マクロン大統領の国葬での発言波紋呼ぶ
イスラム教の創始者マホメットの風刺画を授業で使ったたフランスの国語教師がチェチェン出身のイスラム過激派に殺害された事件はみなさんご存知の通りですが、この事件がきっかけで、ただでさえスキマ風が吹いていたフランスとトルコの関係が更に悪化している様です。
21日に行われたパリ・ソルボンヌ大学で行われた国葬で、マクロン仏大統領は「風刺画を止める事はない。自由のための戦いを続ける。」と発言しました。
この発言は、中東各国で批判を呼び、50カ国以上のイスラム諸国が加盟するイスラム協力機構(OIC)は23日に声明を出し、「フランスの一部の政治家たちによる、イスラム世界とフランスの関係にとって有害な談話」への懸念を表明しました。
事件は容認できないと強調する一方、「イスラム教、キリスト教、ユダヤ教の預言者への侮辱行為は常に非難する」と述べました。
一部の国ではフランス製品のボイコット運動に発展している様です。
トルコのエルドアン大統領は24日の演説で、マクロン氏の発言に不満を示し、「精神状態の検査」が必要だと発言し、フランスは大使を召喚する事態にまで発展しています。
仏紙「Les Echos」は「France-Turquie une relation entre amour et haine」(フランスとトルコ-愛憎の間で揺れ動く二国間関係)と題した記事を記載しました。
かいつまんでご紹介したいと思います。
Les Echos記事要旨
フランスとトルコの関係は第一次世界大戦以降アップダウンを繰り返してきましたが、現在最悪の状態を迎えている様です。
第一次世界大戦終了時、フランスはオスマン帝国からの「略奪品」であるイラク、シリア、レバノン、パレスチナなどをイギリスと山分けしました。
この行為はトルコの人々の間に、植民地勢力である英仏に対する反感を生んだ事は想像に難くありません。
しかし、二国間の関係は、1968年10月に行われたドゴール元仏大統領のトルコ訪問時に頂点に達しました。彼はトルコ共和国の創設者であるアタチュルクを称賛し、 「アタチュルクは最も価値のある、国の根本的な改革を実現した」と語りました。
しかし、エルドアン大統領が新オスマン主義の下、イスラム世界の指導者として捨て去ろうとしているのは、この共和主義と世俗的な伝統です。
今や、NATOの異端児となったトルコとの間で問題は拡大し続けています。
トルコによるロシア製防衛ミサイル購入は、NATO内で亀裂を引き起こしました。
シリアやリビアの内戦、東地中海の天然資源のを巡る問題など、フランスとトルコ両国は様々な問題で対立しています。
マクロン大統領は2019年11月にNATOは「脳死状態である」と語りました。
これに対して、エルドアン大統領は 「最初に自分の精神状態をチェックしてもらいなさい」と述べました。
対立の背景にある国内問題
マクロン大統領がイスラム教に対して強硬な姿勢を示さざるを得ないのは、彼の置かれた国内事情も影響していると言われます。
彼の政敵は右翼政党の国民戦線党首マリーヌ ル ペンですが、ポピュリストの彼女は移民排斥など少数派民族に対する過激な発言で人気を高めています。
マクロンとしては、イスラム勢力に対して弱気な姿勢を示せば、彼女に付け入る隙を与えるわけです。
これが、マクロン大統領の「フランスは風刺をやめない」などの過激発言に繋がっている様です。
この点については、英BBCが次の様に伝えています。
「マクロン大統領は政治的理由で、今回過剰反応した。
彼の主な目標は2022年の大統領選で再選されることであり、その為には保守派の票が必要なのである。」
エルドアン大統領も国内事情が政治姿勢に影響を与えていると思われます。
リラ安は、遂に一ドル8リラ台に突入しました。
インフレが悪化する中、国内の支持率を維持する為、イスラム社会のリーダーとして外交面でのアピールが必要となっているものと推測されます。
米国が悪い手本を示してしまった結果、各国とも自国第一主義どころか大統領再選第一主義で走り始めてしまった様です。
NATOの内部分裂を喜ぶロシアや中国の高笑いが聞こえてきそうです。
最後まで読んで頂き、有り難うございました。