ゾンビ企業のもたらす弊害
ゾンビ企業というのは和製英語かと思っていましたが、ちゃんと英語でも使われているんですね。
英語では「Zombie firm」と呼ばれている様です。
経済学者のシュンペーターはその著書『資本主義・社会主義・民主主義』で「創造的破壊」という言葉を使いましたが、ウイキペディアに依れば、その意味するところは次の様なものの様です。
「経済発展というのは新たな効率的な方法が生み出されれば、それと同時に古い非効率的な方法は駆逐されていくという、その一連の新陳代謝を指す。」
「創造的破壊は資本主義における経済発展そのものであり、これが起こる背景は基本的には外部環境の変化ではなく、企業内部のイノベーションであるとした。
そして持続的な経済発展のためには絶えず新たなイノベーションで創造的破壊を行うことが重要であるとシュンペーターは説いた。」
経済発展には新陳代謝が必要であり、ゾンビ企業は淘汰されなければいけない訳ですが、今、世界ではゾンビ企業が生き延びている様です。
英誌Economistが「What to do about Zombie Firms」(何をゾンビ企業にすべきか)と題した記事を発表しました。かいつまんでご紹介したいと思います。
Economist記事要旨
何年もの間、経済学者たちは、先進国の政府や中央銀行が誤って「ゾンビ企業」の寿命を延ばしたかどうかについて議論してきました。
今、議論は新たな重要性を持っています。
コロナ感染により、政府は多くのゾンビ企業の寿命を延ばす可能性があります。
ゾンビ企業の増加を防ぐ事は、長期的な景気回復に不可欠です。
1990年代の日本の「失われた10年」においては。銀行は、損失を明らかにしたくなく、破産した借り手に金を貸し続けました。
ゾンビ企業が蔓延している産業は、不活性な労働市場と生産性の低下に苦しんでいました。
この傾向は日本だけではありません。
国際銀行によると、先進国では、利益が利払いを賄うには不十分な上場企業のシェアは、1980年代半ばの約4%から2017年には15%に増加しました。
コロナ感染は更なるゾンビ企業増大の大きなリスクを生み出しています。
政府は企業を存続させるために莫大な規模で経済に介入してきました。
賃金支出を軽減するための一時解雇制度や、流動性を提供するための国のローンおよび破産を阻止するための法律またはその他の措置の組み合わせは、企業の倒産を防ぎました。
危険なのは、経済が新たな需要に基づいてコロナ感染から抜け出してた後も、倒産すべきであったいくつかの企業が生き続けることです。
ゾンビ企業の存続は抑えることができます。
政府は企業ではなく労働者を支援すべきです。
一時解雇制度は、労働者を企業に結び付けますので、寛大な失業手当を提供する方が良いでしょう。
国が支援するローンは無期限に繰り越されるべきではなく、徐々に金利を上昇させ、借り手が民間金融に依存することを奨励した方が良いでしょう。
もう1つの優先事項は、銀行危機を回避することです。
バランスシートが拡大している銀行は、既存の顧客に資金を提供し続ける傾向を持っており、過去の貸付ミスをさらに多くの貸付で覆い隠します。
短期的にはこれは損失の認識を回避し、長期的にはそれを無駄に消費する企業に資本を注ぎ込む事になります。
規制当局は、これらをしっかり監督する必要があります。
最後に、企業が迅速かつ効率的に倒産できるようにして、資本を再構築するか、資産とスタッフを再配置できるようにします。
破産裁判所は、合理的な見通しを持つ企業を復活させるか、他の方法で新しい生産的な用途を見つけることができる資産を清算することができなければなりません。
プロセスをより速く、明確にすることは、特に中小企業にとって、企業の早期清算を求める債権者の圧力を軽減する事になるでしょう。
オーストラリアやドイツのように、破産を長期間停止することは、現実を否定することです。
病んでいる会社をどうするかに関して非感情的なアプローチを持つアメリカは、はるかに良い結果を出しています。
企業と労働者を支援するためのほとんど無差別な援助は、経済の広範な封鎖の中で行われた今年の救済政策の特徴でした。
しかし、援助は新陳代謝への障害となっています。
経済が回復するにつれて、市場は勝者と敗者を決定するという適切な役割を果たすことが許されるべきです。
日本でゾンビ企業対策は可能か
世界中で、無制限と言っても良いほどに、コロナ感染関連の企業支援策が取られています。
ポピュリズムの蔓延とあいまって、政治家は中央銀行や財務省に圧力をかけ、補助金や政府貸付を乱発させています。
しかし、ゾンビ企業は経済の新陳代謝を遅らせ、新規企業が成長する事を妨げます。
日本も新政権が誕生し、新型コロナへの対応と経済再生を最優先課題に掲げていますが、新型コロナへの対応に関しては、充分注意しないとEconomistの唱える様に、ゾンビ企業の存続に手を貸す事に繋がり、本物の経済再生を実現できません。
日本はこの数十年間、大企業の顔ぶれがあまり変わっていません。GAFAが急速に台頭した米国とは大きな違いがあります。
経済の新陳代謝を如何に促進させるか、新政権のお手並みに注目したいと思います。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。