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イスラエルと国交樹立したUAE(アラブ首長国連邦)の知られざる実力

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中東政治に一石を投じたUAE

UAEとイスラエルの国交樹立に関するニュースは、日本のマスコミではそれほど大きく取り上げられませんでしたが、海外のマスコミではいずれもトップニュースとして取り上げられました。

それだけ、インパクトが大きかったという事でしょう。

今回の取り決めは、中東の勢力図を180度変えるだけでなく、米国大統領選にもかなりの影響が予想されます。

日本が突然北朝鮮と国交を樹立すれば、世界中が驚くでしょうが、今回のUAEの決断はそれに近いインパクトがあります。

このUAEという国、どんな国なのでしょうか。

英誌Economist「The United Arab Emirates has become a force in the Middle East(UAEは中東において一大勢力となった)」と題して、この国の知られざる実力に関して記事を掲載しましたので、ご紹介したいと思います。

Economist記事概要

8月13日に発表されたUAEとイスラエルの合意は、多くはツイッターで伝えられ、以前ヨルダンのフセイン国王とラビン元イスラエル首相がホワイトハウスで手を握った様な劇的な演出は全くありませんでした。

UAEは、湾岸諸国としては初めて、アラブ諸国としては、エジプト、ヨルダンに次いで三番目の国として、イスラエルと国交を結ぶ事になりました。

これまでサウジアラビアの影に隠れていましたが、UAEのムハメッド王子は、UAEを間違いなくアラブで最も影響力のある国に変貌させました。

UAEは地域のビジネスの拠点であるドバイ、国際的な海運企業であるDP Worldの様なソフトパワーのみならず、小規模ですが有能な軍隊を有しており、相当な国力の持ち主です。

実際、UAEの資金は、中東全体のクーデターや陰謀の支援に使われています。

彼らの資金は秘密裏に使われますので、明るみに出ることはありません。

彼らはワシントンやパリでの外交活動も巧みで、信頼できるパートナーとしての地位を確立しています。

同国の高官は「私たちは自分たちの身の丈を認識しています。私たちは集団的政策の一部である必要があります」と語ります。

 

しかし、彼らは次第に独自の道を歩む様になってきました。

彼らの政策は、イランに対してより柔軟であり、イスラム主義政治に否定的である点で近隣諸国と異なっています。イエメンではサウジアラビアと、リビアでは米国と、シリアでは多くの同盟国と異なったスタンスをとりました。

軍事行動では、UAEが単独で行動を起こすことはほとんどありません。

しかし、UAEの軍隊はそのサイズ以上の効果をもたらします。

サウジと共に介入したイエメンの内戦では、反政府軍を撃退する上で、大きな貢献をしました。

昨年12月にUAEがイエメンから撤退したことは、サウジにとって大きな痛手となりました。

リビアでもUAEが軍事支援した反政府軍は、トルコ軍の介入がなければ、首都トリポリを陥落させたところでした。

米国の国防総省はUAEを「小さなスパルタ」と呼んで、賞賛するほどです。

 

UAEはアラブの他の国と違い、主義主張にとらわれず、柔軟な判断を行います。

シリアに関しては、アラブ諸国のほとんどはアサド大統領を敗北させようとする試みに参加しました。

しかし、UAEはいち早くこの試みが間違っている事に気づき、2018年12月に大使館を再開しています。

この動きはシリアの後ろ盾であるイランへのスタンスの違いを浮き彫りにしています。

サウジアラビアもUAEも、イランが好きではありません。

しかしUAEはビジネス上、イランと様々な取引をしている関係上、サウジよりも柔軟に対処しようとします。

以前、米国の対イラン強硬政策の片棒を担いだUAEは、最近はそれを緩和しようとしています。

 

最近のUAEの目立つ動きは、サウジアラビアで2017年にムハマドビンサルマンが王位継承者として登場した時期と符合します。

サウジの王子は国内課題を優先する必要があり、外交においてUAEにアラブのリーダー役を任せた感があります。

 

UAEの地域政策の根底にあるのは、大衆による政治に対する反感です。

2011年のアラブの春は、UAEからしてみれば、希望ではなく混乱をもたらしました。2013年に選挙で選ばれた政府をクーデターで倒したエジプトの例を見ればおわかり頂けるでしょう。

UAEは「革命ではなく進化」を望んでいると説明していますが、UAEは近代主義者を装った反イスラム主義者の独裁を容認しています。

UAEの果たす役割

この記事、さすが中東の情報が集まる英国からのものと感心しました。

私も、イエメンやリビアにUAEが軍隊を派遣していた事を初めて知りましたし、それらの軍事行動が、サウジや米国の戦略とそれぞれ異なっていたことも驚きでした。

また、シリアの大使館を、他のアラブ諸国の反対を押し切って再開した事も初耳でした。

これらの行動を見ると、UAEはアラブ諸国の中で、一目置かれている存在だと思います。

国の規模から言えば人口一千万人とサウジアラビアに劣りますが、国内に問題を抱えていないことや、欧米諸国からの信頼も厚い事が、彼らの立場を強化しています。

 

今後、注目したいのは、対イラン問題におけるUAEの関与です。

今回のUAEのイスラエルとの国交樹立に対して、イランは当然のごとく、激しく反発しました。

しかし、彼らの公式発表をうわべだけで判断しては物事を見誤ります。

イランの対外ビジネスは、米国の厳しい制裁下に置かれており、思うような外貨獲得ができません。

そんな中、唯一と言って良いほどの輸出ルートがドバイなのです。

UAEはある意味、イランの生命線を握っています。

欧米諸国からの信頼が厚いUAEだからこそ、イランとの取引を西側諸国からある程度黙認されていると言っても良いでしょう。

今回、イスラエルとも外交関係ができたUAEはイランとのパイプも持つ事から、中東政治において、益々重要な役割を果たす事でしょう。

ひょっとすると、UAEがイランとイスラエルの間を取り持つなんて事も可能性が無いわけではありません。(さすがにこれはハードルが高いとは思いますが)

UAEの今後の動きから目が離せません。

 

最後まで読んで頂き、有難うございました。