MIYOSHIN海外ニュース

世界の役立つ情報をわかりやすくお伝えします。

デジタル通貨の将来は - 仮想通貨市場を急騰させたペイパルの試み

f:id:MIYOSHIN:20201022142708j:plain

ペイパルの仮想通貨プロジェクト

日本は現金使用率が他国に比べて非常に高いことで知られています。

日本銀行が発行する紙幣の信用が高いのが、日本人が現金に執着する理由の一つ(外国は偽札が多い)と言われていますが、さすがにコロナ感染の影響で、キャッシュレスへの本格的なシフトが始まった様です。

紙幣に付着したウイルスは長い期間死滅しないと言われており、現金の手渡しには感染リスクがあります。

その上、リモートワークで巣ごもりした人たちは、ネットショッピングの頻度を高めました。

これもキャッシュレスの普及を促した原因となりました。

今週、デジタル決済に関する大きな動きが見られました。

それは米企業ペイパル仮想通貨による支払いを始めると発表したのです。

仮想通貨(暗号通貨とも呼ばれます)はビットコインに代表されるデジタル通貨の一つです。

国際送金が容易であるとか安全性が高いといった利点がありながら、これまで本格的に普及しなかったのは、仮想通貨を実際に使える店舗が非常に少なかった事が原因でした。

しかし、ペイパルが自社の加盟店2,600万店舗で使える様にさせると公表した事で、仮想通貨の使い勝手は飛躍的に向上する事になりました。

ペイパルという会社はオンライン決済において最大手であり、時価総額は現在世界28位、トヨタより上位にある会社です。

このペイパルの発表に関する英米2カ国のメディアの反応をご紹介したいと思います。

CNNの報道

CNN Businessは今回のペイパルの発表に好意的で、下記の様に伝えています。

 

ペイパルによると、新しいサービスにより、顧客は同社のデジタルウォレットを使用してビットコイン、イーサリアム、ビットコインキャッシュ、ライトコインの4種の仮想通貨を保持および交換できるようになります。

これにより、人々はオンラインで買い物をしたり、送金を要求したりできます。

この発表によりビットコインの価格は水曜日5%上昇しました。

「仮想通貨の効率、速度、安全性の高さは、人々に大きなメリットをもたらします。」とPayPalの社長Dan Schulmanは語り、最終的には物理的な通貨からデジタル通貨への移行は「避けられない」と述べました。

仮想通貨は、従来の銀行の関与や各国政府による監視なしに、オンラインで二者間でやり取りされるデジタルマネーです。

ペイパル社の株価は、 3月中旬に米国で新型コロナ感染が発生して以来、2倍以上になっていましたが、この日の発表を受け、更に急騰しました。

コロナウイルスに関心のある消費者が現金の使用を避けているため、オンライン決済業界のペイパルやSquare社などの株価を押し上げています。

BBCの報道

一方、英BBCは仮想通貨の将来に関して、次の様に報道し、そのリスクに警鐘を鳴らしています。

 

ペイパルは仮想通貨市場に参入し、顧客が同社アカウントを使用してビットコインやその他の仮想通貨を売買できるようになることを発表しました。

同社は、「消費者の理解と仮想通貨の普及を促すこと」を目指していると述べました。

しかし、「Facebookが通貨を如何に乗っ取ろうとしたか」の著者であるDavid Gerardは、

「不安定で規制が不十分なビットコインに賭ける事はギャンブルだ。

価格を操作する大物プレーヤーがたくさんいる。

普通の人々はお金を失う危険を冒している。」と警告しました。

「ペイパルには仮想通貨に利害関係を持っている人がいるに違いない」と彼は付け加えました。


仮想通貨は、追跡不可能な支払い方法として違法な目的のために使用される事があった為、規制を求める声が上がっています。

ペイパルは、ニューヨーク州金融局から、条件付きの「ビットライセンス」の形でその運用の許可を与えられました。これは、最初に許可されたライセンスです。

Facebookの失敗から学んだペイパル

今年、Facebookは新しい仮想通貨「Libra」を発表しました。

大手銀行やビザ、マスターなどカード会社の支援も得て、鳴り物入りで始まったプロジェクトですが、米国を始め、多くの国の金融当局から反対の声が上がり、頓挫しました。

実はペイパルもこの新通貨Libraのパートナーでしたが、発表後数ヶ月で、離脱しました。

今回のペイパルの試みとFacebookのLibraの違いは、前者が既存の仮想通貨を使える様にしただけなのに対して、後者は新しい仮想通貨を発行しようとした事です。

しかもペイパルの場合、加盟店への支払いはドルやユーロなど通常の通貨に変換され行われますので、仮想通貨が直接支払いに使われるわけではありません。

この違いがニューヨークの通貨当局から許可を得られた理由ではないかと思います。

通貨の発行権と課税権は国家の持つ最重要の権利の一つです。

Libraはこの国が持つ権利に真っ向から挑戦した為、激しい反発を受けたのだと思います。

今後、ペイパルの試みは恐らく普及していくと思いますが、彼らの思惑通りに事が進むかについては疑問があります。

既に日本政府を始め、世界中で検討が始まっていますが、各国の通貨当局がデジタル通貨を発行し、ビッドコインなどに対抗していく事が予想されます。

ブロックチェーン技術を採用した、安全なデジタル通貨が各国政府から発行されれば、ビッドコインの地位がどうなるかわかりません。

これからも仮想通貨と各国通貨当局の綱引きが続くものと思われます。

 

最後まで読んでいただき、有り難うございます。