二極化した米国メディア
民主、共和両党の党大会が終了し、大統領選もこれからが本番ですが、米国のメディアを見ると、共和党寄りか民主党寄りに二分化されており、客観的に大統領選を分析する新聞やテレビ局はほぼ無い事に気付きます。
日本で有名なCNNやNewYork Times などはその最たるもので、バイデン候補を強く推しています。
共和党寄りのメディアは数は少ないものの存在しており、ウォールストリートジャーナルやFox TVはトランプ寄りです。
政党の広告塔となってしまった感のある米国のマスコミに客観的な記事は期待できないので、今日はフランスのLes Echosの記事をご紹介したいと思います。
フランスは歴史的に見ると、米国に深く関与しており、米国が英国の植民地から独立した際には、米国側に立って参戦しています。
ニューヨークに立つ自由の女神はフランスからの贈り物ですよね。
フランスは実はミシシッピ川流域に「ルイジアナ」と呼ばれる植民地を持っていましたが、ナポレオンは日本の国土の6倍近いこの植民地をたった1500万ドルで米国に譲っています。もったいないですね。
ジャズフェスティバルで有名なニューオーリンズはフランス語読みではNouvelle Orleans(オルレアン公の新領土)です。
自由や民主主義の本家本元を自認するフランス人は、今回の大統領選をどう見ているのでしょうか。
Les Echos記事要約
(原題:La Peur de "L'Ameriqude de Biden", ressort inepuise de la Compagne de Trump, 「バイデンの米国」に対する恐怖を煽るトランプの作戦)
共和党の党大会が終了しましたが、彼らが大統領選の主軸としておいたのは「バイデン大統領のアメリカに対する恐れ」を強調する事でした。
彼らは「バイデンは左翼過激主義のトロイの木馬であり、経済と治安に大混乱をもたらす。」と批判しました。
副大統領候補の指名を受諾したペンス副大統領も「バイデン氏の下では、アメリカ国民は安全に暮らせない。」と発言しました。
2016年にトランプ氏がヒラリークリントン候補に対して行ったエスタブリッシュメント(注:クリントン候補は高学歴、高収入の特権階級の代表とみなされていた。)に対する批判は行わず、民主党で一番左に位置するバーニー サンダース氏のトロイの木馬だと非難したのです。
コロナ感染で亡くなった17万5千人の国民に対して、ペンス副大統領は哀悼の意を示しましたが、危機管理に関する誤りは認めようとしませんでした。
失業率も今年の初めから3倍の10.5%に上昇しましたが、経済と学校を再開させたいとの意向を表明するにとどまり、詳細な対策の説明はありませんでした。
先週、民主党党大会では、バイデン候補が「アメリカの魂を見つけるために闇から抜け出そう。」と訴えましたが、ポンペオ国務長官は「アメリカはアメリカであるべきだ。」と訴えました。
米国民は同じ国に関する全く対立する解釈のいずれかを選ばざるをえません。
トランプ陣営の選挙戦略
今回は、日本の政界でもなかなか見られないほどの高齢者間の戦いになっていますし、コロナ感染が拡大する中での異常な選挙戦になっていますが、トランプ陣営は「バイデン候補は一見中道派の候補に見えるが、実は左派の代表なんだ。」というメッセージを浸透させ、有権者の治安や経済に関する不安を煽る作戦に出ている様です。
これが功を奏するか否かは、もう少し様子を見なければ行けませんが、3回あるテレビ討論会で、また情勢は大きく変わりうると思います。
次期大統領選の有望候補
Les Echos紙は別の記事で、次の大統領選挙の有望候補を取り上げました。
それは今回の共和党党大会でもスピーチを行った元国連大使のNikki Haleyです。
彼女のスピーチは平易な言葉でわかりやすく国民に語りかけたため、大変評判が良い様ですが、Les Echos紙は彼女が次期大統領選の有望候補に躍り出たと伝えました。
インド人の移民の子として生まれ、サウスカロライナ州の下院議員に当選し、その後、同州の知事を経験しています。
彼女はトランプ政権下で、国連大使を務めましたが、2018年10月辞任しました。
トランプ政権下では、多くの高官が辞任しました。
その多くはトランプ大統領と喧嘩別れし、ボルトン補佐官などは、トランプ政権の暴露本を書くほどまでに関係が悪化しています。
しかしHaley氏は例外的で、トランプ大統領との好関係を維持している様です。
もしバイデン候補が大統領になるとすると、4年後の大統領選には、民主党からカマラ ハリス女史が大統領候補として有望とされていますので、そうなると女性同士の大統領選の可能性が出てきます。
このHaley氏、今後注目すべき政治家の一人であることは間違いありません。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。