MIYOSHIN海外ニュース

世界の役立つ情報をわかりやすくお伝えします。

諜報活動を根底から覆す技術革命ー人工知能による判断の危険性

f:id:MIYOSHIN:20200901165015j:plain

諜報活動に大きな変化が

諜報活動というのは、我々一般市民には縁遠いものですが、最近ヒューストンの中国領事館が不法な諜報活動を理由に閉鎖された事からもわかるように、水面下では大国間で激しい戦いが繰り広げられている様です。

007のジェームズ ボンドに代表される様なエージェント即ちスパイによる諜報活動は今も続けられていますが、この世界にもIT革命が押し寄せようとしています。

諜報活動における技術革命は過去に何度かありました。

常勝軍団であったプロイセンの宰相ビスマルクは敵の電報を傍受していた事で知られています。

20世紀に入ると米軍によるレーダー革命が起こりました。

日本軍の動きはオンタイムで米軍に察知されていたのですから、勝ち目がありませんね。

最近はテロ組織幹部の暗殺にもIT技術が使われており、オサマ ビンラーディンの暗殺に関しては、彼の部下の携帯電話が追跡されていたと伝えられています。

しかし、諜報活動における技術革命は止まるところを知らない様です。

昨日8月31日に米紙「Foreign Affairs」「The Coming Revolution in Intelligence Affairs(諜報活動における来るべき革命)」と題した論文が掲載されましたので、かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Affairs記事要約

人類は古くから他の人間の情報を集めていました。

他人が何をやっているのか、何をやろうとしているのか探りあっていたのです。

常に進化する道具を使って情報を収集してきましたが、これらの道具は決して人間を上回るものではありませんでした。

しかし、AI(人口知能)と自律システムはこれら全てを変えようとしています。

将来は、人間ではなく、機械が他の機械が何をしているのか或いは何をしようとしているのか情報を集める様になります。

諜報活動の本質は機密を盗む或いは自分の機密を守る事で、これは変わりませんが、どの様に機密を集め、分析し、それを広めるかという手法は根本的に変わります。

 

軍事の専門家も同様の革命的な変化を認識していますが、我々はこの変化をRevolution in Intelligence Affairs(RIA)と呼んでいます。来るべきこの革命において、機械はもはや情報収集のものだけではありません。

彼らは情報を使って、決定も下す様になり、相手の機械の攻撃の対象にもなりえます。

この機械の扱う情報量やそのスピードは、人間が太刀打ちできるレベルではありません。

この面での技術革新や競争は止まるところを知りません。

米国の諜報機関はこの革命を認知し、AIが支配する他国との競争に備える必要があります。

さもなくば我々は競争力を失います。

 

この革命は突然起きたわけではありません。

20世紀からの通信技術コンピューター技術進歩の延長線上にあります。

単に人間の能力を超えた能力を機械が持つ様になっただけです。

過去20年間にこの進化は加速しました。インターネットやドローン果ては小型衛星からもたらされる膨大な情報は人間の扱える許容範囲を遥かに超えています。

米国の地理空間情報局は今後5年間で処理すべきデータ量が100万倍に膨れ上がると2017年に予測しました。

これらのデータ処理を怠った国は他国との競争に敗れてしまいます。

 

AIと自律システムへのシフトは軍事分野でもその必要性が高まっています。

既に米軍では約11,000もの無人システムが導入されていますが、これらの先進的攻撃システムを諜報機関はサポートする必要があります。

さらに加えてサイバーセキュリティの部門は何十億ものセンサーから提供されるデータを処理する必要があります。

 

更に革命的なのは、諜報活動のターゲットが人間ではなく、敵の機械(システム)になる事です。

スパイ同士が相手をだます行為は頻繁に行われてきましたが、機械同士でもこの騙し合いがおこります。

敵の情報が騙しだと理解しても、気づかなかった様に振る舞い、敵の機械に情報を流す様な事を人間の介在なしに行う様になるのです。

これと似た例は既に、金融界で起きています。

投資銀行などの高速取引システムは、グローバルな株式市場の変化を感知し、膨大な量のデータを分析して予測を行い、一瞬のうちに自動的に取引を実行するアルゴリズムに依存しています。

人間は、同じ速度では操作できません。

 

この様な革命的な諜報分野での変化に対応し、米国の諜報機関は大きく変化する必要があります。

新しい組織が必要かも知れません。

新しい組織ができない場合は、既存の諜報機関を強化する必要があります。

諜報活動におけるAIと自律システムの重要性を理解することは、イスラム原理主義を理解することと同じくらい重要です。

(記事の著者はAnthony Vinci氏、米国地理空間情報局の元CTO

人工知能が自律的に判断を下すリスク

この記事を呼んで、米国政府がHuaweiの排除に必死になっている理由が理解できました。

4Gより遥かに大量のデータを素早く処理できる5Gが中国に支配される様になれば、諜報活動も圧倒的に不利になってしまいますからね。

ハリウッドの映画には、人間が将来機械の奴隷になるという発想の物が多く見られます。

映画「ターミネーター」でサイボーグを送り込んでくる組織の名前は「スカイネット」ですが、中国に国民を監視するシステムとして「天網」というシステムがあるそうです。

おそらくハリウッドは、この中国の監視システムをもじって名前を付けたのではないかと思います。

しかし、人工知能(AI)が人間の介在なしに物事を判断する時代というのは空恐ろしいですね。

さすがに核攻撃のボタンまで、人工知能に委ねるということはないと思いますが、大統領の判断の基礎となるデータ(例えば、敵が攻撃しようとしているか否か)は人工知能に委ねられることになります。

この人工知能は相手を騙すことにかけては天下一品という事ですから、簡単に大統領も騙されてしまいそうです。

人工知能導入の動きは止まらないでしょうが、人間が機械に支配されない事機械が一部の人間の利益のためにプログラミングされない事は最低限おさえておく必要があると思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。