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外から見た日本 - 外交面で高い評価

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外から見る日本

日本人は他人からどの様に見られているかを大変気にする国民だと思います。

これが同調圧力の原因にもなっていると思われますが、外国人が日本をどの様に見ているかについては、あまり関心を示しません。

関心を示さないというか、日本のメディアが外国の報道を紹介する事にあまり熱心で無いので、一般国民が海外でどの様に日本が評価されているか知る機会が少ないといった方が正しいと思います。

米誌「Foreign Affairs」が「The Underappreciated Power - Japan After Abe」(過小評価されている国 - 安倍後の日本)と題して論文を掲載しました。

かいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Affairs記事要旨

中国に立ち向かうための民主主義国家の連携を求める最近の呼びかけは、差し迫った障害に直面します。

グローバリゼーションへの信頼の喪失ポピュリスト指導者が支持を得ている西側諸国では、うまくいきません。

米国は、国際的なリーダーシップの妨げとなった最悪のケースとなっています。

トランプ時代は、非自由主義保護貿易主義が国内問題を解決するのではなく悪化させ、中国に対抗することを困難にすることを示しました。

対照的に、日本ははるかにうまくやっている様に見えます。

過去30年間、日本はグローバリゼーションの2つの課題を乗り越えてきました。

製造業の海外移転中国との経済統合です。

1980年代半ば、円高により、東アジアおよび世界中で日本の海外直接投資の波が持続し、日本企業は複雑なサプライチェーンを構築しました。

現在、日本の輸送機器(自動車等)の約半分は国外で製造されています。

 

中国製品の輸入に起因する雇用の喪失は、米国の政治的な地雷原になっています。

しかし、日本の国民は、経済のグローバル化に対する反感をほとんど示していません。

それどころか、2018年の調査では、自由貿易を強く支持しています 。

 

一つの理由は、中国との貿易が日本の労働市場に比較的穏やかな影響を及ぼしてきたということです。

人口の高齢化に伴い労働者の供給が減少しているため、過去数年間、日本の失業率はわずか2.4%で推移しています。

日本の外国人労働者の数が10年足らずで倍増したにもかかわらず、、反移民党が勢力を持つ事はありませんでした。

 

日本では過去に多くの新党が生まれました。

しかし、国民の意志」を代表すると主張したポピュリストは誰もいませんでした。

日本の政治はポピュリストの波から逃れました。

 

政権を傷つけた数々のスキャンダルにもかかわらず、安倍首相が記録的長期政権を維持できた理由は、信頼に足りない野党を前に、激動の世界で安定した政権の担い手として自らをアピールできたことが挙げられます。

彼の経済面での実績は大した評価を得られず、最も野心的な目標のいくつか(憲法改正、北朝鮮での拉致被害者の帰還、ロシアとの平和条約)を達成することも出来ませんでした。

しかし、安倍首相は日本の外交的地位を高めました。

彼は国内の農業圧力団体との戦いを制し、国を自由貿易の世界的リーダーに変え、2013年に国家安全保障会議を設立して、いわゆるインド太平洋戦略という地域ビジョンを提供しました。

これは米国を含む他の西側諸国が現在参画を検討しています。

これらは、安倍首相の後継者に役立つ遺産です。

 

貿易大国日本

長年にわたり、日本の民間部門は国際的なバリューチェーンのニッチな市場を獲得してきました。

経済産業省によれば、日本企業は、調査対象のハイテク分野の半分以上の製品で市場シェアの50〜100%を占めています。

そして、日本は海外のインフラプロジェクトへの投資と資金調達の点で中国に匹敵します。

世界的な金融危機後の10年間で、日本の対外投資は年間平均1,224億ドルでした。

一方、国連の統計によると、中国の平均は年間わずか1,095億ドルです。

 

2015年に、安倍政権は2,000億ドルの「質の高いインフラ構想」を開始しました。

これは、受取人に債務の罠を作らずに長期的な開発を促進するための透明な資金調達を提供します。

又、自由で開かれたインド太平洋イニシアチブは、東アフリカから南太平洋に広がる広大な地域にまたがる国々を結びつけることを目指しており、インフラに資金を提供するための資本、経済統合を促進するための貿易ルール、および沿岸警備隊の能力構築の支援等、すべて中国の圧力に抵抗するという暗黙の目的を持っています。

 

貿易交渉に関する日本の努力は、他の2つの巨大な貿易協定を仲介しました。

1つはEUと、もう1つは、14のアジア太平洋諸国とです。

一方、 EUを脱退した後の英国との交渉、およびTPPへの英国の将来の参加も協議しています。

 

危険な近隣諸国

日本が直面している安全保障上の課題もまた気が遠くなるようなものです。

近年、北朝鮮のミサイルが日本の領土の上を飛来し、尖閣諸島(中国では釣魚島として知られている)周辺の海域へ頻繁に中国が侵入し、民主的な台湾に対する北京の圧力を目撃しています。

 

中国の軍事力増強とその高圧的な外交は、日本が米国同盟を強化する強い動機を与えました。

2014年、安倍政権は日本国憲法を公式に再解釈し、日本に集団的防のために他国と一緒に武力を行使する権利を与えました。

オーストラリアとインドとの日本の安全保障パートナーシップの育成とクワッド(これら3カ国と米国を含む非公式グループ)の再活性化は、他の民主主義国との防衛と安全保障協力を通じて同盟を強化することを目的としています。

日本の安全保障アナリストの間では、効果的で長期的な中国戦略を考案する米国の能力について明らかな不安があります。

トランプ大統領の「アメリカ第一主義」のアプローチは、同盟ネットワークを弱体化させました。

トランプ大統領は、同盟国に対してさえ「国家安全保障」関税を課すことによって、中国に立ち向かうための協調的な努力への希望を砕きました。

 

より根本的なレベルでは、トランプ政権が中国との全面的な対立を受け入れることは、日本の基本戦略との違いを浮き彫りにします。

ワシントンはイデオロギーの観点から対立を定義しています。

一方、日本は、相互依存を放棄せず、気候変動と地域貿易に関して北京との選択的協力の余地を残し、中国への過度な依存を減らすことを望んで、選択的対立を支持しています。

バイデン氏が勝利し、彼の政権が全面的な対立を続けた場合、日本は困難に直面するでしょう。

 

多くの人が30年前に予測した日本の衰退は起こりませんでした。

日本はグローバリゼーションに適応し、政治的安定を達成し、堅固な経済国家として存続しました。

国が今後もその地位と繁栄を維持できるかどうかは、日本の次期指導者が新型コロナとの戦いに勝利し、ルールに基づいた国際システムを構築するという日本に期待された役割を果たせるかどうかにかかっています。

これは難しい目標ですが、「日本は終わった」説は時期尚早であることは間違いありません。

日本の外交に高い評価

安倍政権の評価については、以前のブログでも取り上げましたが、海外では高い評価となっています。

森友・加計問題に代表される様に安倍政権は毀誉褒貶の激しい政権でしたが、国際的には非常に高い評価を受けていることがわかります。

安倍さんは典型的な外向きの首相で、おそらくご自身も外交が得意と自負されていたのでしょう。

積極的に自ら外交問題に取組み、最近の日本の首相の中では、圧倒的な外交実績を残したと言えると思います。

サミットなどで、日本の首相は隅のほうで寂しく孤立しているケースが多かったですが、安倍さんは違いました。

国際的なリーダーとして認知され、一目置かれる存在でした。

他国首脳が一番苦手とするトランプ大統領を手なずけてしまうのですから大したものです。

そんな安倍さんの後を引き継ぐ菅さんは、安倍さんと同じ様には出来ないでしょう。

しかし、国際政治において、今日本に追い風が吹いています。

米中対立の中、双方とパイプがある日本、この立場をてこにしたたかな日本の外交を推進する好機です。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。