モーリシャスの海難事故の原因
先日、モーリシャスの沖合で、日本船籍の大型船が座礁し、海洋汚染を引き起こしました。
この事故については、私もブログで取り上げ、船員がWifiに接続したいがために、島に近づいたでのはないかと推測しましたが、この推測は当たっていた様で、その後、船長及び副船長が逮捕された様です。
彼らには情状酌量の余地があります。
数ヶ月に及ぶ長い船旅の間、彼らは港に着くまで、家族と連絡が取れません。
世界にコロナ感染が広がる中、家族に感染者が出た船員などは、一刻も早く連絡を取りたかったものと推測されます。
しかし、この事故でインド洋の貴婦人とも謳われるモーリシャスの海は汚染され、長期間生態系に影響を与えると言われています。
今回の事故は人災です。船長以下乗組員が本来の航路を逸脱し、島に接近して行った事が事故の原因となってしまいました。
船員が居なければ事故は起きなかったとすれば、無人運転船を実現すれば良いのではないでしょうか。
海の上には信号もないし、急に飛び出てくる歩行者もいません。
各社が開発を急いでいる無人運転車よりも無人運転船の方がかなり容易に開発できるのではと思えます。
そんな事を思案している時に、ウォールストリートジャーナル紙が「Robot BoaatsLeave Autonomous Cars in Their Wake」と題して無人運転船に関する記事を掲載しましたので、かいつまんでご紹介したいと思います。
ウォールストリート紙記事要約
メイフラワー号の大西洋横断から丁度400年後、同じ名前の船が無人で大西洋を横断しようとしています。
この船は英国の非営利組織プロメアとIBMが共同で開発したものです。
無人船には非常に大きなメリットがあります。
つまるところ、過酷な海洋環境から人間を保護する必要がなければ、船には操舵室や寝室、平らな甲板、トイレは必要ありません。
英シーキットインターナショナル社は、船から人間を排除することで、通常であれば全長60メートルの有人船が必要な作業を全長12メートルの船でこなせるようにしようとしています。
このサイズの違いは、燃料消費を大幅に減らせることを意味し、燃料消費は同等の有人船の約100分の1になります。
多くの点で、自動操縦は路上よりも海の方がはるかに容易です。
「運用できるエリアがはるかに広く、他の乗り物や歩行者と衝突する可能性もはるかに低い」とシーキットのティンマウスCOOは語ります。
しかし、海を見くびってはいけません。
メイフラワー号を開発しているスコット最高技術責任者は「確かに海は何も無いだだっ広い場所だが、信じられないほどダイナミックだ」と述べました。
メイフラワー号は嵐にできる限りうまく対処できるようプログラムされています。
しかし、船舶の運航が依然として危険な仕事であることに変わりはありません。
2019年は41隻の大型船が全損しました。あらゆるサイズの船が火災や巨大波など様々な脅威に屈しています。
大西洋上には衛星インターネットでさえ不安定なスポットがあり、メイフラワー号は航海の途中で陸地と接続を断たれる期間があるため、初航海で跡形もなく姿を消す可能性もあります。
天候以外で最大の危険は他の船舶です。
人間が操縦する船は、衝突事故を避けるため、国際海事機関(IMO)の規則に従っています。
船を操縦する人工知能(AI)は、そうした規則に従うだけでなく、どのような判断をどのような理由で下されたのか説明できなければなりません。
メイフラワー号の「人工知能I船長」の開発に携わるIBMのクラーク氏は「ソフトウエアの一部は金融サービス業界のものを転用しています。銀行のソフトウエアはクレジットカード取引を拒否する場合、的確に根拠を示す必要があります。メイフラワー号も同様に、衝突を避けるために別の船舶を追い越すか、航路を譲るかを判断する際、詳細な決定プロセス(ディシジョンツリー)に従わなければなりません。」と語ります。
エンジニアは、メイフラワー号のコンピューターシステムに何百万もの船や浮き、漂流物などの画像を学習させ、それらを認識して状況に応じた動きを取れるよう訓練しました。
自動運転車と比較して、船には大惨事を回避するために一瞬で判断を下す必要がないという利点があります。
また、外洋には信号無視をする歩行者や停止信号、車線境界もありません。とはいえ、無人船も陸上の自動運転車と同じ問題を幾つか抱えています。
すなわち、人間の行動を予測するのが苦手な事と、人間とのコミュニケーション能力に限界があることです。
港と船のコミュニケーションの多くは依然、無線を介した音声通信で行われています。港の中や周辺の環境は混雑していて危険な場合があります。
メイフラワー号にとってまず必要なのは、港から出ることです。
スコット氏は、訓練によってカヤックやカヌー、水上オートバイを認識することはできるようになったが、サーフボードの上に立ってパドルでこぐ人間を認識することはできないと認めます。
開発チームはメイフラワー号を完全自動運航モードで出港させるか、リスクを冒さないようにすべきかはまだ決めていない様です。
無人船の将来
思ったほど無人船は簡単ではなさそうですね。
確かに港の近辺は操縦が難しそうです。
しかし、港に近づけば、電波も届きますし、場合によっては、操縦士が港近辺だけ乗り移って有人で操縦するという手もありうるのではないでしょうか。
無人船には難題を乗り越えても実現する大きなメリットがありそうです。
人間は騒音や振動に弱いので、その対策に相当な出費が必要ですが、無人船はその必要がありません。
また、船全体のサイズが小さくなれば、建造費も燃料費も削減できます。
もう一つ大きなメリットがありそうです。それは海賊対策です。
中東やアフリカ海域は海賊が出没し、日本船の被害も生じています。
彼らは船員を人質に取り、身代金を要求します。
無人船はこの問題も解決してくれるのではと思います。
様々な課題はありますが、人類はこれらを解決していく事でしょう。
メイフラワー号初航海の成功を祈ります。
最後まで読んで頂き有り難うございました。