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カルロス ゴーン氏を追放した日産が失ったもの

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急速な業績悪化に苦しむ日産

日産の業績が急速に悪化しています。日産のみならずアライアンスを組んでいるルノーと三菱自動車の業績も同様に悪化しました。第一四半期(4-6月)の赤字幅は日産2,855億円、三菱自動車1,761億円と発表されています。

この日仏連合をついこの間まで率いていたカルロス ゴーン氏が、一昨年11月に羽田空港で逮捕され、その後昨年末にレバノンに逃亡したことは記憶に新しい処です。

日本のマスコミの報道では、「ゴーン元社長が会社を食い物にした上に、拡張路線を突っ走った為に、日産がその後遺症で苦しんでいる。」という論調がもっぱらです。

私はこの論調に違和感を感じています。

日産の経営陣が、ゴーン氏に責任を転嫁しているのではないでしょうか。

日産没落の原因を作ったゴーン氏追放劇

他の自動車メーカーもコロナの影響を受けて業績は悪化していますが、日産ほどではありません。

私はゴーン会長を追放した事が、日産の没落の直接の原因ではないかと思っています。

こんな事を言えば、読者の皆さんから、ゴーン氏は10億円を超える高給を得て、会社を私物化したのではないかとのお叱りを受けるかも知れませんが、ゴーン氏は倒産しかけていた日産をV字回復させ、2017年には日仏連合を世界最大の自動車グループに押し上げたのですから、そんじょそこらの経営者とは全く価値が違います。

オバマ大統領やプーチン大統領からも自動車産業の立て直しを依頼されるほどの人材ですので、10億円という日産の年収はむしろ国際的に見れば安いと言えるのではないでしょうか。

 

ゴーン氏がその地位を利用して贅沢三昧した事は容易に想像できます。

彼はレバノン人ですから、会社のルールが許す限り、社費を使ったと思います。

彼に日本人の様な謙譲の美徳がない事は事実です。

しかし、彼が逮捕された最初の容疑は、些細な税金未払いに関する物でした。

 

ゴーン氏の逮捕劇は、明らかに彼を会社から追放する事を目的とした社内クーデターだったと思います。

安倍首相がいみじくもコメントした様に、この問題は本来日産社内で解決すべき物だったのです。

日産の西川元社長及びその一派は、この社内クーデターを司直の手を借りてまで実行しました。

 

私は、ゴーン氏が逮捕された直後から、西川社長のやり方に疑問を感じていました。

そもそもゴーン氏は日産が倒産しかけた1999年にルノーより派遣され、その後見事にV字回復を実現させたいわば日産にとって恩人の様な人です。

様々な内部の問題はあったのでしょうが、騙し討ちの様な形でゴーン氏を社長から追い払ったその手法は、恩を仇で返したものではなかったでしょうか。

追放後の青写真を持たなかった西川社長

更に深刻な問題は、西川社長にはクーデター後の青写真が何もなかった事でした。

体よくゴーン氏を追い払ったまでは良かったのですが、その後日産のリーダーとなった西川社長時代、日産の業績は低迷します。

ゴーン氏が逮捕される直前の2018年11月の日産の株価は、1,020円前後でした。

ところが、西川氏が社長を辞職する直前の2019年9月の終値は674円と、34%も下落しています。

企業価値として、なんと約1兆4千億円も毀損しています。(今日2020年8月3日の株価は368円台と更に下落しています。)

株価だけではありません。2019年第一四半期(4-6月)の売り上げは、前年同期比12.7%減で、トヨタ3.8%増、ホンダ0.7%減と比べて、一人負けの状況と言えますし、利益に至っては、前年同時期比99%減となっています。

その上、西川社長が在任中昨年7月には、2023年までに日産グループの1割にあたる1万2,500人の削減も発表しました。

こんな状況を招いたのはゴーン氏放逐のクーデターを起こした西川社長の責任と言うべきではないでしょうか。(おまけに西川社長は報酬を4,700万円も余計に貰っていたと言う疑惑で引責辞任しました。)

トップの重要性

たかが社長の首を変えるだけでそんなに変わる物なのか、ゴーン社長を過大評価しているのではとの反論もあろうかと思います。

しかし、会社のトップというのは、自動車業界の様に直接消費者と向き合っている業界の場合、非常に重要と思います。

テスラという米国の自動車メーカーの時価総額がトヨタを上回ったと言うニュースをお聞きになったと思います。

テスラの年間生産台数はたかが36万台を少し超えた程度です。一方、トヨタは一千万台を超える生産量を誇っています。

何故これだけの株式価値を持ったかと言えば、テスラの社長イーロン マスクの存在があるからです。

彼がいなければ、テスラの価値は半減するでしょう。

ゴーン氏にはマスク氏に匹敵するカリスマがありました。

彼なら日仏連合を勝ち組に導いてくれるのではとの投資家の期待があったはずです。

そんな期待を西川氏一派の社内クーデターは粉々に砕いてしまいました。

もしゴーン氏が残っていれば

日産は舵のない筏の如くレッドオーシャンを漂流しています。

自動車業界は現在100年に一度と言われるパラダイムシフトの真っ只中で、強力なリーダーシップが無ければ、この荒波には立ち向かえません。

もしゴーン氏が日産に残っていれば、彼はこの難局に立ち向かっていたはずです。

彼は自ら「もし逮捕されていなければ、フィアット、クライスラーグループとのアライアンスが実現し、圧倒的に世界一のグループになっていた。」と語っていますが、彼の国際的なネットワークをもってすれば、それも可能だったでしょう。

またテスラの向こうを張って、日産の最大の長所である電気自動車の分野で世界を驚かす様な新企画を打ち出せたかも知れません。

 

日産はゴーン氏の代わりを早急に見つける必要がありますが、羽田の逮捕劇を見た一線級の外人経営者は日本に来る事を躊躇するでしょう。

これも西川社長一派が起こした社内クーデターの負の産物です。

 

一方、ゴーン氏は今後どうするのでしょうか。彼の不屈の闘志は老いても盛んと見ています。

彼が現在居住するレバノンは、今年財政破綻を起こしましたが、彼が閣僚としてレバノンの財政再建プロジェクトに関与するなんて事が実現すると面白いですね。

Cost Cutterと異名を取る同氏が凄腕を発揮すれば、レバノンも変わるかも知れません。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。