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米国最高裁判事指名で激しく揺れる米国政界

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トランプ大統領最高裁判事指名

トランプ大統領は新しい最高裁判事として、保守派の女性判事バレット氏を指名しました。

このニュース日本では扱いが小さいですが、米国では大統領選への影響も大きいことから、トップニュースとして扱われています。

米国の最高裁判事は全部で9名で構成されています。

日本の最高裁判事は、内閣が指名し、天皇が任命しますが、米国は上院の同意に基づき、大統領が任命することになっています。

日米でそれほど大きな差がないじゃないかと思われる方も多いと思いますが、実はかなり大きな差があります。

先ず、日本は最高裁判事の定年が70歳と決まっているのに対して、米国は本人が辞職しない限り、終身となっています。

二つ目の違いは、米国は判事が保守かリベラルの二つにはっきり色付けされている点です。

日本には政治色のついた判事というのは基本的にいません。

この違いが何を意味するかというと、一旦最高裁の判事構成が保守かリベラルに振れると、その状態が相当長期間続くという事です。

現在の米国最高裁の判事構成は保守派5名、リベラル派3名、欠員1名となっています。

先日亡くなられたリベラル派のギンズバーグ最高裁判事は遺言として「私の後任は大統領選の後で選ばれる事を望む。」と言い残されたそうですが、彼女は彼女の死後、トランプ大統領が保守派の判事を指名し、判事構成が保守派6対リベラル派3と極端に保守派に偏るのを恐れたのだと思います。

彼女の悪夢は現実になりかかっています。

トランプ大統領は後任の判事を指名し、大統領選前に上院の承認を得て任命しようとしています。

この問題に関して、英国Economistが「How to make American judges less notorious - Supreme judges should be term-limited」と題した記事を掲載しましたので、かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要旨

ギンズバーグ最高裁判事の死後、アマゾンでは彼女に関する記念品が3000点以上も出品されました。

これが何を意味しているかというと、並外れた彼女の人気と共に、裁判官の健康状態が国の重要な関心事になるという米国の民主主義の問題点です。

米国には制度上の問題が明らかに存在します。

 

共和党はしばしば最高裁があまりにも強すぎると不平をもらしますが、今、最高裁を保守よりにする絶好のチャンスに直面して、この機会を見逃すことはできません。

上院の共和党はギンズバーグ判事の後任人事を押し進める可能性が高く、新任の判事は終身任期であるため、2060年まで判事に留まる可能性があります。

トランプ大統領が2016年に大統領に選ばれる直前、同じ様に最高裁に欠員が生まれました。

その際、共和党の指導者マコーネル氏は「アメリカ国民は次の最高裁判所の裁判官の選出に発言権を持つべきです。 したがって、この欠員は、新しい大統領が就任するまで埋めるべきではありません。」と主張しましたが、今回は自党が有利な状況にあるせいか、前言を翻しています。

過去の例を見て見ますと大統領選挙の年に25名の最高裁判事指名が行なわれ、そのうち半分は上院の承認を得ています。

しかしこれほど大統領選直前に指名が行われた例はありません。

何より司法が政治権力に翻弄されている点が問題です。

多数派を持っている限り何でもできるということです。

 

トランプ大統領を個人的に軽蔑する共和党上院議員らにとって、トランプ大統領を支援する唯一の理由は、彼が最高裁の多数派を保守派にする事でした。

彼らは、1960年以降左旋回し、人工中絶を認め、学校での宗教の授業を廃止した米国の最高裁に憤慨しています。

一方、民主党も大統領選と上院選挙で勝利すれば、最高裁の判事の数を増やすという手に出るかも知れません。

裁判官は選挙で選ばれません

彼らの力は、彼らが公平であり、その判断は法律に基づいていると信ずる国民の信頼に基づいています。

レフリーは公平であるだけでなく、公平であると信じてもらう必要があります。

米国は最高裁の判事の任期が終身である唯一の民主主義国家です。

もし判事の任期を定めれば、最高裁は政治の嵐に巻き込まれる事なく、司法の中心に留まるでしょう。

大統領選への影響は

最高裁は、人工中絶、国民皆保険、同性婚、非合法移民など、保守とリベラルが争う問題で、決定的な役割を果たしますので、今回のギンズバーグ判事の死去は大統領選に大きな影響を与えそうです。

トランプ大統領としては、今回バレット判事を送り込むことに成功すれば、自分の任期中に3名もの保守派判事を指名することになり、これは保守系の支持基盤を固める上で有利に働きそうです

しかし、リベラル派は激しく反発しそうですので、選挙結果に最終的にどの様に反映するかは、今後の公開討論会などの結果にも影響されそうです。

Economistが指摘する様に最高裁判事終身制というのはかなり問題がありそうです。

平均寿命がかなり短かった時代の遺物だと思いますが、改正する必要がありそうです。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。