紙幣を最初に使った国 - 中国
お金というのはいつ頃出来たのでしょうか。
記録に残る最古の貨幣は紀元前7世紀のリディア王国(今のトルコ)で使われた「エレクトロン貨」ですが、最古の紙幣は北宋(10世紀から12世紀)の「交子」と言われています。
中国はやはり凄いですね。
こんなに古くから紙幣を使っていたのです。
それ以来世界中に紙幣は広まりましたが、今、お金に関する新たな革命が起ころうとしています。
震源地はまたもや中国の様です。
英誌「Economist」が「Ant Group and fintech come of age」と題した記事を記載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Economist記事要旨
1300年頃、マルコポーロは、中国で目撃したお金に関する驚異的な事実をヨーロッパに紹介しました。
皇帝は、「紙のようなものを、国中にお金として広める様にようにさせた」と書きました。
結局、ヨーロッパも中国から遅れること6世紀、紙幣を採用しました。
最近中国を訪問する外国人旅行者は、次世代のお金を経験します。
そこでは紙幣は完全に消滅し、スマホ上のピクセルに置き換わっています。
中国のデジタルマネーにおける卓越性は、最大のフィンテック企業であるAnt Groupの香港と上海における上場により、今後数週間で明らかになります。
これはおそらく史上最大の新規株式公開であり、昨年のサウジアラムコ(世界最大の石油会社)を上回る予定です。
上場後、2004年に設立されたAntは、1799年にルーツを辿る世界最大の銀行であるJPモルガンチェースと同等の企業価値を持つ可能性があります。
Antの台頭は、中国だけでなく世界中で、金融システムの仕組みが大きく変化する前兆です。
JP モルガンの幹部たちは、何年もの間、Antの台頭を警戒してきました。
電子商取引会社であるアリババからスピンオフし、主に中国に10億人以上のユーザーがおり、その決済ネットワークは昨年、8000万の加盟店と16兆ドルの取引を行ないました。
支払いだけではありません。
ユーザーはお金を借りたり、6,000の投資商品に投資したり、医療保険を購入したりできます。
ウォール街の銀行や株式ブローカー、ボストンの資産運用会社、コネチカットの保険会社がすべて単一のスマホアプリに収まると想像してみてください
中国だけではありません。
コロナ感染の拡大は金融の世界に大きな影響を与えました。
グローバルなeコマースと在宅勤務の急増に伴い、デジタル決済のブームが生じました。
米国のネットワーク決済会社であるVenmoは昨年と比較して52%増加しました。
東南アジアでは、2つの配車サービスであるGrabとGojekが、金融機能を備えた「スーパーアプリ」になりつつあります。
AppleやAlphabetなどの大手IT企業は、1.5兆ドル(150兆円)といわれる世界金融界の莫大な利益に誘惑されて、足を踏み入れています。
フィンテックは効率を大幅に向上させます。
Antは、ローンを供与するのに数分しかかかりません。
空港で両替商にたかられる時代は終わりました。
TransferWiseなどの企業は、より安価で手軽な為替サービスを提供しています。
しかし、フィンテックの金融界征服には2つのリスクが伴います。
一つ目は、金融システムを不安定化させる可能性があるということです。
フィンテック企業は業界で最も収益性の高い部分に群がり、多くの場合、従来の貸し手である銀行には利益の少ないリスクの大きな部分が残ります。
銀行は、低金利、過去の負債、ITシステム、および莫大なコンプライアンスコストによって既に押しつぶされようとしています。
銀行は、人々の預金を預かり、そのお金を他の人のための長期ローンに変換するなど、重要な経済的機能を果たしているため、不安定化すると問題を引き起こす可能性があります。
2番目の危険は、国やフィンテックの「プラットフォーム」企業が個人情報など多くのものをユーザーから獲得する危険性があることです。
ネットワーク効果はフィンテックモデルにおいて重要です。
プラットフォームを使用する人が増えるほど、プラットフォームはより便利になり、他の人がそれに惹かれる可能性が高くなります。
そのため、業界は独占に陥りがちです。
また、フィンテックが政府やプラットフォームにさらに多くのデータを提供すれば、監視、操作、サイバーハッキングの可能性が高まります。
中国では、Antは共産党の統制装置の歯車です。
これは、Antが海外では歓迎されないことが多い理由の1つです。
倫理面で疑いが持たれるFacebookが昨年デジタル通貨Libraを立ち上げた時、世界的な反発を引き起こしました。
フィンテックの急増が続く中、政府は銀行やフィンテック企業を含む金融リスクの全体像を正しく把握する必要があります。
政府はまた、競争を促進するために参入障壁を下げる必要があります。
シンガポールとインドには、アメリカが学ぶことができる安価でオープンな銀行間決済システムがあります。
最後に、フィンテックの台頭は、巨大企業や国から人々のプライバシーを保護するための新たな取り組みと結び付けられなければなりません。
フィンテックがより安全に、オープンに、そして個人の権利を尊重することができる限り、中国が先導する金融革新は世界をより良い方向に変えるでしょう。
終わりに
噂は聞いていましたが、中国にこれだけ巨大なフィンテック企業が育っているとは知りませんでした。
金融サービスを低コストで提供するフィンテックがこれから伸びていく事は間違いなさそうですが、個人データが吸い取られていくのは気持ち悪いですね。
お金の出入りがトレースされる様になれば、その人が何をやっているのか全て筒抜けになってしまいます。
国や巨大プラットフォーム企業に個人の行動が見張られる様な社会にはなって欲しくないと思います。
最後まで呼んで頂き、有り難うございました。