コロナ対策「日本モデル」が海外で評価されない訳
日本でのコロナ死者数が、他国に比べ非常に少ない理由は何なのでしょうか。
過去のコロナ罹患歴、BCG接種等諸説ありますが、どれも決め手にかけます。
そんな中、米誌ニューズウィークで興味深い分析を見つけました。
One Secret of the "Japan Model" (日本モデルの秘密)と題されたこの記事は、日本でコロナ死者数が増えない主因は、老人介護施設における地味なインフルエンザ対策であると結論づけています。
そんな事はないだろうと私も思いました。日本の高齢者施設が特に欧米諸国と比べて優れているとは思えません。
しかし、統計が示す数字はかなり興味深いものがありました。
ニュースウィーク記事の要旨
彼女の論点は次の通りです。
日本では高齢者施設での死者率が他国に比べて圧倒的に低い。集中治療室の数で上回るドイツでさえ39%であるのに対し、日本はたったの14%である。
高齢者施設に入っている人の何%がコロナで亡くなっているかを見るとスペイン6.1%、ドイツ0.4%に対して、日本は0.001%にも満たない。
日本の場合、毎年のインフルエンザ流行に備えて、高齢者施設を実質ロックダウンする慣行があった。
今回のコロナ感染に対しても、2月中には多くの施設で面会禁止、外出禁止措置が取られた。これは欧米に比べて圧倒的に早い。
これらのインフルに対するルーティン化された対策が功を奏したと思われるが、国際的にはこのいわゆる「日本モデル」に関心が低い。
その理由は次の三つだ。
- 政府の専門家会議のメンバーでさえ、対外的に説得力のある説明を行っていない。
- データの公表があまりにも遅く、コロナ関係の国際的データベースの中には、日本を除外しているものもある。
- PCR検査の少なさが、日本のデータの信憑性に疑いをもたれている。
結果だけ見れば成功した「日本モデル」が上記の理由で、国際的に正当に評価されないのは残念だ。
デジタル後進国日本
彼女の指摘する通り、日本は本来であれば、「日本モデル」の優秀さを世界に誇らしげに示すことが出来たはずですが、データがあまりに遅く、しかも情報量が少ないので、外国から信じてもらえなかったと言う訳です。
私が注目したいのは、データ公表があまりに遅いという点です。各保健所で行われたPCR検査の結果を、厚労省なり各都道府県が何故オンタイムで把握できないのか理解に苦しむところです。
未だにファクスを使っているなどとの報道もありましたが、時代遅れも甚だしいですね。
ファクスは極端な例だとは思いますが、デジタル化の遅れは今後、日本にとって致命的な問題を引き起こすと思います。
日本のデジタル化の本質的な問題
デジタル化の遅れについて、先日、甘利税制調査会会長(元規制改革担当大臣)が、テレビで発言していましたが、日本のデジタル化の問題は日本の統治組織がたこつぼ化していて、横の連絡が非常に悪い事だそうです。
特に情報システムを各省庁、各公共団体がてんでバラバラに購入するものものだから、システムとして整合性がない上に、システム同士の互換性がなく、リンクが難しいと言うのです。
この問題の根源は、システムを購入する入札において、唯一考慮されるのが価格である様です。
売り手の方は、買い替えの時に他のメーカーから購入されては困りますので、他社のシステムと整合性がないシステムを作ろうとすると言うのです。
私も営業を長くやっていますので、価格だけが入札の評価基準となれば、入札価格を下げるためには、何でもやります。
システム更新時に他社が入ってこれない様に、他社のシステムとの互換性をなくします。そうしないと元が取れませんからね。
これは売り手が悪いのではなく、価格だけを判断基準にする入札制度そのものが悪いのです。
しかし、政府の入札において、価格以外の性能や実績といったものを評価基準にするのは非常に難しい様です。
価格は高いが、性能が良いから買ったと政府が発表すれば、必ずといって良いほど、不正があるのではないかと野党やマスコミに叩かれます。
これが怖いので、価格を基準に選んでしまった結果、全く互換性のないシステムが国内に乱立すると言う事態に陥った訳です。
待ったなしのデジタル改革
この問題、早急に解決しないと、世界のデジタルトランスフォーメーションの波から置いてきぼりをくらいます。
最近問題になっている国民番号制度もそうです。
あのカードそのものの発想は素晴らしく、先日の国民への10万円給付も、このカードが国民一人一人の銀行口座とリンクされていれば、タイムリーな給付が出来たはずです。
しかし、現状極めて中途半端なカードになっています。
政府が本気でやる気なら、あのカードに全ての行政サービス(運転免許証、健康保険証、年金手帳等)を集約すべきですが、政府の腰が定まっていません。
おそらく各省の縄張り意識や圧力団体の反対があって、一本化ができないのでしょうが、これは政治のリーダーシップでやるべきではないでしょうか。
中国や韓国はこの点では日本より先を進んでいます。
このデジタルトランス改革には必ず抵抗勢力があります。
この改革によって、既得権益を失う団体は、激しく抵抗するでしょう。しかし、ここでひるんでいては、いつまで経っても改革は実現しません。
勇気ある政治家が、日本の将来のために体を張って、この改革を実現してくれることを期待します。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。