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石油の時代は終わったのか

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地球温暖化がもたらす災厄

地球温暖化は様々な天災を引き起こします。

季節外れの大型台風の来襲や、最近カリフォルニアやオレゴンを襲った山火事など、予想もしなかった災害が引き起こされています。

災害を引き起こすだけでなく、気候変動は本来雨が降る筈の農地に雨が降らなくなる現象を引き起こしますので、農業生産にも甚大な影響を与えかねません。

地球温暖化は人類が直面する最大の課題の一つと言えそうですが、この問題について英誌Economistが「Is It the End of the Oil Age」(それは石油の時代の終わりか)と題して記事を掲載しましたので、かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要旨

20世紀は石油が支配する時代でした。

車を走らせるのも、戦争を行うのも石油でした。しかし今、世界は新しいエネルギーへ急速に移行しようとしています。

コロナ感染の広がりは世界の石油需要を2割以上減少させ、価格を急落させました。

徐々に需要は戻りつつありますが、元の世界に戻ることはありません。

コロナは新しいエネルギー源への移行を加速させたのです。

エクソンモービルは米国の株価指標であるダウ指数の代表銘柄より外れ、サウジアラビアなど石油国は国家予算を黒字に保つためには1バーレル70-80ドルが必要ですが、現在の価格は40ドル程度です。

勢いを増すクリーンエネルギー

クリーンエネルギー産業は勢いを増しています。

クリーンパワー株は今年45%上昇しました。

バイデン候補は、アメリカの経済を脱炭素化する為、2兆ドルを支出すると表明しました。

一方、EUはコロナ感染対策費8億8,000万ドルの30%を気候変動のために割り当て、温室効果ガスの排出量を、今後10年間で1990年のレベルに比べて55%削減すると公表しました。

 21世紀のエネルギーシステムは、石油の時代に比べ、人々の健康に良いのはもちろんですが、政治的にも安定し、価格面でも乱高下を抑えることが可能です。

化石燃料の問題点

 現在、化石燃料はエネルギーの85%を供給しています。化石燃料の燃焼は、多くの人々の健康を害しています。

一方、産油国では、サウジアラビアやベネズエラの様に原油収入に頼る経済を生み出しました。

米国は中東に6万人もの駐留兵を派遣し、これらの国の安定を守る必要がありました。

消費国は不安定な産油国カルテルにも悩まされてきました。

1970年以降、半年の間に3割以上価格が上昇することが62回もありました。

クリーンエネルギーのメリット 

一方で、新しいエネルギーシステムが急速にシェアを伸ばしています。

太陽光や風力などの再生可能電力は、今日の5%から2035年には25%に、2050年にはほぼ50%に上昇する可能性があります。

これは様々なメリットをもたらすでしょう。

最も重要なのは、エネルギーを脱炭素化することで、壊滅的な干ばつ、飢饉、洪水など予想できない気候変動の混乱を回避することです。

地理的にも供給が多様化するため、政治的にも安定するはずです。

かつて石油生産者の政治に干渉することによってエネルギー安全保障を求めていた消費国は、代わりに自国の電力産業を如何に規制するかに目を向けるでしょう。

21世紀のシステムでは、電力価格は、産油国のカルテルなどではなく、競争と段階的な効率の向上によって決定されます。

二つのリスク

しかし、クリーンエネルギーへの移行は大きな二つのリスクを伴います。

独裁的な中国は、世界の電力システムに対して影響力を持つに至りました。

現在、中国企業は世界の太陽光モジュールの72%、リチウムイオン電池の69%、風力タービンの45%を生産しています。

また、コバルトリチウムなど、クリーンエネルギーに不可欠な鉱物の多くをコントロールしています。

中国がこの分野で覇権を握るか否かは、欧米がどれだけ早く動くかに掛かっています。

欧州にはOrsted、Enel、Iberdrolaなど風力や太陽光のプロジェクトを推進する巨大企業があります。

米国はシェールオイルの出現や、共和党の政策によって再生可能エネルギーの開発にブレーキがかかりましたが、その資本市場や研究レベルの高さは大きなポテンシャルを秘めています。

もう一つのリスクは世界のGDPの8%と9億人近くの市民を占める産油国が不安定になることです。

石油需要が減るにつれ、彼らは市場シェアをめぐる熾烈な戦いに直面し、最も安価でクリーンな原油を持つ国々が勝つでしょう。

今年のサウジアラビアの政府収入は、第2四半期に49%減少しました。危険な数十年が目の前にあります。

これらのリスクに直面すると、新エネルギーへの移行を遅らせようとの誘惑に駆られるかも知れません。

しかし、それは今後の気候変動に大きな影響を与えます。

移行に伴うリスクはありますが、新エネルギーシステムへの移行は急ぐ必要があります。

先行する中国に追いつけるか

この分野でもやはり中国が先手を打ってきているんですね。

中国の場合、一党独裁ですから、国の方針が決まると集中的に投資が行われ、巨大な中国市場とあいまって、世界シェアを容易に拡大することができるのです。

以前は反対していた中国が、最近、気候変動にやけに理解を示すなと思っていたのですが、彼らはこの市場で派遣を握る事を目指しているんですね。納得しました。

因みに現在の太陽光、風力市場の年間等投資額は世界で約2,500億ドル(26.5兆円)に上ります。

今後急速に市場が拡大すると思いますので、今後、この有望市場において厳しい主導権争いが中国と欧米の間に展開されると思います。

 

一方、産油国の将来は厳しいと思います。

今後益々需要は減り、価格も下がっていきますから、早く将来の飯の種を考えておかなければ、国民を食べさせて行く事が難しくなります。

政治が不安定になる事が予想されますが、以前の様に米国は産油国に関心を示しませんので、誰も彼らを守ってくれないという状況に陥る危険性があります。

中東の湾岸諸国が最近イスラエルとの国交樹立に動き始めましたが、背景にはこの様な問題があるのだと思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。