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アメリカ外交はどこへ向かうのか(続編)

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バーニー サンダース氏の外交方針

昨日、トランプ政権の外交政策を批判する論文を紹介しましたが、もう一つ批判論文をご紹介したいと思います。

昨日ご紹介した論文は保守派のものでしたが、今日はリベラル派のものです。

著者はリベラル系の中でも最も左に位置するとされるバーニー サンダース氏の外交顧問を務めたMahhew Dassという方です。

保守派、リベラル派両方の米国の意見を比較する事で、米国外交の方向性が窺えます。

Foreign Affairsに掲載された「US Foreign Policy  Never Recoverd From the War on Terror」(対テロ戦争では米国外交は復活しない)と題された論文をかいつまんでご紹介したいと思います。

Foreign Affaris記事要旨

2001年9月11日の同時多発テロ後、米国は「対テロ戦争」を宣言し、海外にモンスターを求め、米国占領下のイラクの刑務所から生まれたイスラム国(ISIS)などの新しいモンスターを作り出しました。

今日、米国に対する最大の安全保障上の脅威は、テロリストグループやライバルの大国ではなく、国内の政治的機能不全から生じています。

トランプ氏が大統領に選出された事は、その機能不全の産物でしたが、その原因ではありません。

彼の政治的台頭のための環境は、9/11以来、外国人排斥的で独善的なワシントンで準備され、そのルーツは何世紀にもわたる白人至上主義の政治にまでさかのぼります。

 

米国は進路を変える事が出来ます。しかし、そうするためには、9.11以降の米国のテロ対策政策に関する包括的なレビューを行う必要があります

失敗した対テロ戦争

米国は9/11以来、戦闘作戦を継続しています。

その軍事介入、特に2003年のイラク侵攻により、数十万人の民間人が殺害されました。

米国は2001年以来、24か国で戦闘作戦を実施しており、少なくとも7か国で公式に戦争を続けています。

それでも、対テロ戦争はその目的達成において失敗しました。

戦略国際問題研究所の報告によると、世界中のスンニ派イスラム過激派の数は2001年から2018年の間にほぼ4倍になりました。

対テロ戦争の他国への影響

同じ時期に、多くの抑圧的な政権が各国に定着しました。

米国の同盟国を戦いに参加させたいという願望を利用して、世界中の権威主義的指導者たちは、ブッシュ政権の反テロレトリックを採用し、反対派を取り締まるための万能の言い訳として利用しました。

中国政府の内部文書によれば、習近平国家主席でさえ、ウイグル人など少数民族に対する虐待的な政策を正当化するために、共産党当​​局にアメリカの「対テロ戦争」のやり方を模倣するよう促したそうです。

米国が被った損失

米国自体は、その対テロ政策の結果として莫大な費用を負担しました。

ブラウン大学の調査によれば、9/11以降の米国が戦争に費やした国費は約6兆ドルと見なされています。

これは、本来であれば、医療、教育、インフラ、クリーンエネルギーなどに費やされていたお金です。

戦争の痕跡は、米軍兵士とその家族に色濃く残されています。

9/11以降、 60,000人以上の軍人が死傷しました。

多くの人が、人生を変えるような怪我を負って帰国しています。

9/11以降の退役軍人の83%が、心的外傷後ストレス障害を抱えて生活していると報告されています。

 

アメリカは、まるでキリスト教社会が一世紀の間に二度のの世界大戦とホロコーストを生み出した事を忘れたかの様に、政府の暴力を正当化するため、イスラム教とその信者をモンスターに仕立て上げました。

米国は、自らがモンスターを創造した事を認め、新しいモンスターを作らないように努める必要があります。

米国には他国の政府を変える能力も権利もありませんが、連帯の倫理を受け入れ、前向きな変化のために働いている他の国の人々の権利と自由を守るために、その外交的および経済的力を使うことができます 。

しかし、外国政府に対して説明責任を要求する為には、米国は国内でそれを実践しなければなりません。

サンダースとトランプの共通項

上記のリベラル左派の主張を見ていると、一部トランプ大統領の政策と共通項がある事に気付きます。

アメリカが世界の警察官であることを止め、駐留米軍を削減することにおいて、彼らは共通しています。

実はサンダースとトランプ大統領は出自も似ていて、両者とも既存の二大政党やワシントンのエスタブリッシュメントに対抗する存在として登場してきました。

オバマやヒラリー クリントンの様な高学歴の政治家が、世界の人権や平和といった高尚な政策を掲げるのに対して、彼らは非大卒の貧しい人たちに受ける政策に焦点を当てたのです。

そういった陽の当たらない米国人は数の上では多いのですが、今まであまり政治活動に熱心ではありませんでした。

トランプ大統領とサンダース両氏は彼らの政治への関心を引き出し、従来の共和、民主両党の支持層を拡げたという事が言えるでしょう。

彼らは、一生の間に一度も外国に行かない様な人たちです。

そんな人たちが、中東の平和のために命を捧げろと言われても納得するわけがありません。

昨日ブログで取り上げた保守派論客であるKori Schake氏は、ブッシュ大統領時代の様に、米国が同盟国の安全を保障する為に中心的役割を果たすべきだと唱えましたが、どうも時代は変わった様です。

米国は大統領選の討論会で、外交問題が全くといって良いほど議論されないほど内向きの国となってしまったのです。

バイデン候補が大統領になれば、トランプ氏より、同盟国との関係を重視する様になると言われていますが、民主党支持者の中にもサンダース氏の様に米国の軍事的関与に反対する勢力がおり、バイデン氏の思う様にはならないでしょう。

米国が内向きになるのは避けられそうもありません。日本もこの点を頭において、今後の戦略を立てる必要がありそうです。

 

最後まで読んで頂き、有り難うございました。