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再統一30周年を迎えるドイツ - 欧州の巨人の将来は

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突然崩れたベルリンの壁

東西ドイツが再統一を果たしたのは1990年10月3日でした。

ドイツでは30周年を祝う催しが各地で行われた様です。

私は冷戦時代の東ドイツを訪問した事がありますが、当時、東西ドイツが再統一されるなどとは予想もしませんでした。

チャーチルが唱えた鉄のカーテンが存在し、東ドイツは共産圏の優等生として、永遠に共産圏にとどまると信じられていたのです。

二度の大戦を引き起こしたドイツ、中でも欧州を蹂躙したナチスドイツの記憶は当時生々しく残っていました。

そんなドイツの再統一に関しては、西側諸国も意見が分かれた様です。

東西ドイツが統一されれば、再び欧州最強の国となり、それはヒトラーの悪夢を蘇らせるわけです。

このドイツ再統一に関して、英誌Economistが「Thirty years after reunification, Germany is shouldering more responsibility」(再統一から30年、ドイツはより大きな責任を背負っている。)と題する記事を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要旨

サッチャー英首相は東西ドイツの再統一を恐れ、公然と反対しました。

ミッテラン仏大統領も、それが避けられないとは思うものの、彼女と同様に危惧しました。

アンドレオッティ伊首相も同様です。

1990年に英仏伊の指導者が憂慮したにもかかわらず、30年前の10月3日に新しい国が誕生しました。

人口8000万人のこの国は、欧州で最も人口が多く、最強の経済大国となりました。

それ以来、政治家や学者たちは、ヨーロッパの中心にあるこの「消極的な覇権」にどう対処するかという問題に取り組んできました。

確かに、巨大なナチズムが欧州を支配した後、ドイツが欧州をリードすることを信頼できるでしょうか?

 

この30年間、ドイツの再統一は大成功を収めてきました。

東ドイツ人は共産主義のくびきから解放されました。

30年間、たった3人の首相で運営された統一後のドイツは、EUの東方拡大ユーロの創設を支持してきました。

EUは2007-08年の経済危機、2010-12年の通貨危機、2015-16年の移民の急増を乗り越えました。

 

来年引退するメルケル首相の次の首相の下で、ドイツはより積極的になる必要があります。

安全保障に関しては、その必要性が最も高いと言えるでしょう。

ドイツでは軍事費が増加していますが、NATO加盟国の基準とされるGDPの2%をはるかに下回っています。

メルケル首相のキリスト教民主党内でさえ、これは厄介な問題です。彼女の連立パートナーである社会民主党やパートナー候補の緑の党にとってはなおさらです。

さらに重要なことに、ドイツはロシアと中国に対する政策に関しては、地政学的な利益よりも商業的利益を優先する傾向がありました。

ロシアとドイツを結ぶガスパイプラインであるノルドストリーム2の建設はその好例です。

このプロジェクトはウクライナ、ポーランド、バルト諸国の国益を損ないますが、これまでメルケル首相は、このプロジェクトをキャンセルする事を拒否してきました。

また、中国企業ファーウェイがドイツに5G通信機器を供給するのはリスクが高すぎるとの警告にも彼女は耳を傾けません。

 

それでも、変化の兆候があります。

今週、メルケル首相が暗殺されかかったロシアの野党党首ナワルニーを訪ねたことが明らかになりました。

ファーウェイは、以前に想定されていたよりも厳しい官僚的なハードルに直面しています。

メルケル首相は、ノルドストリーム2について、わずかではありますが、疑問を示し始めています。

これらは良い兆候です。

 

同様に、ドイツは経済面でもっと多くの事を行う必要があります。

新型コロナの感染拡大は、ユーロ危機でも達成出来なかった事を実現しました。

それは、EUの豊かな国々が貧しい国々に手を差し伸べた事です。

7500億ユーロ(90兆円)ものEU共通基金を設立するという合意は、最近までドイツが許さなかった重要な転換でした。

資金の半分以上は、助成金として提供されます。

この動きは、ドイツが遂にその責任を担い始めたという兆候です。

欧州の通貨同盟、そしておそらくEU自体が生き残るためには、今後30年間でさらに多くの事をドイツが行う必要があるでしょう。

しかし、それでもドイツは成長していきます。

強大なドイツへの怖れ

記事の最後の「しかし、それでもドイツは成長していきます」という言葉に英国人のドイツに対する怖れが現れていると思います。

それは30年前のドイツ再統一の際に、サッチャー首相が感じた怖れと同じだと思います。

いまだに欧州の人たちはナチズムに対するトラウマから抜け出ていないのではないかと思います。

押さえつけても押さえつけても強大化するドイツに対する恐怖感は欧州の全ての国にあります。

この強すぎるドイツに対する警戒感、嫌悪感が、最終的に英国のEU離脱につながったという事だと思います。

 

ところで、冷戦時代に国が二分されていた国はほとんど再統一されました。

ドイツしかり、ベトナムしかりです。

唯一未だに統一されていない国があります。それは朝鮮半島です。

ドイツの再統一は大成功と言われていますが、朝鮮半島の統一はなされるのでしょうか。

米中の緊張が高まる中、朝鮮半島の米軍基地の重要性は高まっているだけに、これはそう簡単ではないと思います。

しかし、東ドイツは内側から崩れました。

北朝鮮でも、国民の蜂起が始まれば、状況は一変します。

朝鮮半島の動きには今後も目が離せません。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。