「GAFA」(Google, Apple, Facebook, Amazon)は、もはや聴きなれた言葉ですが、彼らの成長はコロナ感染拡大の真っ最中も止まりません。
この四社の時価総額合計は、東証一部の会社全ての時価総額合計を上回りました。
Googleは多少広告収入が減少した様ですが、アップルは直近の四半期で11%も増収しましたし、アマゾンに至っては同じ時期に純利益が倍増したそうです。
この時期米国のGDPは32.9%も減少しているのですから、GAFAの好調ぶりが際立ちます。
アマゾンのジェフ ベゾス社長の個人資産はうなぎ上りで、圧倒的に世界一の富豪となりました。
我が世の春を謳歌するGAFAに対しては、日本だけでなく欧米でも風当たりが強い様です。
EUはこれらデジタル界の巨人に対して、デジタル税を課すことを検討していますし、米国でも巨大になりすぎたGAFAを公正取引の観点から解体分割しようという動きがあります。
この点に関して米紙ウォールストリートジャーナルが記事を出しましたので、かいつまんでご紹介したいと思います。
ウォールストリートジャーナル記事の要約
Big Tech’s Antitrust Paradoxe
世界中で米国の巨大IT企業に対する逆風は強さを増している様です。
しかし、この問題を公正取引の観点から語る時、ユーザーの利益というキーワードを忘れてはならないと思います。
今週水曜日に下院で公聴会が開かれ、GAFA四社の社長が出席しました。
彼らに対する議会の敵意があらわになりました。
民主党は、GAFAの事をあまりに巨大で労働組合を持たない資本家の成功例とみなしています。
一方、共和党はIT企業が左傾化しており、GoogleやTwitterはアルゴリズムを使って保守的なコンテンツを冷遇しているとして嫌っています。
この公聴会では、IT大手4社の支配的地位が「小規模事業者や製造業、米経済のダイナミズムを破壊している」と批判されましたが、 それを裏付ける証拠はそれほど強力ではありません。
確かにグーグルのオンライン広告のように、個別のケースではIT企業が市場支配力を乱用しているかもしれません。
しかし、公聴会で明らかになったように、各社が自身の立場を擁護するだけの十分な証拠があります。
まず挙げるべき事実は、4社がし烈な競争に直面しており、ほとんどの場合、お互いがライバルだという点です。
例えば、アマゾンは小売業界で無敵の王者と目されていますが、同社が世界小売市場に占めるシェアは約1%にすぎず、米国でも4%以下です。
ウォルマートの方が規模は大きく、同社が始めたオンライン事業は急成長しています。
クラウド事業では、アマゾンはマイクロソフトやグーグル、中国アリババグループなどとの競争に直面しています。
フェイスブックは「スナップチャット」や「TikTok」にユーザーを奪われています。
またフェイスブックは「インスタグラム」買収を巡って非難を浴びていますが、仮にインスタグラムが独立の存在であったなら、フェイスブックのライバルとなっていたかどうかわかりません。
アマゾンが成功した一因は、小規模事業者の為にマーケットプレースを提供している事であり、彼らを排除したからではありません。
約1700万社の中小事業者がアマゾンを通じて商品を販売しており、コロナ感染の影響で店舗を閉めざるを得なかった多くの事業者にとって命綱を提供しています。
巨大IT企業が活躍する国際市場では中国勢が台頭しています。
もし巨大IT企業を解体すれば、バイトダンスやアリババ、バイドゥ、テンセントなどを喜ばせることになります。
中国の世界経済への影響力拡大に頭を悩ませる政治家たちは、これら米企業を解体する前に、もう一度よく考えるべきです。
巨大IT企業はAIに積極的に投資し、世界市場で競争できる企業です。
政治家は反トラスト法を完全な道具のように語りますがが、度々失敗を犯しています。
典型的な例は、アマゾンがオバマ政権を説得し、アップルの電子書籍事業に対する反トラスト訴訟を起こすよう仕向けたことです。
アップルが敗訴した結果、アマゾンの電子書籍における支配力が一段と強固になりました。
この例の様に政府の介入によってむしろ独占が強化されることは往々にして起きます。
一方、市場はいつも独占に対抗する最善の仕事をやってくれます。
これ迄、反トラスト法が、企業の規模ではなく、消費者への害悪を基準にしてきたのは正しい事です。
本当に害悪があることを証明する事は、巨大IT企業を批判する者の責任です。
巨大IT企業の功罪
私も基本的にこの社説に賛成です。
何よりもユーザーの利益を最重要視して、この問題を解決すべきと思います。
巨大IT企業は、熾烈な競争の中で勝ち抜いてきただけに、ユーザー目線でサービスが提供されています。
アマゾンが設立直後に、電子書籍サービスを使い始めましたが、あっという間に電子商取引そしてクラウドサービスへと事業を拡大して行きました。
その間に絶え間ない進化をを遂げて行っています。
彼らがナンバーワンになったのは、顧客第一をモットーにサービス向上を怠らなかった為です。
既存の小売業が廃れたからアマゾンは悪者だという議論は、本質を見誤っていると思います。
ネットでのビジネスが拡大するのは時代の必然です。
唯一、懸念点があるとすると、巨大IT企業が悪意を持てば、政治的に国民をコントロールできる点です。
ネットという世界は、シェアが大きいものが支配力を強化しやすい様に出来ています。
極めて新規参入が難しい分野です。
例えばGoogleのインターネット検索分野におけるシェアは92%と圧倒的です。これに対抗するのは至難の技です。
Googleのこの圧倒的立場を利用すれば、検索した際に上位に表示される様にアルゴリズムをコントロールすることは技術的に可能です。
最近Twitterやフェイスブックでも問題になっていますが、巨大IT企業が政治的バイアスを持った際に、その影響力は大きいと思います。
皆さんもお気づきと思いますが、さりげなく配信されてくるお勧めの記事はIT企業のアルゴリズムによって決められています。
この点に関しては、今後も注意を払っていくべきと思います。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。