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お金でパスポートが買える時代に -「投資移民」の急増

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日本のパスポートの価値

皆さん、普段我々が使っている日本のパスポートが他国のパスポートに比べて価値がある事をご存知でしょうか。

日本のパスポートはビザなしで訪問できる国が世界最多となっており、世界一価値があるパスポートと言われています。

ずいぶん前になりますが、ジュネーブ空港を出たところで、私はビジネスバッグをスリに盗まれてしまいました。

数日後、そのバッグは発見され、手元に戻ってきたのですが、クレジットカードや当時多用されていたトラベラーズチェックなどが、手付かずで返ってきた事に驚きました。

しかし無くなっていたものが二つだけありました。

それは現金とパスポートでした。

完全にプロの手口でした。

クレジットカードやトラベラーズチェックは足が付くので、敬遠したのでしょう。

しかしパスポートは抜け目なく持って行きました。

闇のマーケットでは日本のパスポートは高値がついていたのだと思います。

日本のパスポートと並んで、価値が高いのはEU各国のパスポートです。

欧州にはシェンゲン協定というものがあり、この協定に加盟している国26カ国の間では、人が移動する際に原則パスポートのチェックが行われません。

パリからベルリンに移動する際にはパスポートコントロールが無いのです。

更に、EUの市民権を得られれば、EU加盟国のどこでも働くことが可能になります。

私がロンドンで務めていた頃、私の部下はポーランド人とかチェコ人でした。

彼ら東欧の人も能力があれば、ロンドンの様な金の集まる都市で働くことが可能なのです。

もちろん労働ビザの取得は必要ありません。

EUの市民権を持っているだけで良いのです。EUは物の移動だけでなく、人の移動も自由にしました。

こんなEUの持つアドバンテージに着目した市民権や長期ビザを売買する商売がブームになっている様です。

英誌Economistの「The Scandal-hit market for passport and long-term vizas  is booming」と題された記事をかいつまんでご紹介したいと思います。

Economist記事要旨

多くの人々は、ある国の長期居住権または市民権を現金で販売するビジネスに対して本能的な嫌悪感を持っていますが、今月、カタールのテレビ局であるアルジャジーラが、キプロスが提供する「投資移民」スキームの腐敗を明らかにしました。

それは、キプロスの政治家が、マネーロンダリングのために7年間の懲役判決を受けた中国人ビジネスマンに自国のパスポートを売ることをいとわない事を示しました。

関係する政治家は自分たちの無実を主張しましたが、キプロスは11月1日から「ゴールデンパスポート」スキームを一時停止しました。

EUメンバー国からのパスポートは、EU内のどこにでも住んで働く権利を与え、 「シェンゲン」ビザでは、22のEU加盟国と他の4か国へのパスポート無しの旅行が可能ですから、これはEUにとって非常にデリケートな問題です。

「投資移民」に関わる業界は、スキームの穴を狙う犯罪者は例外であり、厳格な審査基準を課すことで問題を解決できると主張しています。

確かにキプロスのスキーム停止は彼らにとって痛手です。しかし、他にもたくさん選択肢があり、コロナ感染によって人の移動が大幅に制限されているにもかかわらず、需要は急増しています。

他の多くのビジネスと同様に、世界の多くの地域で旅行が不可能になり、政府が書類の処理を停止したため、コロナ感染の初期にはこの「投資移民」ビジネスも影響を受けました。

しかしそれ以来、「これまでにないほど多くの需要」を享受しています。

感染率が高く、医療サービスが低水準の国の人々は、「投資移民」を他の場所に移動する理由と見なし始めました。

そして、以前は世界を旅することができたパスポートを持っている人々は、禁止または検疫リストに自分の国を見つけました。

たとえば、今年の初めに、米国のパスポートは、ビザなしに185か国に旅行する権利を持っていました。しかしその数は75未満に減少しました。

 

アメリカ、オーストラリア、イギリス、ニュージーランドなど、世界で最も裕福な国の多くを含め、世界中で100近くの国が「投資による居住」プログラムを提供しています。

市民権を提供しているのは、カリブ海の5つの島国、太平洋の島(バヌアツ)、ヨルダン、トルコ、そしてEU内のオーストリア、ブルガリアとマルタ(および月末まではキプロス)を含む、12か国程度です。

キプロスの場合、市民権を得るため、通常は不動産への投資に少なくとも200万ユーロ(2億5千万円)が必要です。

アルジャジーラが中国人をターゲットにした事は理にかなっています。

中国人は群を抜いて最大の顧客です。

中国の投資移民にとって最も人気のある目的地は米国です。

しかし、アメリカの「EB-5」長期ビザプログラムへの中国人申請者の順番待ちリストは10〜15年です。

EUは2番目に人気のある選択肢です。

中国人が他の場所に住みたいと思う最も大きな理由は教育です。

彼らは、外国の教育が国内には無い機会を開くと信じています。

ウイルスの封じ込めにおける中国の成功と、アメリカや他のいくつかの国との関係の悪化は、投資移民の需要を減らしませんでした。

中国における圧政は、海外への移住が望ましいように思わせています。

これは、6月に厳格な国家安全維持法が施行されて以来、特に香港では当てはまります。

実際、多くの香港住民はすでに第二のパスポートを持っています。 

インドやロシアなどの他の大きな市場での需要も増加していますし、中東の人たちは、トルコの投資移民プログラムに押し寄せ、3月から5月の間に4,000のパスポートが付与された様です。

 

最近、注目すべきは、他のどこよりも裕福な人々を抱える米国や英国など、以前は移民の移動元ではなく目的地と見なされていた国々からの関心の高まりです。

英国では、2016年にBrexitが決まってから、2つ目のパスポートへの関心が高まっています。

アメリカでは、同じ年のトランプ大統領の当選が同様の効果をもたらしました。

両国では、現在、コロナ感染が、「投資移民」への関心を高めています。

 

実際、投資移民で集められた多額の資金でキプロスの金融危機からの回復が実現しました。

ドミニカでは、投資プログラムによる市民権は、今年、政府の経常収益の51%GDPの25%を占めると政府によって予測されています。

今後、コロナ感染からの回復に必要なコストに目が向くにつれ、多くの政府は「投資移民」の魅力に抵抗するのが難しいと感じるでしょう。

業界は、キプロスへの投資移民が復活すると確信しています。

日本は大丈夫か

日本はお隣の中国を始め、多くの国から投資移民先として高い関心を持たれていると思います。

しかし、いくら投資をしてくれるからと言って、不用意に門戸を解放すると、思わぬ問題が生じかねません。

「お金持ち=日本にとって好ましい移民」ではないでしょう。

移民受け入れは、投資してくれるお金の多寡ではなく、その人の能力や経歴によって審査されるべきと思います。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。