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バッタが群れを作るのはフェロモンの働きだったー英誌エコノミストが伝える大発見

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バッタの害を抑える画期的な方法見つかる

今年は蝗害(イナゴの害と漢字では書きますが、実際はバッタ科の昆虫が引き起こす害)の被害が各地で報告されています。

この話題については、私のブログでも何度か取り上げました。

 

www.miyoshin.co.jp

 

東アフリカで発生した砂漠とびバッタの大群の一部は西へ向かい、東へ向かった大群は、イエメンからサウジを横断し、バキスタン、インドで猛威を振るっています。

これとは別に中国でも大群の発生が報告されており、水害もあいまって食料供給に問題が生じる事を恐れた中国政府は、食べ残し禁止令を全土に出す程の影響が生じている様です。

そんな中、英誌Economistに興味深い記事が掲載されました。Why locus swarm(何故バッタは群れをなすのか)と題された記事の内容下記の通りご紹介したいと思います。

英誌Economist記事内容

世界の一部の地域では、2020年に発生した疫病はコロナウイルスだけではありません。

アジアと東アフリカの一部では、バッタの群れが畑を貪り尽くしています。

インドとパキスタンでの群れは、四半世紀の間で最大であり、ケニアにおける群れは70年間で最も多いとみられています。

ケニア北部の1つの群れは、長さ40 km、幅60 kmに達しました。

 

バッタは通常、彼らが生まれた場所から遠く離れていないところで一生を終える孤独な生き物です。

しかし、適切な状況、すなわち大雨とそれに続く植物の繁殖下では、それらは「群生」となる可能性があります。

それが起こると、昆虫は色を変えて、一日に100km以上飛ぶことができる貪欲な群れに変身します。

 

学術誌「Nature」で発表された論文で、北京動物学研究所のXiaojiao Guo氏ら研究グループは、バッタの変身を推進する生化学的メカニズムに注目しています。

彼らは、昆虫を互いに引き付け合い、群れを作らせるフェロモンを特定したと考えています。

Guo博士らは、最も蔓延している種のバッタの体と糞から35種類の化学物質を収集しました。

それらの内6つは、孤独相よりも群生相のバッタの間で多くある事がわかりました。

テストしたところ、群生相のバッタは、4-ビニルアニソール(4va)と呼ばれる化学物質の1つだけに強く引き付けられました。

その魅力は、未熟なイナゴと成熟したイナゴの両方に、そしてオスとメスの両方に強いものでした。

そして、この物質は、孤独相のバッタにも、群生相のバッタに対してと同じくらい魅力的であるとわかりました。

 

科学者たちは、群がることが過密への対応であることをすでに知っており、Guo博士たちは、4vaの生産がバッタの密度と共に増加することを発見しました。

興味深いことに、個体数が4から5に達した時に物質の濃度が増加し始めました。

さらなる研究により、昆虫の触角上に、この化合物に敏感な匂い受容体が特定されました。

その受容体の原因となる遺伝子を無効にすると、4vaが特に興味を示さなかったバッタが生まれました。

そして、これら全ての研究所における実験結果は、戸外でのトライアルで再確認されました。

4vaを付着したワナは、それがないワナよりもはるかに多くのバッタを引き付けました。

 

Guo博士の研究結果は、学術的な関心以上のものになる可能性があります。

人間はバッタの群れに対処するために殺虫剤から火炎放射器まであらゆるものを試しましたが、結果はいまいちです。

フェロモンは新しい観点からの駆除を可能にします。

4vaの合成バージョンは、ワナの餌付けに使用できます。

受容体を遮断する化学物質を開発できれば、昆虫は受容体に関心を示さなくなる可能性があります。

 

最初のハードルは、研究結果がどれだけ広く適用できるかでしょう。

インドとアフリカを襲う昆虫は、Guo博士が研究したものとは異なる種です。

しかし、2つの昆虫の感覚装置は似ています。

4vaがすべてのバッタが理解できる言語であることが判明した場合、それは彼らの社交的な生活を放棄させ、平和な孤独の生活に戻るように説得するのを助けるかもしれません。

人類を蝗害から救う大発見の可能性も

通常の状態のバッタは孤独相と呼ばれ、群れを作ろうともしませんが、何かの理由で大量発生すると、彼らは群生相と呼ばれ、個体も大きく、色も変わり、繁殖力も急激に強くなることが知られています。

孤独相から群生相に変わるきっかけが、中国の科学者たちが発見したフェロモンの働きであるとすれば、これはバッタ退治に大きな変化をもたらしそうです。

 

たかが昆虫とバカにしてはいけない様です。

過去に観察された最大の群れは、1870年代に米国ネブラスカ州で発見された群れで、その大きさは幅160 km、長さ500 kmと伝えられています。

これは日本の本州の全面積の3分の1にあたります。信じられない大きさですね。

 

今回の研究結果は、英国の学術誌「Nature」で発表されました。

この雑誌は1869年に創刊された世界で最も権威のある総合学術誌の一つです。

この中国人科学者による研究に国際的な注目が集まっていることがうかがえます。

彼らの研究成果がバッタの駆除に応用され、太古の昔から人類を苦しめてきたバッタの害が軽減される事を期待したいと思います。

 

最後まで読んで頂き、有難うございました。