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眠れる軍事大国ドイツを覚醒させるのは米国か

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軍事大国ドイツの過去

第一次世界大戦で敗れたドイツはヴェルサイユ条約で法外な賠償金を課されました。

今のお金に換算すると国民一人当たり1千万円もの賠償金を請求されたそうです。

その後、第二次世界大戦で、ナチスが欧州を蹂躙した戦争責任は重く、ドイツは第一次世界大戦よりも更に重い、二度と復活できない様な罰を負わされてもおかしくなかったのです。

しかし神風が吹きました。

それは冷戦の始まりです。

同じ敗戦国の日本も同様ですが、本来であれば戦争責任を負わされ、厳しい賠償金を課される筈が、逆に米国を初めとする西側諸国が積極的に経済復興を支援したのです。

マーシャルプランに基づいた巨額な経済援助により、西ドイツは急速に経済大国として復活しました。

しかし、ドイツは軍事大国にはなりませんでした。

これはドイツ自身が過去の戦争犯罪を反省したという側面もありますし、米英を初めとする西側同盟国がドイツの底力を警戒したという面もあるでしょう。

これは日本も同じで、吉田茂首相は欧米の日本再軍備への警戒を逆手にとり、軽武装経済重点主義を打ち出して、あっという間に日本を経済復興させました。

ドイツは敢えて軍備に多額の国費を投入せず、経済大国として成長してきましたが、ここにきて岐路に差し掛かっている様です。

トランプ大統領は、ドイツの軍事支出が少なすぎると批判して、ドイツの駐留米軍を縮小すると発表しました。

ドイツがこういった米国の動きをどう見ているのか英放送局BBCが「US election 2020 Why it so matters to Germans」(米国大統領選はなぜそれ程ドイツに重要なのか)と題する記事を発表しましたので、ご紹介したいと思います。

BBC記事要旨

ベルリンのケネディ広場を散歩すれば、ドイツとアメリカがどれほど緊密に結びついていたか垣間見ることが出来ます。

約60年前、ジョンFケネディが大観衆の前で「Ichbin ein Berliner」(「私は ベルリン子だ」)と演説しました。

当時子供だったウテは、ドイツ人が現在のアメリカ大統領に好意を持たない理由を説明します。

「第二次世界大戦後に生まれた私の世代にとって、アメリカは自由と民主主義の素晴らしい例でした。しかし、それはトランプで終わりました。」



トランプ大統領は、ドイツでは全く人気がありません。

メルケル首相は、NATOはもはや終わったと言わんばかりの彼の態度、気候変動に関するパリ協定からの撤退、そしてイランの核合意の破棄に明らかに失望しました。

指導者間の相性が悪い事は、オバマ前大統領時代とはまったく対照的です。

ドイツは米国政府との関係に苦しんでいます。

しかし、メルケル首相は来年引退し、ドイツは次の首相を選ぶ重要な選挙を控えています。

ドイツの外務委員会の議長を務めるノルベルト・レットゲンは、来年辞任する予定のメルケル首相の後継者候補の1人です。彼は次の様に語ります。

「トランプ大統領の4年間は、米国の外交政策の予測可能性、NATOの存在等すべてが根本的な疑問の対象となりました。それは第二次世界大戦以来見られなかった混乱でした。 」

彼は、ベルリンの多くの人々と同様に、トランプ大統領が再選されれば、両国関係に取り返しのつかない損害を与える可能性があることを恐れています。

「今後4年間、私たちが経験した事が再現されるだけでなく、すべてのことが更に悪化する事を懸念している。 なぜなら、トランプ大統領は再選されれば、再選のプレッシャーから解放されるからだ。」

 

軍事および貿易において、長い間同盟国と見なされていた国の大統領が、厳しい批判の標的としてドイツを選び出したことに、ドイツでは多くの人が驚きました。

防衛費(ドイツは支出を増やしていますが、NATOと合意したGDP目標の2%にはまだ達していません)、ドイツの米国に対する貿易黒字、そしてドイツ経由で欧州にロシアのガスを運ぶノードストリーム2パイプラインの建設をめぐって両国間の衝突がありました。

しかし、両国関係の悪化を最も象徴したのは、ドイツに駐留する米軍兵力を減らすというトランプ大統領の決定でした。

 

元駐米独大使のイシンガー氏は、バイデン候補が勝利したとしても、気候変動や中国、ロシアへの対応と言った大きな問題に関する意見の相違があるために、両国が「蜜月状態」に戻ることはないだろうと予測します。

「過去3年半の間に私たちが経験した困難は、ドイツが目を覚まし、自らの責任について考え始めるための有益なきっかけとなった。」と彼は言います。

 

独政府は、トランプの再選を望んでいません。

しかし、選挙の結果にかかわらず、長い間アメリカをチームメイトと見なしていたドイツは、ゲームプランを調整する必要があるかもしれないと考え始めています。

米国の外交政策の課題

ドイツは非常に大きな国力を持った国です。

歴史を振り返れば、二度の世界大戦はドイツが引き起こし、しかもその軍事力は欧州大陸を蹂躙するのに十分でした。

ヒトラーがロシアとの戦いに踏み切らず、米軍の参戦を避けるために十分な注意を払っていれば、欧州全域はヒトラーの手中に入っていたでしょう。

戦後のパクスアメリカーナは、そんな怖い潜在力を持つドイツを経済に専心させ、軍事に国力を使わせる事を巧みに避けていたわけです。

しかし、トランプ大統領のアメリカ第一主義は、短期的な損得勘定で、駐留米軍を削減し、眠れる軍事大国ドイツを覚醒させようとしています。

トランプ大統領の政策を全て否定するものではありませんが、こと外交政策特にドイツに関しては、大きな問題を孕んでいると思います。

中国の技術覇権を封じ込めるためにも、ドイツは日本と並んで非常に重要な米国のパートナーです。

米国がますます内向きになる中で、世界の警察官の役割はもはや期待できないと思います。

しかし、BBCの記事の中で、ベルリンの市民が語っていた様に、世界中の同盟国は米国が自由と民主主義の良い例である事を期待しています。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。