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中国がドイツのお得意さんからライバルに変貌

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ドイツと中国の経済関係に異変が

ドイツは言わずと知れた工業機械の最先進国です。

Made in Germanyは高品質の代名詞として世界中で高く評価されています。

そんなドイツは先進国の中で最も中国と関係の深い国です。

新型コロナがなければ、習近平主席はライプチヒに招待され、EU27か国の首脳と投資協定に署名をしていた筈です。

それだけ、中国にどっぷり浸かったドイツですが、中国との関係に異変が見られる様になってきました。

Wall Street Journal(WSJ)は、中国の機械産業の力が急速に向上し、ドイツ企業と国際市場において熾烈な争いを展開し始めたと伝えています。

この「China, Once Parnter for Growth Turns Into Rival」(かってドイツのパートナーだった中国ライバルに豹変)と題された記事をご紹介したいと思います。

WSJ記事要約

数十年に亘って続いた中国とドイツの経済関係が変化しつつあります。

中国経済の原動力となる産業機械をドイツが中国へ供給するというビジネスモデルは、リーマンショック後のドイツ経済の回復に役立ちました。

しかし、急速に台頭する中国メーカーの競争力向上は、この伝統的なビジネスモデルが成り立たなくなった事を示しています。

7月のドイツの輸出は、前月比では増加しましたが、前年度比では依然11%も低いレベルです。中国の輸出は2ヶ月連続で前年度を上回りました。

この違いは、中国の産業政策に起因すると専門家は論じています。

その政策とは、ドイツの機械に匹敵するレベルの製品を製造する事を中国企業に促すというものです。

ドイツの多くの輸出企業にとって、中国企業の競争力の向上は、中国への輸出が難しくなると言うだけではなく、第三国市場でも中国企業との競争にさらされると言う事です。

トンネルの掘削機械で有名な独ヘレンクネヒト社は、アジアのインフラプロジェクトで重要な役割を果たし、同社の売り上げは2000年から2015年の間に7倍になりました。

しかし、過去4年間で同社の売り上げは5%減少しました。

同社の幹部は語ります。「中国の大手建設企業は独自の機械を開発した。中国勢は異常な低価格を提示する事で、国際市場で存在感を高めている。」

 

中国は、世界最大の消費財製造拠点となるため、過去20年間、ドイツの産業ロボット、産業機械、自動車を必要としてきました。

ドイツ企業は、中国向け輸出の2桁の伸びは当然と思っていました。

しかし、今や中国は、フランスに風力タービン、ポーランドに送電網などを供給し、先進的な産業機械の供給国になるに至りました。

もはや中国は発展途上国ではなく、一流の工業国の仲間入りをしたのです。

ドイツ機械工業連盟のアッカーマン氏は「中国企業がナンバーワンになるのは時間の問題だ。」と話します。

同連盟のデータによれば、2018年までの10年間に、機械工学製品におけるドイツのシェアは19.2%から16.1%に低下した一方、中国は8.5%から13.5%に増加しました。

中国の工業製品の品質は急速に向上しています。ポルトガルの第二の都市ポルト市向け地下鉄車両の入札では、シーメンス等欧州勢を退け、中国メーカーが落札しました。

欧州基準の車両入札で初めて中国勢が受注しました。

 

ドイツには家族経営の中小規模メーカーが多いですが、彼らは、巨大な経済規模の恩恵を受け、自社であらゆるものを生産する国有の中国企業との競争に直面している様です。

ドイツの自動車産業も例外ではありません。

中国のCATL社は電気自動車向け電池で世界最大のメーカーになっています。

CATLが欧州自動車メーカーに電池を供給するためにドイツに建設中の工場は、テスラのギガファクトリーのほぼ3倍の規模となる見通しです。

多くのドイツ企業幹部は、依然として中国を最大の市場と見なしています。

それでも、彼らは、非公式の場では、官僚制度の障害、強制的な技術移転、中国企業への国家からの補助金、その他のさまざまな保護主義的障壁など、長らく中国市場参入の代償とみなされてきたものに耐えられなくなっている、と述べています。

一部の幹部は、トランプ米大統領が中国に対して取っているのと同じような厳しい措置を講じるよう独政府に求めています。

ドイツ政府関係者はこのところ、中国に対してより強硬な外交姿勢を示しています。

複数の当局者は、中国市場の公平性や人権など中国と論争がある中で、ドイツが日本、韓国を含むアジアの民主主義国家に重点を移すだろうと指摘しました。

議会外務委員長を務めるレットゲン氏は、「中国がドイツを必要とするのはドイツが技術的優位性を維持している間だけだろう」と指摘しました。

日本もドイツと同じ苦境に

中国で甘い汁を吸ってきたドイツ勢も、中国勢がお得意さんからライバルに変貌してきた事を受け、ようやく中国市場の罠に気付き始めた様です。

中国のテクノクラートたちは、当初から自分たちの戦略を巧妙に隠し、西側に技術を吐き出させ、最終的に自分たちが世界の技術覇権を握る事を目指していたと思います。

今後、日本を含めた先進国は、国際市場で苦戦することは間違いないでしょう。

何せ、彼らは巨大な中国市場を背景にしていますので、その気になれば、幾らでも値引きができます。

国内で儲けた利益を、海外プロジェクトで吐き出し、赤字受注すると言うことも可能です。

そんな相手と同じ土俵で戦うことは到底無理です。

日本企業もドイツと全く同じ環境に置かれていると思った方が良いと思います。

国際市場において、公正な競争環境を整備するため、日米欧は協力する時期に来ている様です。

 

最後まで読んで頂き、ありがとうございました。