鬼才イーロンマスクが新たな挑戦に
イーロン マスクほど評価が分かれる実業家も珍しいでしょう。
時代の先を行く革命的な実業家とほめそやす人もいれば、大言壮語の大ホラ吹きと言う人もいます。
彼はマリファナを吸っているところをネット動画で配信されたり、その行動は常に型破りです。
彼は10歳でプログラミングを独学で習得し、12歳でコンピューターゲームのソフトを売って一儲けしたというのですから、やはりただものではありません。
そんな彼は、今時代の寵児としてビジネス界を牽引しています。
皆さんご存知の電気自動車会社テスラの時価総額は、日本全ての自動車会社の時価総額の総和を上回ってしまいました。
潰れかけていたロケット会社Space Xは今や絶好調で、NASAに代わって宇宙空間に多くのロケットを打ち上げています。
そんな彼が新たな分野に挑戦したと言う話が飛び込んできました。彼の次のターゲットは人間の脳です。
英誌「Economist」(Elon Musk's vision of future takes another step forward)の記事をかいつまんでご紹介したいと思います。
Economist記事要約
人々は時々未来について夢を見ます。
勝手に運転してくれる車や、他の惑星への旅行や思考の力だけで動く物体など。
イーロン マスクはそのいずれをも実現しようとしています。
自動運転車と火星への旅行は、実現間近です。
思考の力で物体を動かすことが、3番目の領域ですが、8月28日、インターネット上で放送されたプレゼンテーションで、マスク氏は彼の会社Neuralink社の技術を披露しました。
見どころは、脳にチップを埋め込んだ「Gertrude」と名付けられた豚でした。
脳の電気信号の読み取り、脳波検査(EEG)は、100年以上前に始まり、現在も日常的に行われています。
脳波は有用な情報を提供しますが、脳波計は頭皮の上に電極を置くものと、手術を行なって頭皮の下に電極を埋め込むものがあります。
後者は手術を行うため、リスクが高くなりますが、神経細胞からのより解像度の高い情報を提供します。
Gertrudeが搭載するデバイスは、技術的には脳コンピューターインターフェイス(BCI)として知られており、EEGレコーダーを永続的なインプラントとすることにより、情報の精度を一段階高めます。
この様なインプラントは義肢を操作する信号を与える事が可能になったり、てんかん患者が発作を抑えるための信号を脳に与える事を可能にします。
Neutralink社が開発したインプラント型の脳波計はコイン大で、1000本の柔軟な電極糸を持ち、この糸は人間の髪の毛の4分の一の太さです。
これが脳の中の様々な信号を拾う様に設計されています。
彼らはこのインプラントを人間に装着する手術ロボットまで開発しており、その手術は麻酔なしで行なわれ、朝入院すれば午後には退院できるほど簡易なものです。
このインプラントは非接触で充電可能かつワイヤレスで信号のやりとりができますので、永続的に使用可能です。
誰もが今回の発表に感心しているわけではありません。
ニューカッスル大学のジャクソン教授は、プレゼンテーションには「革新的なものは何もない。」とコメントしました。
マスク氏はツイッターで、「学界がアイデアを実現することの重要性を過小評価することはよくあることだ。」とつぶやきました。
Neutralink社が豚のGertrudeに与えたものを人類に提供できる様になれば、関心は高まります。
同社は、7月に米国食品医薬品局(FDA)から「画期的なデバイス」として認定されました。
FDAは、このシステムが対麻痺の治療に期待しており、今後、審査がより迅速に行われる事となります。
次の挑戦は、脳に電気信号を送ることです。
マスク氏は、これにはさまざまな工夫が必要になると語っています。
脳の一部には繊細な刺激が必要なものもあれば、「大量の電流」を受け取るものもあるからです。
肝心な事は、双方向通信を確立することです。
これにより、まったく新しい治療領域を模索することができます。
てんかん抑制の他に、脳刺激はうつ病や不安症の治療にも役立つと考える人もいます。
これにより、将来、記憶をダウンロードして他の場所に保存できるようになり、人間が人工知能と「共生」できるようになると期待されています。
批評家は、Neuralink社にあまりにも秘密が多い事、そしてマスク氏のビジョンは彼が提供できる以上のものを約束していると批判します。
しかし、マスク氏は、彼が言うほど速くないかも知れませんが、やろうとしたことを実現してきました。
彼は実際のところ一人で電気自動車を市場に導入し、何もないところからロケット事業を成功させました。
脳は自動車やロケットよりもさらに複雑ですが、マスク氏の新しいプロジェクトである頭脳とコンピューターの融合が不可能だと決めつけない方が良さそうです。
政治力、営業力も併せ持つマスク
いやはや、彼の知的好奇心には境界がなさそうです。
脳の中身がダウンロードできる様になれば、体が衰えても、ロボットや他の人間に自分が移り変わる事が可能になりますね。
まさにSFの世界です。
しかし絵空事と言えないのは、Economistが言う様に、彼はホラ吹きと言われながらも、有言実行してきた実績を持っているからです。
彼は単なる技術屋ではなく、政治家をも巧みに操る交渉術の持ち主です。
トランプ政権が樹立した直後は、大統領戦略政策フォーラムのメンバーでした。(その後、トランプ大統領がパリ協定離脱を決定した事に抗議して辞任)
中国の李克強首相より中国での永住権を打診されるなど、中国政府とのパイプも持っています。
今回のプロジェクトにおいても、抜け目なく米国食品医薬品局(FDA)よりお墨付きを得ています。
プロジェクト実現には何が重要か、資金調達や政府認可などにも目配りが効いているところが、彼の成功の秘訣になっていると思います。
彼の冒険はまだまだ続きそうです。
マスク氏の経歴についてご関心がある方は下記BBCリンクご参照下さい。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。