開催が危ぶまれる東京オリンピック
東京オリンピックの開催まで一年を切りました。
先日、IOC(国際オリンピック委員会)のバッハ会長は実現に全力を傾注していると語りましたが、実際のところ、本当に開催できるのでしょうか。
海外のメディアは、東京オリンピックの実現可能性をどの様に評価しているのでしょうか。英誌「Economist」が「A year out, few in Japan think Olympics can be held in next year」(一年後、オリンピックを開催できると思っている日本人は、ほとんどいない。)と題して記事を掲載しましたので、内容かいつまんでご紹介しましょう。
Economist記事要約
3月にIOCが東京オリンピックの一年延期を決めた際、日本国民の多くはこの決定を高く評価しました。
その時点で、大会を開催するために必要な2兆7千億円のほとんどを既に出費していました。
しかし数ヶ月後、国民の期待は萎んでいます。下のグラフご覧ください。(出典:Economist)
7月19日に行われたアンケートによれば、来年開催してほしいと回答した人は何と24%に激減し、もう一年先に延期してほしい人が36%、キャンセルしてほしい人は34%にも増加したのです。
来年オリンピックが開催可能ですかとの質問に「出来る」と答えた人は何と17%しかいませんでした。
コロナ感染の第二波がくる前に、既に日本人の悲観的な見方は拡がりを見せていました。
6月末の時点では、日本は100万人あたりの感染者数で韓国より良い数字を出していましたが、その時点でオリンピック開催にネガティブな見方をする人が増えていました。
7月に入って感染第二波が東京だけでなく地方にも拡がりましたので、悲観的な見方をする人が更に増えているでしょう。
大会中止は、大金を既に投じているIOCにとっても東京にとっても壊滅的です。
彼らは国民がギブアップしようが、開催を主張するでしょう。
一方、ロンドンのブックメーカー(賭け屋)は掛け率を未だ発表していませんが、かなり厳しい見方をするでしょう。
今後の展望
今年の初めにコロナウイルスが日本で流行り始めた頃、ロンドンが代わりに受け皿になると言う話が出ました。
当時ロンドン市長選が行われていましたが、候補者の中には、公約として東京に変わってオリンピックを開催すると訴える人がいたのです。
今となっては笑い話ですが、ロンドンの人たちはは、何時でもオリンピックの様なビッグイベントの開催を引き受けると言う気持ちを持っています。
そういう気概を持っている人たちにしてみると、今回の日本の世論調査の結果は意外だったと思います。
日本人は、こういう世論調査が行われた際に、感情に流されず、理性的な回答を行おうとする傾向がある様です。
匿名の調査であっても、「コロナの流行なんて関係ない、オリンピックが大事だ」となかなか言わないですし、オリンピックに人が集まって、感染が広がるのが心配だと言う風に答える人が多いのではないでしょうか。
しかし、この世論調査の結果がそのままIOCの決定に反映されるかと言うと、そうではないと思います。
私は次の理由から、IOCは、そう簡単に東京オリンピックをキャンセル出来ないと思います。
- IOCの収入の大部分は米国のテレビ局からの放映権収入であり、大会をキャンセルすると、大損害となります。
- コロナの様な感染症は、これからも起こりえます。日本でもし今回できないとなると、感染症対策が日本より劣る国での開催がより困難となります。そもそも大金を投じて大会を開催しようとする国が激減します。
- 北京で行われる冬季五輪は、来年の東京五輪のたった半年後です。東京がキャンセルされると北京もキャンセルの可能性が高くなります。
オリンピックが過去に直面した試練
オリンピックの過去を振り返ると、感染症以外にも国際政治や組織的なドーピングによって翻弄されてきました。
近いところで言えば、ソ連のアフガニスタン侵攻によって、1980年のモスクワオリンピックが西側諸国のボイコットに合いました。
当時オリンピック参加が決まっていた選手たちは、泣いてJOC幹部に翻意を迫りましたが、決定は覆らず、日本選手団は参加しませんでした。
当時マラソンで連戦連勝だった瀬古選手は、4年後のロサンゼルス大会に参加しましたが、ピークを過ぎていたため惨敗しました。
スポーツ選手の寿命は短く、4年と言う月日は彼らにとっては絶望的に長いのです。
彼らが血の滲むような練習を積み重ねて、オリンピックに出てくる事を知っているオリンピックの関係者は、そう簡単に大会を中止にはできないと思います。
東京にとっても、もし今回キャンセルになれば、第二次世界大戦直前の1940年東京大会に続き、2回目の中止となり、不運な都市とのレッテルを貼られる事になります。
私の推測では、IOCにとっても日本(東京)にとっても、中止という選択肢は悪夢でしかありませんので、何とかして実現しようとする筈です。
現在日本のプロスポーツでで行われている様な、観客を大幅に絞ったやり方が採用されると思いますが、様々な対策を講じる事で、感染症に負けない人類の姿を東京で見せようとするのではと推測します。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。