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原爆は日本人の命を救ったのか - 米国研究者のあまりに冷徹な分析

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原爆ドームの思い出

真夏のこの時期になりますと、原爆の事を思い出します。

広島で幼少期を過ごしたので、原爆ドームは身近な存在でした。

自宅の裏山にあたる比治山には、アメリカが建てたかまぼこ型の原爆調査委員会の建物があったのを思い出します。

原爆記念館は今も多くの訪問者に、原爆が如何に悲惨な結果をもたらしたかを教えてくれています。

そんな中、米紙ウォールストリートジャーナルが、日本人にとっては看過できない記事を掲載しました。

そのタイトルは「The Atomic Bombs Saved Millions - including Japanese 」(原爆は数百万人の命を救った。日本人も含めて)というものです。

著者はJohn C Hopkinsという方で、原爆の開発を目的として設立されたロスアラモス国立研究所の幹部だったそうです。

この記事を、かいつまんでご紹介したいと思います。

ウォールストリートジャーナルの記事要約

広島と長崎に原子爆弾が落とされたことは、強い嫌悪感と哀悼の念をもって受け止められている。しかし、原爆を使用していなければ、はるかに悲惨な結果になっていただろう。

2つの原爆投下による日本人の死者数は推計12万9千~22万6千人。米国政府による1945年7月の報告書は、日本の本土に侵攻した場合の日本人死者数を500万~1000万人と見積もっていた。

欧州のノルマンディー上陸作戦には、連合軍兵士15万6千人が参加したが、日本の上陸作戦には、それを遥かに上回る76万6千人が送り込まれる予定だった。

米軍は、日本兵35万人が九州で防衛に当たるだろうと予測したが、戦後九州で動員解除した日本兵は78万人を上回った。

ノルマンディー作戦の時、ドイツ兵と連合軍側の兵員比は1:3だったが、九州上陸作戦の場合、米軍兵士の数を日本兵が上回っていた。

米国政府は日本軍の離島での激しい戦闘を見て、日本上陸の場合、米軍に40万人から80万人の犠牲者が出ることを予測した。(米軍の欧州、太平洋戦線での全ての死者は40万人だった。)

ソ連は満州から南下を始め、日本侵攻を企図していた。

もし彼らが日本を侵攻していれば、間違いなく、日本北部は共産圏となり、北日本は東ドイツや北朝鮮の人々の様に何十年も苦しんでいたことだろう。

こうした事は全て回避された。日本は1945年の冬、深刻な飢饉に襲われたが、米国の食糧援助で救われた。

原爆投下で日本人の命が失われたことは痛ましい。だが、原爆使用は、原爆の犠牲をはるかに上回る苦痛や死を防ぐことができた。米国はましな選択をしたのだ

この記事を読んで思う事

確かに、本土決戦となった場合、多くの国民の命が失われたと思います。

また、ソ連が日ソ不可侵条約を破って満州から日本を目指して、南下して来ましたので、米国が日本侵攻に手間取っていたら、北日本はソ連の支配下になっていた可能性が十分あります。

しかし、この記事には納得の行かない点があります。

原爆は米軍兵士のみならず、日本人の多くの生命も救ったのだから、その使用は正当化できるし、日本人も批判するのではなく、むしろありがたく思えと言っている様に聞こえるのです。

そこには原爆の犠牲者への哀悼の意が感じられず、無辜の市民を殺してしまったとの後悔の念が感じられません。

 

何故、広島や長崎の市民があれほど悲惨な目に逢わないといけなかったのでしょうか。

もっと他に方法はなかったのか疑問が残ります。例えば、東京湾の沖合で原爆を爆発させる示威行為によって、終戦に持ち込むなどの手は無かったのでしょうか。(当時の日本は一億玉砕などと言ってましたから、日本側も簡単には降伏しなかったとは思いますが。)

そもそもアウシュビッツの大量虐殺など、日本以上に人道上ひどい事をやっていたナチスドイツに対しては核兵器を使用せず、日本だけに使ったことも納得がいきません。

米国には、「あの局面では更なる犠牲者の拡大を防ぐために、原爆投下は窮余の一手であったが、犠牲者の方々には本当に申し訳ない事をした。」と謝罪の姿勢を示して欲しいと思います。

 

 

米国は広島、長崎への原爆投下以降も、何度か原爆を使いたい誘惑に駆られた局面があったと思います。

朝鮮戦争ではマッカーサーが使用を進言しましたが、トルーマン大統領が却下しました。

アメリカの統治者が核のボタンを押す事をためらったのは、やはり広島、長崎の悲惨な結果を彼らが思い浮かべたからではないでしょうか。

もちろん、相手(共産圏)側の核の報復を恐れたこともあったでしょうが、市民を大量に殺害する兵器の恐ろしさについて、彼らが広島、長崎の原爆使用を通じて実感した事は大きかったと思います。

私は核兵器廃絶論者ではありません。北朝鮮の様な国が核を保有している以上、核を廃絶させると言うのは現実的ではありません。

世界中のリーダーたちが広島、長崎を訪れ、核が如何に悲惨なものか実感してくれる事を期待したいものです。

核のボタンを預かる彼らが、広島、長崎のことをが知っているかどうかは大きな意味があると思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。