大統領選での不正
ベラルーシという国ご存知ですか。
旧ソ連から独立した17か国の多くを訪問した事がある私も、この国は未だ足を踏み入れた事がありません。
日本人には馴染みがない国ですが、最近欧州のメディアで取り上げられる機会が増えました。今回は大統領選の不正が話題となりました。
この国のルカシェンコ大統領は欧州で最も長く政権を維持しているリーダーで、なんと26年もその座に居座っています。
政権を奪取したのが1994年、ベラルーシが旧ソ連から別れて独立したのが1991年ですから、独立後の混乱に乗じて大統領になってからというもの、政権を誰にも手渡していないのです。
これだけ長期政権が続くと、必ず膿が出てきます。
今回もただの大統領選であれば、新聞に取り上げられることもなかったのですが、かなり不正があった模様です。
ベラルーシ政府の発表によれば、ルカシェンコ大統領は得票率80%で10%しか取れなかったチハノフスカヤ候補を下し、六選を果たしたことになっていますが、集計で不正が行われたと国民が反発し、国内各所で抗議デモが発生している様です。
この国では、大統領選に対立候補として出馬するのも命がけの様で、チハノフスカヤ候補は大統領選後、隣国のリトアニアに脱出しています。
前回大統領に出馬した対立候補が収監された事もあり、危険を感じたそうです。
そもそも彼女の出馬も、ご主人が政府批判をした事から逮捕されたことがきっかけだったそうで、この国では政治的自由がないことが見て取れます。
欧州最後の独裁者と言われるルカシェンコ大統領はロシア、中国やイラン、ベネズエラといった国々にすり寄って、急場を凌いでいる様ですが、旧共産圏のリーダーたち、特にルーマニアのチャウシェスク大統領の末期を見ている様な気がします。
しかし、そう簡単に同大統領が失脚しそうにないのは、ロシアの支援があるからです。
ロシアという国は歴史的に、周りに衛星国を配する事を安全保障の基本としてきました。
ベラルーシはポーランドがNATOのメンバーとなった今、ロシアにとっては重要な盾になっている訳で、西側の影響下に入ってもらうのはまずいのです。
万一、この国に西側に近い民主政権が誕生しようものなら、ウクライナと同じ様にロシアが軍事介入してくる可能性があります。
ベラルーシの歴史 タタールのくびき
ベラルーシは東はロシア西はポーランド、北はラトビア、リトアニアに接し、南はウクライナに囲まれた内陸国です。
少し、ベラルーシの歴史を振り返ってみましょう。
この地域は13世紀から16世紀にかけてモンゴルの支配を受けました。
モンゴルの英雄ジンギスカーンの長子ジョチは、今のカザフスタンからベラルーシにまたがる広大なジョチウルス(日本の歴史の教科書ではキプチャク汗国)という国を作りましたが、ベラルーシはその東北部に位置し、モンゴルが中国の方角を色で表す五行思想の影響を受けた為、白ロシア(東のルーシ)と呼ばれたそうです。
モンゴルの欧州遠征は前述のジョチの長子バトゥによって行われましたが、連戦連勝したモンゴル軍は今のロシア、ウクライナを突破し、ポーランドまで連戦連勝の勢いで進軍しました。
この時、欧州遠征の指揮を執っていたバトゥは、第二代皇帝オゴダイの死去の報を受け、自分に皇帝後継の目があることから、西進をやめモンゴルに引き返しました。
もしオゴダイの死去が遅ければ、欧州全域がモンゴルに支配されていたかも知れません。歴史に「もし」はありませんが、ほんのちょっとした運が世界を大きく変えるんだなと改めて思います。
旧ソ連から1991年に独立したベラルーシは当初、市場経済導入を図りましたが、1994年に大統領に当選したルカシェンコ大統領が旧ソ連流の社会主義を採用し、国営企業中心の経済運営を行ってきています。
欧米は欧州最後の独裁国家と同政権を批判し、米国は経済制裁を課した事から、2005年より事実上国交を断絶しています。
ベラルーシにまつわる5つの事実
この国、日本にはあまり馴染みがありませんが、英国放送局BBCがこの国に関連する「知られていない5つの事」と題して記事を掲載しました。その5つの事とは次の通りです。
第二次世界大戦で人口の25%以上を失った
この国は独露戦の主戦場となり、当時の人口約900万人の内、160万人の民間人と60万人の兵士が亡くなったと伝えられます。米国の第二次世界大戦戦死者総数が約40万人ですからベラルーシの犠牲者の多さがわかります。
ルカシェンコ大統領は在任期間が欧州最長の国家元首
同大統領は在任期間が26年に達しているが、西側諸国から独裁と批判を受けています。同大統領は野党の集会に参加するものはテロリストと見なすと発言しています。
ケネディ大統領暗殺事件、実行犯のオズワルド氏は首都ミンスクに住んでいた
観光ビザでベラルーシを訪れたオズワルド氏は、手首を切って自殺を企てた。ソ連政府は彼に滞在許可を与え、彼はベラルーシの工場で働いていたそうです。
チェルノブイリ原発事故、放射性降下物の7割がベラルーシに降り注いだ
チェルノブイリ原発はウクライナにありますが、風の影響で放射性降下物の殆どはベラルーシに落ちました。
テニスプレーヤーのアザレンカは同国出身
全豪で二度優勝したアザレンカはベラルーシ随一のテニス選手です。
もう一つ付け加えるとすれば、アザレンカより有名なマリア シャラポワ選手の両親はベラルーシ出身です。彼女はロシア国籍ですが、ベラルーシの血が流れているでしょう。
最後まで読んで頂き、ありがとうございました。