになることまで目指しました。

ヨーロッパの他の地域では、港湾、鉄道、電気通信、電力網への中国の大きな投資が、ギリシャ、イタリア、ポルトガルなどに、大きな投資をもたらし、中国はEU27か国への影響力を増しました。

米国とEUのの違い

中国に対するEUの懸念は、そのほとんどが米国当局者が抱くものと一緒ですが、一つ大きな違いがあります。

EU当局は、ここのところ、中国をパートナーではなく競合先として見る様になってきましたが、トランプ政権とは異なり、中国との離婚までは望んでいません。

「ヨーロッパは中国を懸念しており、対策を講じる緊急性が非常に高い」とオランダの中国専門家Putten氏は語ります。 「しかし、ヨーロッパには、中国がないと未来はないという非常に強い信念があります。」 

欧州が懸念を抱き始めた中国流のやり方

この記事を読みますと、中国に対するEUの見方が最近大きく変化したこと、しかし米国が考えている様なデカップリングまではEUが望んでいないことが分かります。

欧州の貿易において、中国がどの程度重要なのかちょっと調べてみました。

下記のグラフをご覧ください。(出典:Eurostat)

 

いやいや知らない間に中国の存在感すごく増していました。欧州の輸入ではもはやトップに立っています。

しかし、この5年間でEU委員会の中国に対する見方は大きく変わったと言われています。

戦略的に重要視される欧州企業の中国企業による買収は、欧州の安全保障への不安をかき立てました。

中国国内の不公正なビジネス環境が欧州企業を不利に陥れているという認識も急速に広がりを見せています。

中国の大きな問題は、国営企業への行きすぎた支援の問題だけではありません。

先進国企業は中国に進出する場合、国営企業との合弁会社を作らされます。

そして外国企業は中国企業へのノウハウ、著作権の供与を求められるのです。

中国の巨大な市場の魅力の前に、外国企業の多くはこの中国側の要求を呑まざるを得ません。

それだけでは終わりません。

中国側は外国企業の技術にわずかな改良を加えてそれを特許申請します。

そしてこの技術を使って、製品を第三国に輸出するのです。

新幹線の車両技術が、日本企業から現地の中国企業に譲渡され、その技術をベースにした中国産新幹線が現在中国だけではなく、第三国でも走っているのがその良い例です。

米国にハイテクへのアクセスを封じられた場合、中国にとって欧州は更に重要性を増すでしょう。

逆に言えば、欧米の足並みが乱れた場合、中国への圧力は大きく減じることは明らかです。

ここは、自由で公正なビジネス環境が整備される様、中国に対して日米欧が足並みを揃えて対応してもらいたいところです。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございます。