菅内閣スタート
菅内閣が発足しました。
閣僚も発表されましたが、目玉は何と言っても河野太郎前防衛大臣の行革担当大臣への横滑りですね。
菅首相は「規制改革」を新内閣の旗印にしていますので、実行力、発信力とも優れている河野大臣を抜擢したとの論評が多いですが、私は日本の防衛システムを根本的に改革しようとした河野氏が中国を刺激しすぎる事を恐れた菅首相が配置転換を行ったと見ています。
後任の岸防衛大臣も台湾との交流に熱心ですので、親中派とは言い難い政治家ですが、実行力は未知数です。
海外のメディアも菅首相の政策がどうなるのか、安倍首相の政策と異なる点はあるのかという観点から、様々な論評を発信しています。
今日は、菅政権が直面するであろう難問に関する記事をご紹介しようと思います。
一つ目は経済に関するもので、米誌Foreign Policyより 「Suga Promises Continuity. But on Economics, He Can’t Possibly Deliver」(菅首相は継続を約束したが、経済においてはそれは不可能かもしれない)です。
二つ目は、対中政策に関するもので、米誌Wall Street Journal(WSJ)の「Japan's Next Leader to Be Thrust Into Clash with China」(日本の次の首相は中国との衝突を避けられない)です。
Foreign Policy記事要旨
菅氏が難しい選択に直面する可能性が高いのは、金融政策です。
日本は、今や世界中で一般的になりつつある放漫な金融政策を最初に採用しました。
たとえば、「量的緩和」つまり中央銀行による金融資産の大規模な買い取りは、日本銀行によって2001年に最初に行われました。
これはリーマンショック後に行った米国より10年も前です。
日銀はこの実験に続き、マイナス金利と政府の借入コストの明らかな制御により、長期的に超低金利を保証しました。
20年間もの間放漫な金融政策を続けた後、日銀は追加の弾がなくなりました。
一方、米FRB(連邦準備委員会)は、コロナウイルスによって引き起こされた経済的危機と戦うために金融対策を大幅に拡充しました。
アメリカの財政赤字は、平時では前例のないレベルに近づいています。
これはドル安を招き、円高を招きます。
それは日本にとっては良い事のように思えるかもしれませんが、菅首相にとっては大きな問題となるでしょう。
アベノミクスの財政および金融政策は円を弱め、日本の輸出業者に利益をもたらしました。
ドル安、円高が進み、日本の輸出競争力が低下すると、菅氏は難しい決断を迫られるかもしれません。
菅首相は安倍氏の方針を継続することは約束できますが、同じ結果を出すことは約束できません。
WSJ記事要旨
JR東海の葛西敬之名誉会長(79)は、「日米の同盟関係が何より優先される。中国にはそれをはっきりと示すべきだ。中国がそれを気に入らないとしても仕方がない。」と語ります。
一方、経団連の中西宏明会長(74)は、「そうした態度は自殺行為だ。日本政府がこれまで中国との関係構築に力を尽くしたことを踏まえ、できる限り仲良くすべきだ。」と語ります。
経済界の重鎮であり、政治的な発言力もある両氏の相反する見解は、米中間の緊張をうまく乗り切るという日本の次期首相に突きつけられた課題を浮き彫りにしています。
安倍首相は、ドナルド・トランプ米大統領と親密な友人関係を築き、何度かの訪中を通じて中国との関係を改善しました。
しかし米中両国との微妙なバランスを取りつつ綱渡りを続けることは、菅氏にとって一層難しい課題になるでしょう。
ジレンマに直面するのは同氏だけではありません。世界中の米同盟国に共通する問題です。
例えばドイツは国防を米国の軍事力に頼る一方で、経済面では中国に依存しています。
日本をはじめ米同盟国は、「5G」の通信ネットワークからファーウェイの製品を排除することに同意しました。
米国の経済制裁は、ファーウェイ他の中国企業に部品を供給する日本のメーカーに打撃を与えています。
東芝の加茂上席常務は「高度の技術については、会社に対して影響を及ぼさないのかということを一個一個検証していく」と話しました。
日本は中国産業界と密接に結びついています。
財務省によれば、対中輸出(2019年実績で総額約14兆7千億円)は、日本経済がコロナ感染による落ち込みから回復するのを後押しし、前年を上回るレベルで推移している様です。
早稲田大学の中林美恵子教授は、中国に逆らえば立ちゆかなくなる民間企業が非常にたくさんあると指摘します。
中国政府は日本がトランプ対抗軸に加わることを期待するシグナルを発信しています。
9月3日に開催された抗日戦争勝利75周年の記念式典では、習近平国家主席が「中日両国民の永続する友情を促進する努力」を呼びかけました。
JR東海の葛西氏は、安倍首相に習主席への訪日招請を取りやめるよう助言したと言います。
「いざとなったら切られても大丈夫だというぐらいの範囲に、日本企業の中国への進出はとどめておくべきだ」と語ります。
対中リスクを過小評価していると思う人々を挙げてほしいと葛西氏に求めると、日立製作所の元CEOで、経団連会長を務める中西氏の名が挙がりました。
日立は日本初の新幹線車両を作った会社ですが、日立はJR東海と違い、エレベーターや医療システムなど様々な分野で巨大な中国市場を切り開いてきました。
「(中西氏は)地政学を知らない」と葛西氏は述べます。
一方、中西氏は、「地政学の専門家だと称するつもりはないが、隣接する大陸の強国と日本の結びつきの歴史は理解している。葛西さんと対中国の認識はかなり違うと自覚している」と言います。
更に「この国を敵対視し、そして無視して経済活動を続けていくというのは、ある意味では日本にとって自殺行為になりかねないというリスクがむしろ大きくなる。それよりも隣国とうまくできるだけやって行こうじゃないか」と中西氏は述べました。
菅首相は難局を乗り切れるか
確かにアベノミクスは、カンフル剤の様に市場に大量のお金を流し続けました。
カンフル剤を打たないと少子高齢化に悩む日本は経済成長が達成できないのです。
しかし、さすがにこれ以上うち続けると財政破綻してしまいかねない状況です。
一方、米国はコロナ感染対策のため、初めて本格的な量的緩和を始めました。
為替が円高に振れてもおかしくありません。
ここ数日円は上昇し、一時105円を割り込むところまで行きました。
菅政権は円高に悩まされる可能性があると思います。
一方、対中政策に関して、これだけ葛西氏と中西氏が対立しているとは思いませんでした。
日本のマスコミもこのくらい突っ込んだインタビュー行って欲しいですね。
日本の経済界も意見が割れていると思います。
冷戦時代に、ソ連に対して行われた様な輸出管理が行われる様になるのか懸念されます。
トランプ大統領が再選されなくても、米中の覇権争いは続きますので、この問題は間違いなく日本に降りかかってくると思った方が良いでしょう。
中国との取引は重要ですが、香港やウイグルの問題に口をつぐむ様な日本にはなって欲しくないと思います。
今後、菅政権がこれらの問題にどう対応するか注目したいと思います。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。