スペインにコロナ感染第二波が
スペイン、欧州の南西に位置するこの国は、魅力に溢れた国です。
歴史的にも大変興味深い変遷を遂げており、一時はイスラム勢力がイベリア半島を征服した時期もありました。
その痕跡はアルハンブラ宮殿などに残されています。
スペイン帝国の全盛期には無敵艦隊を擁して、世界の海を制覇しました。
文化的多様性も高く、バスクやカタルーニャなど今でも独立運動が盛んな地域を含んでいます。
そんなスペインが、現在新型コロナの第二波に襲われている様です。
英誌Economistが、「Spain’s poisonous politics have worsened the pandemic and the economy」(スペインの有害な政策がコロナ感染と経済を悪化させた)と題する記事を掲載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Economist記事要約
マドリード南道部の労働者街に位置するインファンタ レオナール病院で務める400名を超える医師たちは、地方政府に宛てた書簡に署名し、病院は「崩壊直前」であり、361床の54%と27の集中治療室すべてが新型コロナ患者によって占められていると警告しました。
過去2週間で10万人あたり784件の症例があり、マドリッドは現在ヨーロッパで最も被害が大きい地域です。
スペイン政府の政策に問題があった事は明らかです。
7月5日、スペインのサンチェス首相は、「私たちはウイルスを打ち負かし、パンデミックを抑制した」と宣言しました。
それでも、この国は再びヨーロッパのコロナ感染の中心地となっています。(グラフをご参照)。
何が悪かったのでしょうか?
専門家は、サンチェス首相の左翼少数派連合とマドリッドを運営する保守的な野党国民党(PP)の両方に責任があるとしています。
ヨーロッパで最も厳しいロックダウンの後、スペインはその解放を急ぎました。
PPは、政府が活動を制限できる非常事態宣言の更新を拒否しました。
拒絶されたサンチェス首相は、パンデミックの管理を地域に任せ、休暇を取りました。
いくつかの地域、特にマドリッドは、医療体制と感染者追跡を強化できませんでした。
夏の間、スペイン人はバー、ナイトクラブ、そして家族の密な集まりを楽しみました。
コロナ感染を抑制できなかったことで、景気回復の望みは断たれました。
スペイン経済は今年最大13%縮小すると予想されています。
これはヨーロッパで最悪の数字です。
期待されていた観光の再開は、新たな感染拡大によって抑制されました。
専門家は、スペイン経済は特に脆弱であると述べています。
これは、観光と接客業がGDPの26%を占めており、ヨーロッパの平均より5ポイントも高いためです。
スペインの315,000店のバーとレストランのうち約60,000店が閉鎖されました。
年末までにさらに40,000店が閉鎖される可能性が高いと言われています。
今週、政府は1月31日まで、現在約80万人の労働者を支援している一時解雇制度を延長しました。
政府は企業に850億ユーロ(約10兆円)の融資を与えました。
更なる援助が必要になる事が予想されます。
スペインはEUの援助を期待していますが、そのほとんどは2022年まで供与されません。
又、援助を受けるためには、労働市場、年金、教育、訓練の改革を行わなければなりません。
そのためには、国内の政治的コンセンサスが必要です。
サンチェス首相と 野党PPの党首であるカサルド氏は相互に信用しておらず、合意が成立する見込みは薄いです。
国、地方の一貫した政策の必要性
スペインの失敗は経済とコロナ感染対策というアクセルとブレーキの踏み方を間違えたのが原因ですが、これはスペインの様に観光で生計を立てている国にとっては非常に難しい課題です。
欧州でも南の比較的貧しい国、イタリアやギリシャ、ポルトガルなどは同じ課題に直面しています。
スペインの場合、この構造的な問題に加えて、与野党の対立による中央政府、地方政府の一貫しない政策が問題に拍車をかけたという事だと思います。
今年の7月に4日間にわたるEU27か国の首脳による激しい議論の結果合意に至ったEUコロナ対策共通債券(90兆円)も、オランダなどの倹約国から、その使用にあたっては、厳しい条件が突きつけられている様です。
Economistの記事にもある様に、この援助資金を手にするためには、労働市場、年金など、援助を受ける側にしてみると一番触りたくない部分を改革する必要があります。
スペインの現在の与党はサンチェス首相の社会労働党と急進左派であるボデモスの連立です。彼らがEUの厳しい条件を受け入れる可能性は少ないでしょう。
個人的には大好きなスペインですが、コロナ感染が広がる中、厳しい状態が続きそうです。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。