MIYOSHIN海外ニュース

世界の役立つ情報をわかりやすくお伝えします。

外交に奔走するマクロン大統領に対する英誌Economistの分析

f:id:MIYOSHIN:20200925191258j:plain

ブレグジット後の英仏の微妙な関係

フランス大統領のマクロン氏は最近席を温める暇もなく、外交に飛び回っている様です。

そんなフランスの大統領を、ドーバー海峡を隔てた英国人はどう見ているのでしょうか。

欧州より離脱する事を選んだ英国は、歴史を見れば国際情勢を冷静沈着に分析し、常に勝ち組を構成することに成功してきました。

英誌Economistはマクロン大統領について「France, as ever, wants to be both European and French」(フランスはかつてないほどにヨーロッパであり且つフランスである事を望んでいる)と題した記事を記載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要約

新型コロナ感染の影響で欧州の指導者は、殆ど本国から動きません。

しかし、マクロン大統領は例外です。

この数週間、彼はイラクへの立ち寄りを含め、レバノンを2回訪問しました。

彼はギリシャとキプロスをトルコの侵略から助けるためにフリゲート艦と2機の戦闘機を派遣し、トルコに対してより厳しい立場を作るために、コルシカ島でのサミットを開催しました。

9月末には、ラトビアとリトアニアに行き、そこで彼はNATO軍に参加する自国の兵士を訪問します。

 

マクロン氏は何をしようとしているのでしょうか。

3年前、ソルボンヌ大学で、彼は欧州連合を再活性化する野心的な計画を発表しました。

これは2つの原則に基づいていました。

加盟国間の「連帯の強化」と、大国間の競争に直面したヨーロッパの「主権」の強化です。

7月、27のEU加盟国首脳が大規模なコロナ回復基金のために共同債券を発行する事に合意した時、マクロン氏は最初の「連帯の強化」で物事を進展させました。

しかし、2番目の「欧州の主権の強化」については、トルコ、ロシア、リビアなどの地域の問題を解決するために、欧州内で合意を未だ形成できていません。

 

かつて、「欧州の主権」という言葉は、フランスの抽象概念として他のメンバーから却下されていたかも知れませんが、最近はドイツのマース外相によってさえ言及される様になっています。

しかし、そのような概念は誰にとっても同じことを意味するわけではありません。

トルコと地中海東部の領海権で争うギリシャおよびキプロス海軍に対するマクロン氏の強い支持は、欧州で広く受け入れられているわけではありません。

ドイツ議会外交委員長であるレットゲン氏は、EUは「フランスの介入は対立をエスカレートするだけだ。」「どちらかの肩を持つべきではない」と主張しました。

結局のところ、トルコはギリシャとの会談を再開することに合意しました。

マクロン氏はこれを大変喜び、拳を振り上げたマクロン大統領と調停者を買って出たメルケル首相の分業が功を奏したと自画自賛しました。

 

しかし、ヨーロッパの周辺でのフランスの活動については、強い懸念が残っています。

最も差し迫った懸念は、ロシアとの「戦略的対話」を行おうとするマクロン氏の戦略です。

彼は、昨年8月にプーチン大統領を招待し、ロシアを中国から遠ざけるための最善の方法は、新しい安全保障システムの下で、ロシアを組み込む事だと主張したのです。

当時、そのような提案はロシアの脅威にさらされているポーランドとバルト諸国を激怒させ、彼らはマクロン氏が批判し続けているNATOを最も信頼できる安全保障システムと見なしました。

プーチン氏の主要な政敵であるナワルニー氏の毒殺未遂と、ベラルーシでのルカシェンコ大統領の独裁政権に対するロシアの支持により、マクロン氏のアプローチはますます受け入れられなくなりました。

マクロン氏は、ロシアのガスをヨーロッパに運ぶドイツのノルドストリーム2パイプラインについての彼の「懸念」を表明せざるを得ませんでした。

彼を囲む環境は厳しさを増しています。

 

「マクロンはプーチン大統領と二人で何か思い切った事を行う事は出来ないという事実に同意し始めています」とパリの戦略的研究財団のテラス氏は言います。

これは、フランスがロシアとの対話の長期的な希望を放棄したという意味ではありませんが、フランス大統領は現在、ロシアの指導者から距離を置くよう圧力をかけられています。

 

マクロン氏のロシアを取り込もうとした取り組みの挫折は決して彼の唯一の頭痛の種ではありません。

国内でのコロナ感染者が再び急増しています。

彼の支持率は低いままです。

9月21日、与党の副党首であるラアンマルシェ氏は、党が「分解する恐れがある」「新しいアイデアを生み出すことができなかった」と述べ、辞任しました。

この様な状況の中で、大統領の慰めは、フランス人の大多数が彼が外交活動で国益を守っていると思っている事です。

しかし、フランス人以外の人にとっては、彼の行動は印象的なものではありません。 

英国人の眼

この記事のタイトルが面白いですね。

「フランスはかつてないほどにヨーロッパであり且つフランスである事を望んでいる。」これは何を意味するのでしょうか。

私の解釈は、マクロン大統領は欧州の連帯を強化する一方で、フランスの様な中央主権国家的な存在にEUを変えていこうとしているのではないかと思います。

しかし、後者については、おそらく成功しないだろうというのが英国人の見方なのだと思います。

このヨーロッパ(分権的)フランス(中央集権的)という二つの概念は矛盾しており、同時には成り立たないというのが彼らの分析でしょう。

確かにオランダの様に小さな欧州政府を望む国もおおく、マクロン大統領の思惑通りには進みそうもありません。

マクロン大統領の抱える問題はむしろ内政です。

新型コロナ新規感染者数はここのところ、毎日2万人を超えています。

経済の落ち込みも顕著です。

まずはこちらに手をつけなければ、再び「黄色いベスト運動」の様な反政府運動が高まりかねません。

彼が思う様な外交を展開するためには、国内の問題を解決する必要がありそうです。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。