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メルケル首相は中国に何故甘いー自国でも批判の対象に

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メルケル首相の中国贔屓

ドイツのメルケル首相は中国に甘い事で有名です。

これはトランプ大統領嫌いという側面で捉えられるケースも多いのですが、ドイツという欧州の最重要国の舵取りを任されている彼女が、個人的な好き嫌いで外交政策を決定しているはずはありません。

彼女には彼女なりの理由が有るはずです。

この点について英Economist誌が、「Angela Merkel’s soft China stance is challenged at home(メルケル首相の中国に対する甘い姿勢がドイツでも批判の対象に)」と題して記事を出しましたので、ご紹介したいと思います。

Economistの記事要旨

メルケル首相の対中方針と内外の批判

メルケル首相は、ドイツ経済の中国との絆に常に注意を払ってきました。

彼女が首相に就任してから15年の間に、ドイツの中国への輸出はなんと5倍にふくれあがり、1,000億ユーロ(12兆円)に達しようとしています。

これはドイツの国民総生産の3%に相当します。

中国はドイツにとって最大の貿易相手国となり、フォルクスワーゲン、BMW、シーメンスなどのドイツ企業を潤しました。

中国との対立を避けるために、彼女はHuaweiの5Gネットワーク論争に関しても、保守派の側に立つ事を慎重に避けてきました。

香港の最近の問題に関しても、彼女は中国との信頼関係に基づく対話を重視しています。

これに対して、ドイツの政界では与党内部からも批判の声が上がっています。

彼女が所属するキリスト教民主同盟(CDU)のノルベルト レットゲン氏(次期首相候補)は、中国を批判するSNSに対してドイツ外務省が注意喚起した事に対して「自己検閲だ」と非難しました。

与党のパートナーで有る民主社会党の外交政策スポークスマンであるニルス シュミットは、ドイツの中国政策は「時代遅れ」と形容しています。

ドイツ企業の失望と中国企業の台頭

ドイツ企業の多くは、中国が将来変わるだろうと期待して中国に進出して行きました。

現在、5,500ものドイツ企業が中国に生産拠点を持っていますが、その多くは強制的な技術移転や国営企業との合弁を迫られたことから失望しています。

中国の経済特区で働いていたドイツ人専門家は「全てのドイツ企業に中国から引き揚げる事を勧める。そこには公平な競争の場はない。」と語ります。

2019年初頭にドイツ産業連盟が発行したレポートは「中国におけるビジネス慣行は改善されるとの期待が失われた。」と伝えています。

中国におけるドイツ商工会議所のアンケートでは、中国に進出したドイツ企業の内、4分の1は中国から完全に或いは部分的に撤退したいと回答した様です。

更にドイツを驚かせたのは、中国の家電メーカー「美的集団」によるドイツの先端ロボット企業Kuka社の買収(2016年)でした。

この買収はドイツの産業界と政界をして、中国は単なるドイツ製品のお得意さんに留まらない事を認識させました。

中国製造2025」は、中国によるドイツへの明らかな挑戦なのです。

中国は既にドイツに次ぐ世界第2位の機械輸出国となっています。

ドイツはこの新しいライバル出現を前に政策を変更しました。

フランスに倣い、戦略的な企業の外国企業による買収を制限する様になりました。これに伴い、EUも中国を競合先と見なす様になりました。

ドイツの対中依存度

ドイツが中国市場に依存しているという表現は言い過ぎでしょう。

確かに2016年に、中国は米国を抜いてドイツ最大の貿易相手国になりましたが、中国への輸出に直接関与しているドイツ人は人口の2.5%に過ぎないと言われています。

しかし、注意すべきはドイツから中国への輸出品の7割が自動車、機械部品や化学品といった高付加価値製品で有る事です。

関与している企業には大企業のフォルクスワーゲン、ベンツなどが含まれ、彼らはドイツの政治家に大きな影響力を持っています。

フォルクスワーゲンは1985年に中国に進出し、今や33もの工場を持っています。

中国の売り上げは同社全体の4割に達しており、全く無視できない存在です。

これがメルケル首相の中国に対する優柔不断な姿勢に繋がっています。

厳しい米国からの圧力、政府関係者や与党の政治家の強い要請にもかかわらず、彼女はHuawayの5Gシステムへの参入を禁止していません。

駐独中国大使の脅迫もあるのでしょうが、不況と米国との貿易摩擦で、ドイツ経済が低調なこの時期、彼女は中国による独自動車メーカーに対する報復を恐れているのかもしれません。

風向きが変わりつつあるドイツ

 しかし中国を国際システムに組み込もうとの彼女の思いは徐々に時代遅れのものとなりつつある様です。

若い世代の政治家であるJohannes Vogel氏は彼女について「メルケル首相は素晴らしい。しかし彼女の中国への考え方は習主席登場以前のものだ。」と語っています。

ドイツの考え方は、ポンペオ米国務長官が欧州に要求する様な中国とのデカップリングとは違います。

しかし大幅な見直しが対中政策には必要だという声は高まっている様です。

ベルリンのGlobal Public Policy Instituteの Thorsten Benner氏は「5Gの様な重要なインフラにおいては、欧州の能力を育成し、制裁を受けようとしている同盟国と組んで中国に対抗する必要がある。」と主張します

メルケル首相は来年首相府を去ります。ドイツの風向きは変わりつつあります。

日欧の協力の必要性

この記事を読んで、ドイツが中国との経済的結びつきを急速に高めて行った事が改めてよくわかりました。

ドイツの代表的な産業が如何に中国で売り上げを伸ばしたか、下記のグラフご参照ください。(出典:UN  Comtrade, Datastream)

 

特に自動車産業は中国なしでは商売が成り立たないレベルではないかと思います。

しかし、多くのドイツ企業が、中国で苦労していることは事実の様ですし、日本企業が中国で抱えている問題はドイツ企業も同様です。

ドイツと日本は中国市場でライバルの存在ではありますが、不公正な中国の市場環境を是正する上では、両者協力する余地が十分あると思います。

ドイツはいうまでもなくEU最大の国であり、今年はEUの議長国を務めます。

中国は中国市場の魅力を背景に、香港を初めとする様々な問題に対して、口をつぐむ様に圧力をかけてきていますが、これに対しても日本はEUと協力して対抗できるのではと思います。

ドイツを中心としたEUと連携して、中国や米国といった大国に立ち向かうというのが賢明なやり方だと思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございます。