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イスタンブール条約に揺れるトルコ - 女性人権を守る闘い

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イスタンブール条約って何

今日は久しぶりにトルコの記事をご紹介しましょう。

イスタンブール条約というものご存知でしょうか。

これは女性に対する暴力や家庭内暴力の撲滅を目的とした初の欧州条約です。

署名された場所の名前をとって、イスタンブール条約(Istanbul Convention)と名付けられていますが、2011年5月に独仏を含めた欧州の45か国が署名し、34か国が批准し、2014年8月に発効しました。

トルコは最初に批准した国の一つです。

 

えー。何故トルコが欧州の条約に参加するの。

トルコってイスラム系の国だから、女性の社会進出は、欧州に比べて相当遅れているんじゃないの。

 

という声が聞こえてきそうですが、トルコはEU加盟に向けて2005年から交渉を開始しており、今も続いています。

イスタンブール条約が署名された2011年頃は、EU加盟交渉が最も盛り上がりを見せた時期でした。

 

女性の社会進出に関しては、トルコは過去に女性の首相も出ていますし、日本に比べれば遥かに女性が社会で活躍しています。

 

以前、トルコの大会社のオーナーに会った際に、「お前の会社は男ばっかり会議に出てくるなあ。女性はいないのか。」と聞かれて、「役員に女性は一人もいない。部長もほとんどいない。」と答えたら笑われました。

その会社の役員には多くの女性が含まれていました。

イスラム教徒が多い国だからといって、女性が社会進出しないわけではありません。

ただイスラム教の戒律を盾に女性を社会に進出させない保守的な国は確かにあります。

サウジアラビアなどは、女性は家にいるものだという考え方が普及しており、女性は買い物に行くことさえ容易では無い様です。

女性の運転免許証取得がニュースになる様な国ですから、女性にとっては息がつまりそうですね。

トルコはそういう国ではありません。

しかし、そういうトルコでも保守系の人は一定数存在しており、彼らは「女性の権利を過度に守るのは、トルコの伝統的な家族の価値観を失わせる。」として女性人権擁護に反対している様です。

 

イスタンブール条約を巡るトルコ政府の最近の動きに関して、トルコ紙「Hürriyet」が次の様に伝えています。

「Hürriyet」記事要約

トルコの与党である公正発展党(AKP)はイスタンブール条約に関して、全ての婦人団体の意見を聞く用意があると発表しました。

エルドアン大統領も出席した8月18日のAKP協議会の後、AKPの広報担当は「イスタンブール条約に関して検討を行っています。この条約に賛成、反対双方の意見を聴取しています。我々にとって重要なことは、女性の権利を守ることと家族の価値観を強化する事を矛盾させない事です。」と語りました。

 

AKPは、女性に対する暴力に関する国際条約であるイスタンブール国際条約が家族の価値観を毀損してているとする保守的な宗教団体からの批判にさらされてきました。

彼らは、条約がトルコの文化的および社会的規範を「害する」上に、LGBTの権利を促進すると主張しています。

 

一方、AKPと繋がりを持つ保守的なものを含め婦人団体は、イスタンブール条約が女性に対する暴力をなくすため政府に働きかけるための主要な手段であるとして擁護しています。

イスタンブール条約からトルコ離脱の恐れ

AKPはHurriyet紙が伝える様に、保守的な層からの圧力を受けて、イスタンブール条約からの離脱を検討している様ですが、ここは慎重に対応してもらいたいと思います。

最近のAKPは、政権を組んでいるMHP(愛国行動者党)にかなり影響されていると思います。

MHPは党名の通り、愛国主義を旗印に掲げている政党で、右翼と言っても良いほど保守的な党であり、国民の愛国心を煽っています。

国を愛するという事はは重要な事で、私も日本を愛する愛国者ですが、度が過ぎると、唯我独尊、排外主義、マイノリティー排斥に繋がるリスクがあります。

このMHPは愛国主義を振りかざし、EUとの加盟交渉に反対し、クルド人との融和を妨げてきました。

AKPは、MHPとの連立を組んでからというもの、国会で8%しか議席を持っていないMHPに振り回されている様な気がします。

イスタンブール条約に関しては、是非正しい判断を行ってもらいたいと思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。