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欧州は米中どちらに付くのか

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欧州は今後中国とどう付き合うのか

米中の対立は、益々厳しさを増しています。

米国は中国へハイテク技術が漏洩する事を避けるため、あらゆる手段を講じており、中国人研究者、留学生のビザの更新を止めたり、中国人のスパイ活動を徹底的に取り締まっている様です。

笑ってしまったのは、中国人研究者のパソコンが空港税関で取り上げられた事件です。

パソコンを取り上げられた中国人はメディアに対して「もし私が本当に米国に対してスパイ行為を行っているのなら、機密情報をパソコンに入れて国外に持ち出そうとしたりはしない。機密情報は全てクラウド上で処理されるはずだ。」とコメントしており、米国の時代遅れの防諜体制が浮き彫りになりました。

米中の緊張が高まる中、欧州が外交の主戦場になってきています。

米中とも欧州を自分の味方に引き入れようと懸命です。

米国はポンペオ国務長官が欧州各国を歴訪しましたが、中国も米国から最先端の技術を得られないなら、欧州から吸収しようと欧州へのアプローチを強化しています。

先日は王毅外相がドイツ他欧州各国を歴訪しました。

王毅外相はコロナ感染から始まり、最近は香港やウイグルの問題に広がった中国への批判を柔らげようと欧州を訪問したわけですが、大きな失言を行ってしまいました。

彼の欧州訪問と同時期に、チェコの議員団が台湾を訪問していたのですが、記者団からこの訪問について意見を求められた際、王毅外相は「これは許し難い事だ。チェコには対価を支払わせる。」と発言したのです。

この上から目線の発言は欧州の人たちの反発を生み、ドイツ外相は「対価を払わせるという表現は適当でない。」と批判しました。

欧州の人たちは中国をどう見ているのでしょうか。

彼らが本音でどう思っているのか日本のマスコミではあまり報道されません。

仏経済紙「Les Echos」が「Les entreprises européennes en Chine sur un « champ de mines politiques » 」(政治的地雷原にある中国の欧州企業)と題して、記事を掲載しましたので、かいつまんでご紹介したいと思います。

Les Echos記事要約

中国で活動する欧州企業は、一向に改善が進まないながらも、中国が経済改革と市場開放の方向に進む事を信じていました。

1,700もの欧州企業が会員である北京の欧州商工会議所はこの木曜日白書を発行しました。

白書によれば、コロナ感染拡大の結果として、欧州企業が以前より中国に歓迎されなくなったと感じている様です。

今年はライプツィヒにEU加盟国27か国の元首と習主席が一堂に回し、EUと中国の投資協定が締結される予定だったのですが、コロナ感染の広がりは、誰も想像できない状況を生み出しました。

欧州と中国の間で、月曜日にテレビ会議によるミニサミットが行われる予定ですが、米中の緊張の高まりのせいで、中国で活動する欧州企業は「政治的地雷原」の真っ只中にいます。

欧州企業は中国政府による報復を恐れていますが、一方で、コロナ感染、台湾、新疆ウイグルでの弾圧等により益々中国に対して批判的な欧州の世論にも立ち向かう必要があります。

欧州商工会議所会頭のJoerg Wuttke氏は「中国はビジネス環境を政治化する事を避け、『戦狼外交』をやめるべきだ。」と語ります。

 

この様な厳しい環境ですが、Joerg Wuttke氏は「欧州企業の殆どは中国に留まり、中国の経済回復の恩恵に被りたい」と語ります。

驚くことに10年前は中国から離脱したいと答えた欧州企業の割合は2割いたのですが、現在は1割しかいません。

しかし、「中国は本当に我々を必要としているのか。」「中国は我々と経済成長の果実を分け合うつもりがあるのか」という問いに対しては皆懐疑的です。

更に習政権は「一経済、二制度」を導入し、欧州企業を失望させています。

中国政府は国営企業への強力な支援を行うと共に、成長分野(再生可能エネルギーやハイテク)では外国企業の投資を禁止するか、国営企業への支援を通じて実質的に外国企業を排除しています。

一方で、奇妙なことに最近外国企業に開放された二つの分野があります。それは金融自動車産業です。しかし、これらは門戸開放が遅すぎて、欧州企業に残されたチャンスはありません。列車が出発した後に駅に入れてもらった様なものです。

中国人指導者にとってみれば、市場へのアクセスは外国企業の権利ではなく、彼らが如何様にでも左右できる特権という事なのでしょう。

日本は欧米と共闘を組むべき

「一国二制度」というのは香港や台湾に関して聞いたことがありましたが、「一経済二制度」というのがあるんですね。

確かに国営企業をえこひいきする中国政府のやり方は外国企業にとって大きな障害です。

米中対立が深まる中、中国は日本にも秋波を送ってきています。

中国にとってみると先端技術を吸収する先として、米国が閉じられれば、欧州か日本に行くしかありません。

米国は今後、日本に対しても「米国に付くのか、中国に付くのか」と踏み絵を迫ってくると思います。

安全保障面で、全面的に米国に依存している日本は、当然米国の意向を重視する必要がありますが、中国は日本にとり最大の貿易相手国です。

中国からの輸入は2位の米国の2倍近くとなっており、そう簡単に切り離せる相手ではありません。

米国の了解を得られる範囲内で、中国ともうまくやるという高等戦術が必要になります。欧州も日本と同じ立場と思います。

この場合、米欧日が緊密な連携のもと、中国に対応することが重要です。

1カ国でも抜け駆けする様なことがあれば、中国への圧力は弱まります。

逆に中国は欧州や日本に抜け駆けをさせる様に揺さぶりをかけてくるでしょうから、抜け駆けをさせない緊密な連携が重要性を増してくるのです。

最近欧州と米国の間にすきま風が吹いているのが気になります。

今のEUにトランプ大統領を説得できる人は見当たりません。

そういう意味では、安倍首相は稀有な人材ですね。

トランプもメルケルも安倍さんが言うなら重い腰を上げると言われており、日本が外交の切り札を失ったのは残念ですが、後継者に期待したいと思います。

亀裂が入り始めた欧米の間に入って先進国をまとめるのは日本の役割でしょう。

 

最後まで読んで頂き、有難うございました。