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米国IT大手が群がったTikTok争奪戦の真相 - 伏兵オラクルが急浮上した理由は

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TikTok買収劇二転三転

TikTokの買収先に関しては、当初マイクロソフトが最有力とみられていましたが、最新の報道によれば、米IT企業オラクルの可能性が高まっている様です。

このTikTok買収劇に関して、過去の経緯を振り返ってみましょう。

TikTokは動画アプリの一種で、YouTubeよりも短い1分以内の動画をシェアするものです。米国ではティーンエージャーを中心に人気を集めており、米国内のユーザーは1億人に達しています。

このTikTokの親会社はByteDanceという北京に本社を置く中国企業です。

  1. トランプ大統領が出席する予定の6月20日のオクラホマで行われた共和党選挙集会にTikTokのユーザーが集会の妨害を目的に、空予約を呼びかけたところ、集会に空席が多数生じました。
  2. これに立腹したのかどうかは明らかではありませんが、トランプ大統領はTikTokが米国人の個人情報を吸い上げ、中国政府に提供する可能性があると糾弾し、9月15日迄にその米国事業を米国企業に売却する様求めました。
  3. これに対抗し、中国政府が中国の知的財産の譲渡には、中国政府の承認が必要だと表明しました。
  4. マイクロソフトやツイッターが手を挙げていましたが、ダークホースであったオラクル社が急浮上し、TikTokと一定の合意に達し、米国政府が現在両社からの提案を検討中との事です。

オラクル社はマイクロソフトなど強敵を抑えて、何故急浮上したのでしょうか。

またオラクルの狙いは何でしょうか。

この点について、ウォールストリートジャーナルは「How Dark Horse Oracle Became TikTok’s Leading Suiter」と題した記事で解説しています。

ウォールストリートジャーナル記事要約

企業向けソフトウエア大手のオラクルは、シリコンバレー屈指の収益性を誇りつつも目立たない企業の一つです。

しかし同社は今や、中国系の動画投稿アプリ「TikTok」の米国での事業パートナーとなる見込みです。 

TikTokを運営する中国のByteDance社は14日、米政府に提案書を出した事を認めました。

詳細な情報は乏しく、TikTokに関する合意は頓挫する可能性もある様です。

TikTokの買収劇は、世界的有名企業(例えばウォルマートやツイッター、グーグル)なども巻き込み、政治的駆け引きも展開されました。

トランプ氏は米国事業を売却するよう要求していましたが、事情をよく知る複数の人物によると、オラクルがTikTokの過半数株式を取得することはなさそうです。

Bytedanceの計画では、TikTokのアルゴリズムを譲渡したりすることはなく、国家安全保障上の問題に対処する一連の措置を講じることになる模様です。

また一部の話によると、オラクルはそのアルゴリズムがどのように動くかを知る権利を入手するとみられます。

 

オラクルは当初、ウォルマートと組んで買収に名乗りを上げたマイクロソフトに対抗する選択肢を作るため、担ぎ出されました。

ByteDanceに既に出資していた米投資会社セコイヤ・キャピタルが、米政権と緊密な関係にあるハイテク企業を探した結果、オラクルに落ち着いたと関係者は語ります。

オラクルの共同創業者であるラリー・エリソン会長は今年、ランプ氏の資金集めパーティーを自宅で開催しました。

又、同社のキャッツCEOは2016年、トランプ氏の政権移行チームに参加していました。

オラクルにとってはこの合意が実現すれば、ハイテク産業の中で最も成長性の高いクラウド事業で主要プレーヤーに躍り出る可能性があります。

 

トランプ大統領がTikTokを使用禁止にすると警告したのを機に、米国IT企業の間で争奪戦が始まりました。

そして最終的な決定者はトランプ氏となります。

同氏はここ数週間、TikTokの米国事業を米企業に完全に売却するのでなければ認めないと言い続けています。

そこから後退したとみられる合意を受け入れるのか、あるいは超人気アプリを使用禁止にするのか、同氏は政治的な判断を迫られています。

事情に詳しいある人物によれば、TikTokは米国で2万5千人の雇用を増やすと約束する見込みです。

Bytedance社は同社の講じるこうした措置が米国の要請を十分に満たすことを確信しています。

「トランプ大統領が望むのは大きくて安全な米国の企業だというこ事を、われわれは理解した。」ByteDance社関係者はこう述べました

セコイヤ・キャピタル社は独自のコネクションを駆使し、TikTokが米国事業を続けられるように政権に働きかけた様です。

ロビー活動で主導的役割を担った同社のレオーネ氏は、選挙シーズンに入って以降、再選を目指すトランプ陣営を含め、複数の共和党候補者に数万ドルの献金を行っています。

オラクル社CEOキャッツ氏とトランプ氏との関係が、合意案の承認でオラクルを優位に立たせたのかもしれないと、ホワイトハウスとつながりのある複数の人物が話します。

オラクルはこれまで安全保障関連施設の複数の契約を引き受けるなど、米政府と数十年来の取引があります。

米国IT大企業が群がったTikTok

このディールは大変興味深いですね。各プレーヤーが虚々実々の駆け引きを水面下で展開している事が窺えます。

トランプ大統領が何を求めているのか、落とし所はどの辺なのかを各社が腕利きのロビイストと人脈、資金力の限りを駆使して探ったものと思われます。

オラクル社及びTikTokの株主であったセコイヤ キャピタル社の政治力が他者を凌駕したと言う事だと思います。

一方、中国のByteDance社のしたたかさも特筆ものです。

彼らの発言の中で、「トランプ大統領が求めているのは、つまるところ米国の大きくで安全な企業なのだ。」というコメントがポイントを突いていますね。

彼らは大統領の逆鱗に触れた時、会社の価値が激減することを恐れたでしょうが、米国にユーザーが1億人もいるアプリを大統領が使用禁止にすることは、トランプ大統領にとってもかなりリスクがあり、これが大統領の弱みだと認識した上で、冷静に反撃に出ています。

トランプ大統領の有力な支援者であるオラクルであれば、トランプも矛先を弱めるだろうとしたたかに計算していますね。

それにしても、米国のIT大手の多くが争奪戦に参加したTikTok大したもんですね。

改めて、中国のIT技術のレベルの高さに気づかせてくれました。

現在、Huawei社の封じ込めにトランプ政権は躍起になっていますが、そのうち、中国勢だけで世界一のIT技術を作り上げてしまう可能性があります。

そんなシナリオの可能性も頭に入れた上で、米中と付き合う必要があるでしょう。

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。